この本に淡々とまとめられた10大新宗教の特徴
天理教(てんりきょう)
金光教、黒住教と同じく幕末維新期に誕生。教祖は中山みき。奈良県天理市に行くと、びっくりするような都道府県別の宿舎が建ち並ぶ。全国からの訪問信者を受け入れる施設群。神道と仏教の両方の影響がある、妊婦を助けるおまじないが活動の原点で、戦前は新宗教のなかで最大規模だった。
大本教(おおもときょう)
金光教に影響を受けた出口ナオが開祖。その後養子にきた出口王仁三郎が中興の祖。国常立命(くにとこたちのみこと)は、天理教など神道系宗教に共通した「神」。戦前は「皇道大本」、戦後の一時期は「愛善苑」を名乗る。新宗教の中でも特に反権力の立場の人達から評価が高く、庶民以外にも、知識人、軍人にも人気があった。
生長の家(せいちょうのいえ)
創立者谷口雅春は元大本の信者。天皇信仰。宗教活動は雑誌の出版を主体とする。海外(特にブラジル)の信者数の多さが特徴。谷口雅春が神からの啓示をうけ創立、雑誌による布教活動が特徴、昭和天皇を崇拝していたため、亡くなった後は力が衰える。
天照皇大神宮教(てんしようこうたいしんぐうきょう)
教祖の北村サヨによるナニワ節を思わせる歌による説法が特徴的。サヨは戦前は生長の家の信者で、サヨの腹に宇宙を支配する神が宿り社会批判を始めたのがキッカケ、踊りながら社会を批判するという活動をしていた「踊る宗教」として話題になる。山口県田布施が本部。戦後の裁判で2年の懲役となった岸に対して、サヨは、「2年行ってこい、そうしたら総理大臣にしてつこうてやる」と言ったとか。海外にも進出、現在は中規模の新宗教として活動。
璽宇(じう)
長岡良子(ながこ)が璽光尊を名乗る。北村サヨは「第二の璽光尊」とも呼ばれた。有力信者に囲碁の名人呉清源、双葉山、平凡社創業者などがいた。国粋主義の傾向があり、戦後マッカーサーを訪問して話題となり復員軍人らに支持されるが、取り締まりが厳しくなり、各地を転々とする。大本系と、真言密教系霊能者の長岡良子の2つのグループがある。天照皇大神宮教と同様に、神道と仏教の混交した宗教、創立者の死後は勢いがなくなった。
霊友会(れいゆうかい)
久保角太郎とその兄嫁である小谷喜美により発足、男女が教祖である点は立正佼成会と同様で、大元を作ったのは西田無学。「総戒名」「霊鑑」「青教巻」などは、立正佼成会や、霊友会に受け継がれている。1971年に喜美が亡くなると久保の息子の久保継成が会長に就任。東大印度哲学科博士課程修了の継成は、修行によって神憑りができるようになったとされ、「インナートリップ路線」を掲げ若者の「自分探し」に目を点け若者の信者を獲得、支持を拡大した。
立正佼成会(りっしょうこうせいかい)
東京都杉並区和田が本拠地。霊友会から分派、創価学会と同様、日蓮・法華系の教団。創立者である庭野日敬(にわのにっきょう)、長沼妙佼(ながぬまみょうこう)は、霊友会と同様男女の教祖で、妙佼は以前は天理教信者。高度経済成長時代に地方から都市部に来た未組織の労働者を中心に大きくなる。先祖供養と姓名判断、教祖の霊感、法座が不況の武器であり、法座は十人ぐらいで悩みを相談したりする会、独自の宗教用語を駆使するという特徴がある。
創価学会(そうかがっかい)
創立者である牧口常三郎は小学校の校長だった。創立当初は「創価教育学会」、日蓮正宗を信仰し現世利益を特徴とする。二代目の戸田城聖は、小学校の代用教員から「時修学館」という学習塾で成功、受験参考書もベストセラーになっている。出版、食品など実業家としての才能とひとの心をつかむ能力に長けていた。このあと名称を「創価学会」に改め、信者は飛躍的に拡大した。三代目会長の池田大作は、敗戦直後に入信し、戸田の作った出版社や、小口金融で頭角をあらわし、戸田が亡くなった後、32歳の若さで会長に就任。「仏法は勝負」など勝ち負けを強調する。会長をはじめ会員は、『三国志』『水滸伝』を好む。積極的な布教活動である折伏(しゃくぶく)で否定的なイメージをもつ人が多く、公明党との密接な関わりからも警戒されやすい。また、他の宗教の儀式などに参加してはいけないなどの排他性が強い。学会員の数が多く、信者間のつき合いだけで大きくなり、結婚も学会員同士でするケースが多いことから、もはや創価学会は「民族である」という指摘、至言である。
世界救世教(せかいきゅうせいきょう)
・開祖の岡田茂吉は元大本の信者で浅草の露天商の生まれ。「手かざし」は大本からくるものだが、世界救世教が手法をシステム化各宗派に広がっている。箱根美術館やMOA(Mokichi Okada Association)美術館などの美術への関心は大本教の王仁三郎の影響。自然農法・有機農法の運動の先駆者。1955年に岡田が亡くなると、数々の分派ができた。
神慈秀明会(しんじしゅうめいかい)
「あなたの健康と幸せを祈らせてください」の3分間の手かざしが有名。創立者は小山美秀子は、東京自由学園で学び、やがて岡田茂吉の直弟子となる。二代目の小山荘吉は、美秀子の長男、海外での信者獲得に貢献した。三代目の小山弘子は荘吉の妹で、街頭の手かざしなどさらに教団の勢力拡大したが、若者の学業や、仕事放棄などにより社会的批判を受けた。
真光系教団(まひかりけいきょうだん)
世界真光文明教団や崇教真光をまとめて指す。創立者の岡田光玉は元世界救世教の有力信者で布教師、陸軍士官学校に入学、陸軍中佐時代に胸椎カリエスと腎臓結石を患い予備役に編入、その後実業界に転じるが空襲により事業は頓挫。1953年に多田建設に取締役顧問として入社、実業家としての活動を続けながら宗教活動を展開する。1963年に世界真光文明教団に名称を改める。1974年に光玉が73歳で亡くなると内紛が起こり、光玉の養女であった岡田恵珠が「崇教真光」を名乗るようになった。今日のスピリチャルブームの先駆けとなったともいえるが、抜けるのも簡単であるため、組織の永続性を保つのが難しい。
世界救世教、神慈秀明会、真光系教団、いずれも「手かざし」で布教活動を行っている。手かざしは誰でも習得が比較的容易で複雑な教義も必要としないので、教団から独立しやすく分派が生まれやすく、統合も多い。
PL教団(ぴーえるきょうだん)
宗教団体ではアルファベットだけでは認可されないため正式名称はパーフェクト・リバティー教団、毎年8月1日に行われる花火が有名だが、これは教祖の「自分が死んだら嘆かず花火でもあげてくれ」という遺志からきている。打ち上げられる花火の数は30万発ともいわれ、ラストの8千発は一挙に連続して打ち上げられる。PLの花火を経験するとほかの花火での感動が難しくなるほどとまで解説。宗教系の高校は野球が強く名前を覚えてもらうことが布教活動の第一歩となっているが、そのなかでも高校野球ではPLがいちばん強い。創立は戦前、開祖である御木徳一は松山の商人の家の生まれだったが、徳光教の信者となり、1931年扶桑教ひとのみち教団を立ち上げる。ひとのみち教団は大きく発展し中国や韓国にも進出し各地に拠点が作られた。しかし百万人を超える信者を獲得するようになると、国はその動向を危険視するようになり教団は解散させられた。徳一は厳しい取調べ後の保釈中に死亡、息子の徳近が懲役4年の有罪、敗戦によって不敬罪が消滅するまで、囚われの身となっていたが、1945年に出所、パーマネント・リバティー教団と改称して、その後すぐにパーフェクト・リバティー教団に改められた。教義に「人生は芸術である」というものがあり、病気への取り組みとしては近代医学をみとめ病院なども所有している。
真如苑(しんにょえん)
1980年代半ばに、沢口靖子、高橋恵子、鈴木蘭々、松本伊代、大場久美子など若い女性芸能人などの入信で話題になる。「接心」と呼ばれる修行は霊的な開発を目的としたもので、教団独自の秘技として注目された。創価学会、立正佼成会に次ぐ第三位の規模(90万人の信者)を誇る。真言密教系で現世利益の実現を求める。京都の真言宗醍醐寺派の総本山、醍醐寺と密接な関係を持つ。信者は信徒カードという磁気カードをもっていて、世直しや、終末の予言などがない過激でないのが特徴。宗教1対1のカウンセリングのような「接心(せっしん)」という修行があり、「接心」はシャーマニズムというよりカウンセリングに近いもので、受付の雰囲気など日常的な感覚で、勧誘では創価学会のような積極性はみられない。
GLA(じーえるえー総合本部)
GLAはGod Light Associationの略、現在の規模は小さいが教祖の高橋信次は他宗教などに今も熱烈なファンを持つ。霊が降りるというとき古代エジプトやアトランティスの人物を降ろす。10大新宗教の中でもっとも現代的で、スピリチュアルブームやカウンセリングに近い雰囲気。白装束集団の教祖はここの元信者である可能性がたかく、創立者には古代エジプトや中国など外国の霊が下ることがあった。オカルトが好きな人達の集まりがもとで、現在は亡くなった人の言葉を伝える江原氏のような活動をおこなっている。「スピリチュアルブーム」や「カウンセリング」の延長のような現代的なものを中心とした教団は熱狂性に欠けるので大きく伸びることはなさそうだ、というのが筆者の見立て。
信者の総数は日本の人口の2倍を超えるという話もある、いったい信者管理システムはどうなっているのか、気になる。お布施管理や教義などのe-Learningなども必要ではないか。信者だけのSNSやイントラネットなんかもあったら便利である。10大新宗教にコンピュータシステムの提案したら聞いてくれるかな。
日本の10大新宗教 (幻冬舎新書)
邪宗門〈上〉 (朝日文芸文庫)
邪宗門〈下〉 (朝日文芸文庫)
創価学会 (新潮新書)
資本主義2.0 宗教と経済が融合する時代
無宗教こそ日本人の宗教である (角川oneテーマ21)
新宗教ビジネス (講談社BIZ)
平成宗教20年史 (幻冬舎新書)
民族化する創価学会 ユダヤ人の来た道をたどる人々
慶應三田会―組織とその全貌
虚無の信仰―西欧はなぜ仏教を怖れたか
3種類の日本教―日本人が気づいていない自分の属性 (講談社プラスアルファ新書)
天理教―神憑りから新宗教へ
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