意思による楽観のための読書日記

森のなかの海(上) 宮本輝 ****

阪神淡路大震災の朝、希美子は夫の猛司と昨夜の喧嘩があって別の部屋で寝ていた。二人の子どもたちは夫の実家に帰っていた。大地震は二人を初めとした阪神地区一帯を襲い、多くの犠牲者を出したが、希美子と猛司は擦り傷で助かった。しかし、喧嘩をせずにいつものように就寝していたらその場所は天井やタンスが落ちてきた場所であり、ひょっとしたら向かいの神社の鳥居が落ちてきた場所なのであった。二人は夫の勧めで知人宅に移動、夫は会社を見てくると言い出かけていった。

夫の実家に連絡をしたところ、姑の口から思わぬ悪口雑言を聞いてしまい、夫が外で女性と付き合っていて、子供まで産まれる予定があることを知る。また姑もそのことを知っていたことが分かる。希美子は震災と夫の裏切りのダブるショックを受ける。「人間の真心を横領する輩が居る」というレミゼラブルの一節を希美子は思い浮かべる。希美子は実家に帰り、両親に会い慰められる。父はうどん屋に希美子を連れて行き、「うどんは延ばしたあと3つに折り重ねて延ばし、またそれを三つに折る、これを30回繰り返すので3の30乗、2百6兆の層をなす。人間も50歳なんて言うのは初めて人生を知る年齢だ」という。折り重ねられた層の数だけ人間も成長する、そう言う話である。

そんなとき、以前手助けをして度々訪れるようになっていた奥飛騨に住む女性毛利カナ江の具合が悪い、という連絡が入る。カナ江には身寄りがなく、住んでいた栗林のなかの大きな一軒家と360坪の土地、そして合計3000万円ほどの遺産を受け取ることになってしまう。東京に住む希美子の両親もここを気に入り、父はログハウスを敷地内に建てることになる。

希美子は二人の子どもと奥飛騨の家に住むことを決意する。ある日、阪神淡路大震災で罹災した人たちのニュースに自分たちに親切にしてくれた家族の14-17歳の3人の娘が引き取り手がなく避難所住まいをしていることを知り三人を引き取ることになる。性格の良い3人の姉妹は本当の名前とは別に「イッチャン、ニチャン、サンチャン」と呼ばれる。三姉妹はすぐに希美子と二人の子どもたちと良い同居人となる。長女は高校三年生で数学の成績がとても良く、東京に暮らす希美子の両親と同居し、東京の私立高校に通うことになる。そんなとき、3姉妹を頼って7人の少女たちが奥飛騨を訪ねてくる。阪神淡路大震災は多くの身寄りのない人たちを生み出してしまったが、行政は何もしてくれない、というのが問題なのである。7人はそれぞれの事情を抱えた孤児、もしくは引き取り手が居ない子たちであるが、不良、性格に問題があるなど、希美子としては悩みが増えることになる7人であった。しかし、放り出すわけにも行かず、7人も同居、父のログハウスを7人の住まいとする。

とあるきっかけから三姉妹の二番目の「ニチャン」の料理の腕前が良く、松本のいい場所にある店を借りて「炊き込みご飯屋」を開店することになり、みんなで協力して開店にこぎ着けようと準備する。上巻はここまで。
森のなかの海(上) (光文社文庫)
森のなかの海(下) (光文社文庫)

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