東京の街を歩いていると坂道やちょっとした丘がビルに隠れてあることに気づく。京都や奈良は街なかは平らで、町を山が囲む。古代人は安全な場所を知っていた。東日本大震災では東北地方東岸を中心に大津波が起きたが、その一部が東京湾にも来ていた。東京都では1.5m、木更津港では2.83mだったというが、東京湾や駿河湾直下型の地震であれば、東京湾内に大きく侵入する津波が想定できる。隅田川以東のゼロメートル地帯においての対策は難しいものも多いが、東京の地名を見れば、縄文海進の名残があった鎌倉、室町、江戸時代の地形を感じることができる。火災、倒壊、液状化に加えて最大10m程度の津波対策を訴えるのが本書。
10mの津波で海水が川沿いに遡上するとどうなるか。下町から都心部一帯はもとより、谷根千、千駄木まで、神田川沿いでは早稲田、高田馬場まで、外堀沿いでは市ヶ谷、古川沿いでは恵比寿まで、目黒川沿いでは中目黒あたりまでが海に沈む。
東京には地名として坂のつく場所が1000個もある。確認すべきは坂の下が海抜何メートルかということ。10mあればその規模の大津波でも大丈夫、5mなら浸水可能性があり、2-3mであれば津波被害の覚悟が必要ということ。東京に限らないが、地名でいれば水で刻まれた地形を示す「谷」、窪地を示す「久保、窪」、低地である「池」、2つ以上の川が合流する地点を表す「落合」、池から水が流れ出る低地を示す「池尻」、川や河口の「江、川、洲」、液状化に注意するのが「砂、浜」など。
普段から災害マップなどで自宅や勤務先の地形を確認し、退避場所や避難経路を知っておくだけでも安心感が違う。本書内容は以上。
東日本大震災の際、釜石東中学校の生徒たちは、小学生などを引率して高台に逃げて難を逃れた。防災教育を行ったのが群馬大学の片田敏孝教授で、「君たちは助けられる立場ではなく、助ける立場にある」というもの。避難三原則1.想定にとらわれるな 2.どんな状況でも最善を尽くせ 3.率先避難所となれ。 胸に刻みたい。