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Northern Liquor Mountain

くじ引きによるリレー小説と書き手の生態など。

サマー・パーティ

2008-07-27 10:29:02 | リレー:2003 夏-1 卒業式
過去リレーの続き2

 ☆ ★ ☆ ★ ☆

普段では閉められている扉も卒業式というイベントのために開けられたいた。

こっそりと覗き込むがカーテンが邪魔をして見渡すという言う所までいかない。
漏れ聞こえる司会の声で今、最後の組が外に出て行くところであった。
これが終わればやっとバイトたちの仕事が始まる。
出されている長いす(金持ち学校のくせにこんな所で出し渋っている)保護者席、下に敷かれた敷物等と飾り物の片付けだ。

「さて、あいつらはどこだ」

中に入り辺りを見るとすぐに見つかった。
相変わらず雑誌を読んではボソボソと何かを語っているのが見えた。

「いいか、あの雑誌を奪うんだぞ」

「おー」

しばらく、二人ともカーテンに身を隠しバイトの様子を見ていた。

チャンスはすぐにやってきた。
五人いるうちの三人は呼ばれてその場を離れた。残りの二名もそろそろ仕事かと雑誌を読むのをやめて手で持って隠し場所を考えているのかキョロキョロし始めた。もう一人は呼ばれた三人の方を見ながら欠伸をした。

その一瞬の隙を突いてうしろから本を奪ってやると、持っていた男は泣きそうな顔で小学生を見た。

康太は奪い返そうとする男の手をするりと抜けながら中身を見た。
中身はなんのことはない電車広告にあるような雑誌内容で、そのほとんどが本当か妖しいものばかりの内容だ。
康太から渡されて見た敦もどうしこの大の大人が大事そうに見ているのか全くわからなかった。

「なあ、こんなの見ておもろいのか」

再び雑誌は康太の手に渡り、あんまりにも面白くないので雑誌を破ってやろうとしたところ、欠伸をしていた男が情けない叫び声を上げた。

「やめてくれ~、それは松坂今日子マル秘写真が載った雑誌~」

「松坂今日子? あんなオバハンの?」

一時期、四十代後半という年齢で写真集しかもヘアヌードのを出すというので騒がれていたのを、康太と敦は思い出し、「げぇ~」と言い本を投げた。

「オバハン言うな~。投げんなっ」

何とか本をキャッチした一人が、二人を怒鳴りつける。
が、二人は呆れたような馬鹿にしてような目で、アルバイトを見渡した。そして横の敦に声をかけて歩き出した。

「おもんねぇ~。敦帰るか?」

「つきあってらんねぇ~。あっ、俺んち新しいゲームがあるんだ」

「それを早く言えよな~」

すっかり興味を失った二人はゲームの話に夢中になり、卒業式後にあるクラス別のお別れ会の存在をすっかり忘れ、松坂今日子の魅力を諭そうとしているバイトたちを無視して歩き出した。
そのうしろで、危機の去ったアルバイト数人は「良かった」を胸を撫で下ろし、その雑誌に頬擦りしていた。



 ☆終り☆ 
【お題:卒業式にステージでしがないアルバイターがエロ本を愛した】



☆★打ち直し後の呟き★☆
もう六年も前に書いた話ですが、今回upしたとこに様々な怪現象が確認できたように思います。
あれ……六人いる?
ちなみにコココが打ち出しするときの常ですが、読み直しはしてないので、誤字脱字がございましたら、お知らせいただけると幸いです。
というか、校正しろよ…。

ハイ・プレッシャー

2008-07-13 13:55:53 | リレー:2003 夏-1 卒業式
過去リレーの続きです

 ☆ ★ ☆ ★ ☆

一組から順に、校長が卒業証書を手渡していく。
小声で「これからもがんばってね」と囁いているのがこの上なく嘘臭くて気色悪い。

実を言うとあんまり退屈だったら、壇上に上がって適当に暴れて式をめちゃくちゃにしてしまおうかと半ば本気で考えていたのだが、今の康太には他に興味を惹かれるものがあった。

舞台袖のアルバイター達である。
彼らが何の仕事を受け持っているのかは知らないが、彼らの態度はどう見ても仕事をしているそれではなかった。

(てか、あんなところに集まってなにやってんだ?)

式が退屈でサボっているのだろうか?
けれどそれにしては挙動不審すぎると康太は感じた。だってさっき何かを隠したのだ。
一応顔は正面を向けておいて、横目でちらりと彼らを覗いた。

どうやら彼らは康太に見られていることに気付いていないようだった。
キョロキョロと首を振って辺りを窺っている。けれど舞台の袖のアルバイターなどに視線をやるものなどいるわけなく(康太はともかく)、誰の注意もひいていないことを確認して、彼らは再び円を作った。

(……馬鹿馬鹿しい)

康太は心の底からそう思った。
あいつらみたいな明らかな馬鹿でも、それなりの年齢ってだけでバイトをして、しかも要領よく(かどうかは定かではないが)サボっているのだ。自分は子どもと言うだけで、こんなくだらない行事に強制参加させられているのに。

そう考えると苛々してきた。
あのアルバイターたちを一発ずつ、いや何発も殴りつけたい衝動が沸々と沸いてくる。
見るからにひ弱そうな彼らなら、きっとおとなしく殴られるだろう。

殺気に近い怒気を込めながら、康太は彼らの視察を続ける。
すると、一人が緞帳の裾から雑誌を取り出した。

(あれがさっき隠したヤツか?)

たかが雑誌一冊に、何故あんなに警戒するのかわからない。
康太はじっと本を見た。視力は悪いが、コンタクトを入れているので周りは意外とクリアーだ。
そのクリアーな視界に飛び込んできたのは女の裸体。
しかもおそれが表紙と言うことは―――……

(エロ本かよ)

三村ツッコミをして、康太はうなだれた。

(いい年した奴らが……)

悪態をつきながらもう一度視線をやると、アルバイトの一人と偶然目があった。
驚いた顔をして苦笑いをこちらに向け、仲間に目配せで見られていることを伝えるとすぐ日本を持っていた一人が本を隠した。

(今さらだっつーの。ダッセー奴等だぜ。こんな時にこんな所であんな物持ち込んで……)

「康……康太」

横で敦の呼ぶ声が聞こえハッとして前を向くと、校長がわざとらしく咳き込む。

(チッ、恥かかせやがって。後で覚えているよ)

腹が立つので代わりに校長を睨んでやると、狸に似ている典型的な校長は怯えた顔で「……がんばってね?」と声をかけるとそそくさと次の組に行った。

「フンッ!」

「おい、どうしたってんだよ」

あまりにもイライラを撒き散らす康太に敦は小声で尋ねた。

「脇いるあいつら、変なもの持ち込んで楽しんでんだよ」

「はぁ?」

わけがわからず敦も脇を見ると「あぁ」と納得した。

「何か読んでんな?」

「あいつら後でヤるぞ」

そう宣言すると、二人は黙って卒業式が終わるのを待った。
卒業証書を渡し終わると、後はなにもない、五年生がリコーダーで蛍の光を吹いているうちに体育館から出て行くだけだ。

「六年二組退場」

ザッと立ち上がると康太は適当に周りに合わせて体育館の外に出た。出るとそこには在校生たちが一人一人に花を渡している。
が、康太と敦は花を受け取らず舞台袖に直でつながっている扉に向かって走っていった。


☆さらに続く☆

H ☆ T L I M T

2008-07-05 13:03:29 | リレー:2003 夏-1 卒業式
再びのコココです。某曲のカバーには抵抗はあるものの、でもやはり大ちゃんのメロディーって好きだと思う今日この頃です。

さて、照夫さんのおかげで新作のリレーも完結いたしましたので、この1ヶ月は旧作を連載していきます~。
それにしても、この話は……作中では桜が咲いているのに書いたのは夏だったんだなぁ。


 ・~・~・~・~・~・~・


サクラチル。
桜散る散る、チルチルミチル別れの桜。
空にひとひら花が散る、憎いあいつの涙の紅―くれない―。
青い鳥よ何処へゆく。

なんて時代劇か任侠かはたまた演歌のナレーションかと思わせるような台詞で卒業式の幕が上がることはいまだかつてない、はずである。
だいいち桜が散るのは入学式が過ぎるかどうかという頃で、卒業式に咲いたりはしないのである。桜前線は来る者ばかりを祝い、去る者を祝福することはない。薄情な花よの桜。根元に死体が埋まっていると言われたところで文句は言えなかろう。

とにかくその小学校では時代劇でも任侠でも、まして演歌でもなくごくごく普通の卒業式が三月のよく晴れた空の下、体育館内で今も粛々と進行していた。すなわち。

「卒業を迎える、お兄ぃーさん!」――クラスの代表約一名(二名三名で連係プレーを行う場合もある)

「お兄ぃさんっ!!!」――その他大勢。先の代表者への嫉妬や羨望が呼びかけに混じることもあるが、その他大勢の大部分は代表者にならずにすんでほっとしているし、代表者のアホらしさをうすうす感じている。

「卒業を迎える、お姉ぇさん!」――前に同じ。

「お姉ぇさんっ!!!」――以下同文。

どこまでもヤラせヤラせで成り立っているのが卒業式である。ま、おおかた式なんてものは始めから終りまで全てヤラせではあるのだが……。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


思い赤紫色の幕を金の縄で結わえ、天井から垂れ下がる中央の生地にはやはり金の糸で刺繍された荘厳な校章――学年一の悪童と名高い鈴木康太、これ以上ないほど白けた瞳で、どこか虚ろにそれを見つめた。

(つまんねー、ありえねー)

何でも人並み以上にこなせてしまうからこそ世の中がつまらない、つまらないから道を踏み外す、全くそれはどこの漫画の不良の話だろう?
康太はこのつまらない世の中に、ベタな自分自身も含め、非常に飽き飽きしていた。

寄付金、偏差値、その両方が高いと言うことが唯一無二の入学資格であるこの小学校は、しかしこの天才児の退屈を紛らわせてくれる場には成り得なかった。卒業までのこの六年間、担任教師のお小言で済んだものから事情聴取行きまで大小様々な悪事を働いた康太だったが、最後の日、この卒業式の瞬間さえも彼の心はどこかぼんやりとしていた。

「ぼくたちはー」

「ぼ、く、た、ち、はー!」

何が恐いと言って、大声で定型の台詞を言いながらこんなことを考えているのが怖い、全く可愛げがない康太だったが、その大きな瞳の端にそのとき、ちらりおかしな動きの影が映った。

(ああん?)

季節が変わり始める頃に、一枚九八〇円でたたき売られているシャツだ――と康太は思った。ヨレヨレしわしわのキンガムチェックのそれは、遥か前方、どっしりと校長が構えるステージの脇のカーテンからドン臭く転がり出、そしてまたあたふたと引っ込んで行った。

(何だ、ありゃ)

一瞬は疑問に思ったが、彼の明晰な頭脳はすぐに暫定的結論をはじき出して見せた。

(ああ、去年もいたな。バイトか)

そう、金だけはうなるほど持っているこの小学校は、なんと卒業式のためにアルバイトを数人雇うのである。

(ちらっと見えただけだけど……冴えねえなあ~今の奴!)

俺はああはなりたくないな。まあ別になってもいいけど。
現代っ子の不条理ドライ思考を宿した瞳を細めて、康太はすっと通った鼻を小さくフン、と鳴らしてみせるのであった……。



『卒業証書、授与…』

マイク越しの低い声が式次第を読み上げ、いよいよ卒業式はメインイベントへと入っていった。
保護者席がワッと慌ただしい雰囲気に包まれるのをカンジながら、康太は、二百人を超える卒業生の名前が残さず呼ばれていくのをただ待つだけの最も退屈な時間を居眠りして過ごそうと決めていた。

「康太…、寝んなよ…」

「…ああん?」

早くも無意識の淵に沈み込みそうになっていた彼に、小声で耳打ちしたのは、幼なじみで犯罪仲間の下村敦だ。

(ああ…ったく、かったりー)

康太は大きな溜息を一つだして、あさっての方向へそっぽ向いた。
面倒なことに彼は、最前列の左端に着席していて舞台に一番近いという理由から、クラス代表として証書を受け取る役になっていたのだった。代表は各クラス二名ずつで、敦も花束を贈呈される役をつとめる。

(…ステージに上がる前に来賓席と教師席に挨拶…。壇上ではまず校旗に一礼し、センコーの前に出たら…)

その手順は、一回の練習で分かる単純作業だったのだが、ここ二ヶ月、ムカツキを通り越して呆れるほど何度も繰り返し練習させられてきたので、いい加減白けて、その役になっていること自体康太はきれいすっきり忘れていたのだ。

(犬も歩けば棒に当たる、五歩も歩けば壇上へ上がれる席ってか…)

しかし、保護法に守られて大沙汰になっていないとはいえ(軽)犯罪行為の一つ二つ、三つ四つ以上を犯してきた自分達に、そんな大役を任せるとは、教師も謎なヤツである。

『…6年2組代表、下村敦。鈴木康太…』

「きたきたっ」

「んな、うれしそーにすんじゃねぇ…」

自己顕示欲が旺盛で人を見下す性質の敦は、大役を得た自分が嬉しくてたまらないというように嬉々としてステージへ上がっていく。そんな背中を斜に構えて見ながら、康太も、段取りを何一つ間違うことなく階段を上りきった。

(あ? あいつら…何ヤってんだ…?)

 ステージに上がって初めて見えた舞台の袖口で、例の冴えないバイトがあたふたと、緞帳の裾に何か隠したようだった……。


☆続く☆