tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

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『メコンホテル』

2014-01-30 22:12:07 | 映画-ま行
 アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の、『メコンホテル』を観た。

 ラスト・シーンは、いつまでも見ていたかった。たぶん飽きないと思う。まだまだ見ていたかった。
 メコン川を斜め上から遠景に映したシーンで、黄土色の大きな川が緑に縁どられてゆったりと流れている。ほとんど動きはないけれど、小さな船が動いていて、幾人かの小さな小さな人が、水上バイク(たぶん)に乗って水面を行き来している。

 一つ一つのシーンは、物語の緩やかさに比べて、絵画の構成のように秩序立っている印象。

 それまでの物語がなければ(物語があればだけど)、ラスト・シーンはこういうシーンにはならなかったはずだし、こんなに惹かれることもなかったんだろう。クリント・イーストウッド監督の『グラン・トリノ』(2008年)も同じく、ラスト・シーンをいつまでも見ていたかった。こちらも斜め上からの情景。物語に終わりがない。ただし『グラン・トリノ』の余韻に比べて、こちらは余韻でもない。唐突に現われるのだ。ずっと流れていたし、ずっと流れている川が映っているのにすぎない。唐突に現われて、時間の流れを示唆する。

 カンヌ映画祭のパルム・ドールを受賞した『ブンミおじさんの森』(2010年)と同じように(この2本しか観ていないけれど)、双方とも登場人物の語りがとても穏やかで、風通しが良くて心地良かった。


 タイ・イギリス・フランス、2012年。

  ブンミおじさんの森 スペシャル・エディション [DVD]

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