命を繋ぐ

くそったれ地主のせいで、実家が引っ越すことになった。
今年の１月末のこと。
幼稚園の「はと二組」の夏から住んでた、思い出たっぷりの家。
あそこで、母の父の葬儀をし、父の父の葬儀をし、
ばあちゃんが死に、
ビッキーを死なせた。
悲しみが詰まった家だったけど、大好きだった。
行き場のない私たちを受け入れてくれたのも、あの家だった。

大きな柿の樹、ザクロの樹、沢山の緑。
下町の猫の額のような小さな庭に、すがるように集まってきた鳥たち。
今頃、工事が始まり、小さなマンションを建てていることだろう。

立ち退くギリギリ、旦那ちゃんが、
玄関に植わってた椿の木を助けに行ってくれた。
「こんなにたくさん蕾をつけてさ～、まだ咲く前に倒されることを知らないんだよねぇ」
私が、小声でポツリ呟いた言葉が、沁みたらしい。
連絡がつかず、何時間か後に駆けつけた時に、
玄関のタイルを破壊して、必死に椿の木を救い出してる旦那ちゃんを目にして、
ありがたかった。

首の周りを虫に刺されて、ただれた箇所を必死に掻きながら、
少し満足そうな旦那ちゃんを見て、
移植してもし枯れたとしても、満足だと思った。



今日、一輪だけだけど、咲きました！
母にメールしたら、「じじ(父)がおじいちゃんが喜んでるって」だって。
1/3の大きさになっちゃった木が、この厳しい千葉の地で、
ちゃんと根付いて大きくなりますように。
人間の勝手な理由で、助けてあげられなかった他のモノタチの代表として、
力強く生き続けますように。