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意思による楽観のための読書日記

作家の使命 私の戦後 山崎豊子 ***

筆者は戦争中、大学二年生で学業を打ち切られて徴用に駆り出された経験を持つ。一方同世代の男性たちは徴兵されて戦死していった、これが戦争をテーマとした作品を生み出す原点にある。不毛地帯の主人公壱岐正はシベリア抑留を経験し帰国後商社マンとして活躍する。二つの祖国では日米に引き裂かれた二世兄弟天羽賢治と忠がフィリピンの戦場で相まみえる。大地の子では現地取材をするのに当時の胡耀邦首相に特別に許されて農民取材を行った。陸一心とあつ子が出会う場面やあつ子の境遇、父と出会ったのに生き長らえることができなかった場面などはそうした取材が生きているという。

大企業における権力闘争と飛行機事故を描いた沈まぬ太陽、そして第4の権力であるマスコミを描いた運命の人、ここでも筆者の取材が生きている。筆者は作家というより取材の人である。新日鉄の斉藤英四郎会長に取材に行った時のことが最後に出てくる。筆者は取材でぞんざいな対応をした斎藤会長にここで強烈なしっぺ返しをしている。巨大企業の会長はいつも下にも置かなれない対応を受けた経験しかなかったのであろう、作家の山崎豊子さんに大変な不愉快を与える態度をとった、これをここに書いているのだ。胡耀邦首相や稲山前新日鉄会長に感謝を表明する筆者が斉藤英四郎会長には痛烈な批判をしている、男を下げるとはこのことである。

ここに取り上げられた作品は30年以上にわたり書かれてきた作品であるが、私はそのすべてを読んでいる、そしてすべての作品を記憶していて感動を覚えた点を思い返すことも出来る。5-10年に一度の作家、と言われる筆者であるが、そのすべての作品が読者の印象と記憶に残っているとしたらそれは大変なことではないか。

作家の使命 私の戦後 山崎豊子 自作を語る (山崎豊子自作を語る 1)
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