「二人の貴人」
陰興たちが迎えに来てくれ、麗華は「私と一緒に陰家に来てはどう?」と趙姫に話す。しかし趙姫は「いいえ。陛下の郷里へ行くわ。この子たちは私が育ててみせる」と断わる。
劉鯉が麗華との別れを悲しむ。麗華は趙婦人の言うことを聞き、弟を守ってあげてと優しく言う。
趙姫を見送った後、麗華は陰興や琥珀たちと陰家荘へ帰る。
懐かしい陰家荘では、母と陰識が麗華の帰りを待っていた。麗華は跪き、心配をかけたことを詫びる。麗華をすぐに立たせ「大事な麗華。よく戻ってきたわね」と言う母。麗華は母に抱かれながら涙を流す。
心も粉々になってしまった麗華は、もう陰家の他に帰る場所はないと思っていた。陰識が「劉秀の元に送ってやれるぞ」と言うと「兄上まで私を捨てるの?」と麗華が返す。「劉秀を忘れられぬのだろう?だからこそ長安に留まって暗躍し、赤伏符まで送った」と言う陰識。麗華は「ええ、そのとおりよ。挙兵して3年余り、あまたの戦で気力を使い果たしたわ。彼が過珊彤を娶った今、私は陰家に戻るしかない。お邪魔かしら?」と答える。陰識は「皆、お前を待っていた。好きにしろ」と言う。
麗華が外で座っていると、鄧奉が来る。会いに来たと言う鄧奉に、麗華は「最近、戦況はどうなっているの?」と聞く。陰興は顔を曇らせ「馮異は朱鮪が守る洛陽を攻めあぐねており、今は膠着状態です」と言う。「戦上手の朱鮪には手を焼いて当然ね」と麗華が言うと「ようやく家に戻ったのです。ゆっくり休んでは?劉秀は忘れてください」と話す鄧奉。麗華はふっと笑い「私は馮異や丁さんを心配している。2人が恋しい」と言う。
夜。馮異は丁柔を気にかけ「もう遅い。君は休め」と言う。「平気よ、そばにいるわ」と返す丁柔。そこに「想い人と過ごせるお前がうらやましい」と言いながら劉秀が来る。
「洛陽の件でお越しになったのでしょう」と馮異が聞く。劉秀は「さすが馮異、そのとおりだ。岑彭を遣わし、朱鮪に降伏を説きたい」と言う。「朱鮪を生かして劉縯殿の敵討ちは諦めると?」と言う馮異。劉秀はつらそうに「天下のためなら諦められる。朕に迷いはない」と答える。
馮異は“共に春陵で蜂起した日々を思う。我らの願いは漢を再興すること。劉玄亡き今、洛陽を死守する意味はない。かつての恨みを捨て投降せよ。そちと兵は罪に問わない。天に懸けて誠だと誓おう”という劉秀の文を付けた矢を朱鮪の近くへ放つ。
文を読んだ朱鮪は、馮異と岑彭に会う。「劉玄は死んだのに、なぜ洛陽を守り続ける。建武帝こそが天に選ばれた主君だぞ」と言う馮異。朱鮪が「分かっている。だが私はかつて劉縯を殺したゆえ…」と言い始め、それをさえぎった岑彭が「朱鮪殿、陛下は人徳の心を持つ。劉縯殿の件は追及せぬそうだ。貴殿と数十万の兵、洛陽の民を決して殺さぬ」と話す。さらに馮異が「陛下からの言づてだ。“大業を成す者は些事にこだわらぬ。降れば爵位を与える”」と伝える。
「大局は定まった」と言い、跪いた朱鮪は「建武帝に帰順しよう」と剣を差し出す。
西暦25年(建武元年)10月。洛陽を奪取した劉秀は、洛陽を都に定めた。
却非殿を前に「麗華」と言う劉秀。
劉秀の元へ向かう馬車の中で、瑛絡が「陛下は用兵に長けています。間もなく太平の世が来て、夫人は皇后に」と言う。「陛下は陰麗華を立后するやも」と言う過珊彤。劉強を抱いていた過主が「お前は劉揚の姪で2人目の子も宿している。それに河北の将領の支持もあるわ」と話す。
そんな過珊彤たちの立派な行列を目にした臙脂が、隣にいた男に「どこの王侯かしら?」と聞く。男は「陛下の奥方が入京したのさ」と答える。「陛下の奥方というと陰麗華ね」と言う臙脂。男は「何を言ってる。河北の王侯の娘・過珊彤だ」と言う。
臙脂は「陰麗華、可哀想に」というと笑う。こんな日が来るとは、と。
過珊彤が連れて来られた嘉徳殿を見て、過主が「なぜ長秋殿ではないの?」と聞く。案内してきた者は「陛下のご命令です」と答える。
「皇后のための長秋殿をお前に与えないとは」と過珊彤に言う過主。過珊彤は「本当に陰麗華を皇后に?」と心配になる。
劉秀と馮異と一緒に飲んでいた鄧晨は「漢軍は数十万を超え、河東と河北、河西を制圧しました。鄧禹によれば赤眉軍は兵糧が尽きているとか。間もなく長安も落城するでしょう」と話す。「かつて洛陽にいた頃は辛酸をなめたが、麗華と馮異がそばにいてくれた。ようやく帰還できたゆえ、麗華を迎えたい」と言う劉秀。馮異は「麗華をどう処遇なさるので?」と聞く。劉揚を後ろ盾とする過氏は麗華を疎むはず、また都を定めたばかりで朝廷内は不安定、麗華を迎えるなら万全を期さねば、と。劉秀は「朝廷内は何とかなるだろう。ただ麗華が戻りたがらぬかもしれぬ」と言う。「麗華は今日を夢みてずっと陛下に従ってきました。私が迎えに行ます」と言う鄧晨。劉秀は鄧晨に感謝する。
過珊彤は笑顔で「洛陽を都に定め、大勢は決まりました。陰さんを呼んでは?私は必ずや陰さんを敬い、礼を尽くします」と劉秀に言う。「朕も夫人と同じように考えていた。麗華を迎えるべく、すでに南陽に使者を遣わしている」と劉秀は返す。
「陛下に探りを入れたら、早くも陰麗華を迎える準備をしていました。寵愛を分け合うなんて私は絶対に嫌です」と過主と過康に話す過珊彤。過主は「それでもお前から言い出すほうが体裁がいいでしょう」と言う。しかし過康は「だが今後、珊彤は冷遇されるやも」と心配する。「いいえ、大丈夫よ。兄上の力で珊彤が皇后に選ばれるわ」と言う過主。
陰家荘。鄧晨と義姉、伯姫、朱裕をもてなす陰識。陰識や麗華に「陛下は多忙ゆえ都にいるが、ずっと麗華を想っている。却非伝に入った当日に麗華を迎えたいと仰った」と鄧晨が話す。「乱世では生き残るのも難しいわ。洛陽に行き兄上に再会しましょう」と麗華に言う伯姫。しかし麗華は「脚が悪くて動けないの。それに実家は久々だから母上に尽くしたいわ」と言う。
「かつての夢が成就しつつあるのだ。麗華はずっと陛下を支えてきた。脚のケガが何だ。抱えてでも背負ってでも連れて行こう」と言う朱裕。鄧晨も「お前の気持ちも分かるが、皇帝となった文淑を気遣ってほしい。今後も戦を続ける文淑には支えが必要だ」と麗華に言う。それでも麗華は「私では力不足よ。従兄さん、義姉上、伯姫、朱裕、洛陽に行ってちょうだい。部屋に戻って薬を塗るわ」と言うと、席を立って行ってしまう。
追いかけた鄧晨は、麗華を呼び止める。麗華は「決意は固いの。説得を試みても無駄よ」と言う。鄧晨は「話をさせてくれ。過珊彤に会いたくないのだろう。だが戦いはまだ終わっておらず、この先も心配が尽きない」と言う。「正直に言うわ、私は疲れたの。もう頑張れない」と言う麗華。鄧晨は「これまでにどれだけの家族を亡くした?小長安で何人が死んだ?劉縯や劉稷にはもう二度と会えない。多くの犠牲があってここまで来たのだ。家族として文淑と再会しては?」と言う。麗華が「別の家族がいるわ」と返すと「文淑にとっては、お前こそが本当の妻だ。過珊彤を娶ったのちも、お前を想い続けていた。会わなくていいのか?」と言う鄧晨。
今度は朱裕が麗華を待っていた。小さく溜め息をつくと「朱裕も話が?」と麗華が聞く。朱裕は「伝えておきたいことがある。陛下は過氏を娶ったのちも、戦を口実に床入りを避け続けていた。呉漢や耿弇に迫られて、やむを得なかったのだ」と話す。麗華は「無理強いされて秀兄さんは可哀想ね」と言う。「ああ、私は護衛だから陛下の想いを理解している。河北にいた間、陛下は温明殿ではなく、帷幕で寝ていた」と言う朱裕。麗華は「旧知の仲だから分かるはずよ。秀兄さんは強要できても、私は違うわ」と返す。朱裕は「強要する気はない。ただ、かつての理想を忘れないでくれ。そして縯兄貴が託した遺言も」と言う。
麗華は少し考えることにする。
草の鳶を見ながら、子供の頃「文淑兄さんが天子になるのなら皇后になってもいい」と言ったことや、母の前に跪いた時の劉秀の誓い、雨の日の求婚などを思い返す麗華。そこに伯姫が来る。
伯姫は跪き「これまでの嫌がらせを謝りに来たの」と言って頭を下げる。私は韓姫の嘘を信じてあなたを傷つけたわ、でも義姉上は恨むことなく私と夫を長安から逃がしてくれた、どうか許してと。麗華は伯姫の手をにぎり「怒ってもいないのに、どう許せと?過去は水に流すの。かつては義姉だったけれど、今は洛陽に新しい義姉がいるわ」と言う。
「いいえ、私には分かるの。兄上の想い人は義姉上だけよ。それに誰が何と言おうと、私にとって義姉はただ1人だけだわ」と言う伯姫。さらに伯姫は「李通と一緒になってから、愛とは何かを理解したの。相手を想うなら見返りを求めず、すべてを犠牲にできるわ。義姉上だけが兄上を本当に愛してる。私が何をしようと許してくれたのは兄上への愛ゆえでしょう?なぜ兄上の元に戻らないの?」と話す。麗華は伯姫を立たせると「今の言葉、ありがとう。でも過氏の存在に耐えられそうにないの。李通が妾を娶ったら、あなたは我慢できる?」と聞く。伯姫は「愛していれば」と答える。
麗華は陰識に「兄上、決心したわ。みんなに説得されて断わる術がないの。秀兄さんに会ってくる」と言う。うなずいた陰識は「心を決めたなら行くがよい」と返す。「どんな顔で会えばいいか分からないわ」と言う麗華。陰識は「なるほど。麗華よ、意地を張るな。劉秀が皇帝になった今、普通の夫婦にはもう戻れぬ。2人の関係は陰家や鄧家、春陵の劉氏にも影響を与える。劉秀が戦を続ける上では河北の豪族の支持だけでなく、南陽の親族の支持も必要だ。分かるな?」と話す。
麗華は「もちろんよ、でも期待しないで。彼と冷静に向き合える気がしない。きっと兄上を失望させるわ」と言う。「いや、失望することはない。お前はつらい立場にいるが、慎重に考えて最善の決定を下すはずだ。洛陽では己の望むとおりに行動しろ。後始末は私に任せればよい」と言う陰識。お前は1人ではない、私だけでなく陰氏一族が後ろ盾になると。うなずいた麗華は「用心深く事を進めなくてはね」と言う。「そうだな」と陰識が言い、麗華は陰識の肩にもたれる。
脚の悪い麗華は、誰の支えも受けずに階段を登り、却非殿へ入る。その姿を過珊彤が見ていた。
玉座に座る劉秀に跪く麗華。そして麗華は「“今日より陰麗華を貴人に封じ、西宮を賜る”」と告げられる。屈辱だと感じ「陛下、貴人の俸禄は何石ですか?」と麗華が言う。劉秀はその場にいた配下を下がらせる。
すぐに麗華の元へ駆けて行き、麗華を立たせようとする劉秀。麗華はその手を避け、1人で立ち上がる。劉秀が一歩近づこうとすると、一歩下がる麗華。また劉秀が一歩進むと、麗華は下がる。麗華が急いで出て行こうとし、劉秀は麗華の腕をつかむ。その手を振り払った麗華がまた出て行こうとし、劉秀が後ろから強く抱き締める。劉秀は泣いている麗華に「麗華、君こそ私の本当の妻だ。“妻を娶らば陰麗華”この誓いは本心だった。」と言う。
「麗華は負けん気が強く気性が激しい。貴人に封じられ耐えがたく感じただろう」と劉秀は鄧晨に話す。鄧晨は「劉揚と河北の豪族をなだめるには最善の策です。麗華も過珊彤も貴人ならば、勢力の拮抗が図れます。時機を見計らい麗華を立后しては?」と言う。「何はともあれ麗華を傷つけてしまった。もう二度と彼女を手放すわけにはいかぬ」と言う劉秀。
西宮。麗華は韓姫から「妻から妾に降格する屈辱を味わわせるわ」と言われたことを思い出す。
「この書簡はどこにしまいますか?」と琥珀から聞かれ「片づけは結構。明日、家に帰るわ」と言う麗華。その時「ならぬ」と言いながら劉秀が来る。
麗華は跪き「陛下にお願いがあります。苦労を重ねて満身創痍ゆえ、どうか離縁を」と頼む。「どういうことだ?」と劉秀が聞くと「妻を大勢持てるのに、なぜ私にこだわるのですか?」と麗華は返す。劉秀は怒り「私を挑発するのはやめろ」と言う。「挑発?私は武芸しかできない粗野な女子です。妻なら他にいるでしょう」と言う麗華。劉秀は「過氏を娶ったことで私を恨まないでほしい。仕方なかった」と話す。そして麗華に「信じてほしい。過去の皇帝は後宮を充実させた。だが私は違う。大勢の妻は持たぬ」と言う劉秀。
ーつづくー
趙姫のことは心配だけど、麗華がようやく陰家に戻れ、家族と再会できてよかった。
麗華も休ませてあげないと…。
お母さんが「よく戻ってきたわね」と言った時は私も涙ポロポロ。゚(ノдヽ)゚。
再び臙脂が登場。
でも、すっかり変わってたΣ( ̄ロ ̄lll)
「助けてほしい」から「恨み」に変わってしまったよね(;д;)
あれだけ麗華を目の敵にしていた伯姫が伯姫が!!!
何だかじーんとしてしまって(TωT)
李通のおかげで、本当に成長したと思う。
こんな日が来るなんて…きっと縯兄さんも喜んでいるはず。
またまた陰識兄さんがカッコいい!!
麗華の気持ちを尊重してくれて、麗華が決心したら「後始末は私に任せればよい」なんて言ってくれて!!
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麗華はもちろんのこと、劉秀たちを含めて
国のために戦う若人(と敢えて書きます)のために
すべてを見守り、再起ができる土壌を作っている・・・
と改めてその先見の明の素晴らしさを感じました。
伯姫も育ちましたし、冒頭の趙姫も強くなりましたよね。
趙姫役の孫驍驍さんは
これまで元気のいいお転婆さんの役柄を見ることが多かったので、
可愛らしさも残しながらしっかりした判断をする役がとてもよかったです。
これから麗華にとっては大変気苦労が多いと思いますが、
劉秀を心から支えてほしいです。
劉秀は昔の彼ではなくなっているのか?
麗華は側室が不満なのか?
お互いどのような気持ちで向かい合ってたんだろう。。。(;^_^A
いづれにせよ、麗華にとっては今は実家のお兄さん、お母さんが心の拠り所になっていそうな気がしました。