意思による楽観のための読書日記

五千回の生死 宮本輝 ***

宮本輝が子供ころから若者になるまでの出来事を綴っているようで、筆者自身と考えられる子供の描写が巧みである。

「力」、小学1年生になった私は落ち着きがなく、脇道にそれてしまうので、自宅のある中之島から曽根崎小学校までバスになって通学できるのか、両親はそれが心配である。母は通学を初めて1週間は一緒に通学するが、次の週には一人になる。しかし心配なのでこっそりついていく。定期券の入ったケースを振り回してバスで怒鳴られる、バスから降りてランドセルを背負い直すのに一苦労する、弁当箱を脇の下に挟んだ男がけつまずいて弁当箱を落としてしまうのをじっと見つめる、もく拾いの老人に着いて行って道に迷う、大勢の子供達が歩いている道を見つけてようやく学校に辿り着く、一部始終を必死で見ていた母は、ホッとして帰ってきた夫にそのことを報告する。私の父は大笑いして、頼りないやつが、これで一人で生きていける、と言ったそうだ。

母と叔母を連れて軽井沢で3ヶ月を過ごすことになった私、母は寝る前に必ず「眉墨」を塗る。その母は軽井沢に行っても毎晩寝る前に眉墨を塗っていた。お腹の痛みが止まらない母が軽井沢で病院に行くと胃潰瘍だと診断されるが、本当は癌のようである。それでも寝る前に眉墨を塗る母。

戦後日本から北朝鮮への帰国事業の頃には大勢の家族が北朝鮮に渡った。その頃の話「紫頭巾」、中国を舞台に幼い日の思い出の場所を円通寺街に見る昆明・円通寺街。

自分の目からみた幼い日の自分と父と母、家族を描く短篇集である。



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