意思による楽観のための読書日記

人間とヘビ R.&D. モリス ***

2006年に翻訳された動物学者デズモンド・モリスと夫人ラモナの共著作。

ヘビ信仰は世界中にあるらしい。 ヴードゥー教の古い神殿では生きた蛇が飼われていた。コブラは初期のドラヴィダ人のトーテムだった。紀元前1500-前700年ヴェーダ時代のインドではヘビは村落の基本的な神であり、地元の守護者だった。中国では植物と樹木の精霊は度々蛇の形を取るし、肥沃の象徴とされた。古代日本では雷神はヘビとして崇拝され農耕の神須佐之男の命はヘビと密接な関係があった。長崎では白蛇は神の使いであった。中米とメキシコでは象徴的な意味にしても重要な位置を占めていた。

毒蛇の毒の成分は意外にも十分解明されているわけではないらしい。毒自体は唾液の変化した物質、毒腺は唾液腺の一部が進化したものだという。オーストラリアの専門家フェアリの分類によれば、毒は次のように機能する。
1. ニューロトキシンは延髄と脊髄の神経細胞に作用する。
2. ヘモラジンは血管にならぶ内皮細胞を破壊する。
3. トロンバーゼは血管内血栓溶解を引き起こす。
4. ヘモライシンは赤血球を破壊する。
5. サイトライシンは赤血球、白血球、組織細胞に作用する。
6. アンチフィブリンやアンチコアギュリンは血液凝固を遅滞させる。
7. アンチバクテリサイド物質。
8. 膵液消化の準備を目的とする酵素とキナーゼの阻害物質。
コブラ、海蛇、マンバには1,4,6が豊富、クサリヘビとガラガラヘビには3,5の量が多い。インドコブラに噛まれると、酩酊感覚から始まり、虚脱感、麻痺、舌と唇の筋肉調整不能、呼吸困難により顔色が青黒くなり嚥下困難になり、吐き気、嘔吐、呼吸停止に至る。

蛇に噛まれたときの注意事項。
1. ヘビを殺してもしっぽにしか触ってはいけない。
2. 蛇に噛まれて死ぬことはめったにないことを知ること。
3. 安静にする。
4. ひもで軽く患部を縛る。30分ごとに緩める。
5. こすらず水で洗い流す。
6. 噛まれた箇所を動かさず楽な体勢を取る。
7. 鎮痛剤は使ってもよいがモルヒネは使わない。
8. 医師を呼ぶか病院に行く。出来れば蛇も持っていく。

現在生き延びている爬虫類はカメ目、ワニ目、ムカシトカゲ目、有鱗目であり、有鱗目にはヘビとトカゲが属する。しかしヘビとトカゲはいくつかの相違点がある。トカゲには四肢、まぶた、外耳があるがヘビにはない。腹面のウロコはトカゲは数列、ヘビは1列、前頭蓋はトカゲは開放、ヘビは閉鎖、顎はヘビは柔軟であるがトカゲは固定されている。尾の再生は蛇の場合にはない。

イギリスでの1962年の調査、一番嫌いな動物がヘビである子供は27%、少年は24%で少女は30%と相違がある。蛇が嫌いな年齢のピークは6歳、男女とも14歳までに20%以下に下がる。どうも霊長類には蛇に対する先天的な嫌悪感があるようだ。幼くして捕獲されたチンパンジーやオラヌータンが一度も蛇に遭遇したことがないのに、蛇を見てパニックを起こすという実験があるという。「小さくて奇妙に動く動物」なら何でも怖いのか、それとももっと複合的な原因なのかは不明である。霊長類の祖先が、ある危険信号に対して瞬間的に身を引くことが大きな利益を得たという可能性がある。

「裸のサル」の著者による本書、興味がある人は一読を。人間とヘビ かくも深き不思議な関係 (平凡社ライブラリー)
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