「ホントかよ……」
半信半疑になりつつもアキラが深司のために動く。
冷凍室の扉を開けてギュウギュウに詰まっている冷凍室の中から冷凍食品や残り物を冷凍しているのかタッパーを一度取り出して探しだす。
しかし、深司の言うようなあの丸こい形で橙色の物体は出てこない。
「深司、みかんないぞ?」
「……そんな、こと、ない」
と言いつつ小さな声で「はず」と付け足す。
しんどいのだろうフラフラとしながら立ち上がり、アキラの元に近寄ってアキラが外に出したタッパーの山を確認していく。
「剥いてあんなら、剥いてるって言えよ」
アキラの非難を無視して相変わらずマイペースに外に出ている分を調べ終わると、庫内に残っているタッパーの中身を調べて行く。
アキラはまったく人の話を聞いていない幼馴染みに溜め息を漏らしつつ、探すのを手伝う。
「……あった」
「良かったな」
そう言って深司の持っているものの中身を覗き込む。
が、どう見てもミカンよりも少し大きいような気がしてアキラはこれがみかんかと尋ねる。
「そうじゃないの?」
そう言ってみかんが入ったタッパーと引き出しの中からフォークを出して、一人さっさとこたつの中に潜り込む。
アキラは冷凍庫の中から取り出したまま戻されない冷凍庫の中に入っていた物を慌てて
一人で戻していく。
アキラが一人冷凍食品と格闘しているのを深司はそっちのけでカチンコチンに凍ったみかんにフォークを突き刺す……が、硬過ぎてなかなか突き刺さらない。
「深司、これは一体いつから冷凍庫に入ってたんだ?」
「……うーん、いつだっけ?」
橘の質問に可愛らしく首を傾げる。
「古いのだったら止めた方がいいぞ」
「そこまで、古くないはず、です」
朦朧とした頭で記憶を辿るが結局思い出すことができず、まぁいいかとみかんを食べようと躍起になる。
「橘さん、これってみかんですか?」
ようやく冷凍庫に何とか全部押し込むとアキラが二人の元に戻ってきた。
いつから入っていたのかも気になるが、これが本当にみかんなのかがアキラは気になって年長者の橘に質問してみる。
橘は深司の手元を覗きこみ首を傾げる。
全部剥いてあるそれは確かにみかんと言うには少し粒が大きく、みかんよりも少しだけ色が薄いような気がする。
「みかんの味か?」
突き刺すのを諦め今度は削るようにして少しずつ食べている深司に聞く。
「冷た過ぎてよくわかんない……」
「深司、こたつあんだからちょっと中に入れて溶かしてみたらどうだ」
「それ、冷凍みかんじゃなくなる……」
「完全に溶かさなくていいからさ」
「…………ん」
手元の凍りすぎて食べるのも一苦労のみかんに視線を落とし、しばらく考えたのち静かにタッパーのふたを閉じてこたつの中に入れた。
時間にして4分ぐらいして深司はこたつの中からタッパーを取り出しふたを開けた。
半分溶け始めたそれは先程はフォークで突き刺さらなかったが、今度は簡単に突き刺す事ができ、さっそく深司は一つ口に運ぶ。
「んー」
「美味いか?」
橘の問いに頷く。
「なぁ、一個貰っていいか?」
本当にみかんなのか気になって仕方のないアキラが聞くと一瞬深司は嫌そうな顔をしつつタッパーをアキラの前に差し出す。
差しだされたタッパーの中からやや大き目のを選んで口の中に放り込む。
「みかんか?」
橘も少し気なっていたのかアキラに尋ねる。
「んーん? みかんっぽくないですよ」
「深司、一つ貰うぞ」
そう言うと深司の返事を聞く前に一つ取って食べる。
まだ冷たいせいもあってか、味が分かりにくいがこれはみかんではない。
なんだったかと考えているとアキラが何か分かったのか大きな声を出した。
「……うるさい、アキラ……近所迷惑」
先程アキラに大きいのを取られた事と体調が悪いせいもあってか深司の機嫌がどんどん悪くなっていく。
「深司、やっぱこれみかん違うって」
「……じゃぁ、なにさ」
「これ伊予柑だって。ほら、三日程前俺のオカンが柑橘系のでゼリー作ったのの残りだって」
「……あー」
思い出したのか深司はうんうんと頷き、立ち上がって再び冷蔵庫に向かった。
今度は冷蔵室の扉を開け中を漁って、ボールを取り出してついでにスプーンを持って戻ってきた。
「これ、あったの忘れてた」
「まだ残ってたのかよ」
「これがアキラのお母さんが作ったゼリーか」
「アキラ食べる?」
「いい」
「じゃ、ハイ。どうぞ」
サムゲタンもすでに食べ終わっていた橘の前にスプーン付きで差し出した。
「えっ」
「あ、安心して下さい。味には問題ないんです……味は……」
遠い目をするアキラを不審に思いながらボールに掛けられているラップを取ってさっそく食べる。
果肉も入っていてアキラの言う通り、味に問題はない。むしろ、美味しい。
それにも関わらず二人は橘と言うよりもゼリーから視線を外したまま、静かに自分の食事に集中していた。
不思議に思いながらも、橘は黙々とゼリーを食し始めた。
「…………」
さすがに4分の1程食べれば苦しくなって、アキラと深司に返そうとしたが二人は声を揃えて「「どうぞ、どうぞ」」と言って差し出しだボールを押し返してきた。
「俺達もう十分過ぎるほどに食べたものなんで、橘さんにあげますよ」
「……遠慮、しないでください」
「いや、でも……あ、ラップして冷蔵庫戻しておくな」
「ついでに帰宅される時、持って帰ってもらって良いですよ」
「…………うん」
アキラの言葉に深司もうんうんと何度も頷く。
味は問題無いのにどうしてなのか尋ねると二人は盛大な溜め息を漏らし答えた……。
「うちのオカンがなんでか急にゼリー食べたいって言い始めて……目分量でテキトーに作った結果凄い量になってですね……まだそれは良いんっす。ただ、今橘さんが食べてるのみたいに中に果物の果肉を入れたりしてたんですよ……何を思ったのかうちのオカンは……とてもゼリーに入れるには適してないものまで入れて……ですね」
「……あれはホントに酷い」
「あまりにも多かったので深司の家にもお裾分けしたんですよ……もちろんランダムで」
その時の事を二人は思い出したのかゲッソリとした顔をしている。
「そ、そうかでもこれは美味いぞ」
「……当分ゼリー見たくない」
「俺も」
口を揃えて言う二人はまだ知らなかった。
3週間前の雑誌のインタビュー受けた時に深司の答えで再びゼリー地獄に陥ることに……。












リレーの題を決めてから一年以上経ってしまった…。
これから仕事行って来ます。
帰ってきたら見直すかもしれないし見直さないかもしれません。
はぁ、仕事いやだな……