意思による楽観のための読書日記

春朧(上) 高橋治 ****

紗衣子は岐阜は長良川の鵜飼いで有名な老舗旅館の次男に嫁いだ。旅館の長男恒之は本館を経営、姑が大女将をしている。旅館の女将として嫁いだわけではなかったのだが、次男の恒次郎が急性白血病で死んで老舗旅館の別館の若女将を務めることになってしまった。がむしゃらに働いてきたのだが、日本旅館のあり方に疑問を抱く。物語の書き始めは、このような疑問を抱いた紗衣子が修善寺の旅館を訪れ、もてなしの一つとして演じられている薪能をみる場面から始まっている。修善寺の女将は洌子、一人で宿泊する紗衣子を見て声をかける。話を聞いてみて、これは助けてやろうと妹分とする、と宣言、知り合いの剣にアドバイスを依頼する。

剣は紗衣子の旅館を訪れ、紗衣子の日野別荘の旅館としてのもてなしについて苦言を呈する。長良川の鵜飼い、花火などのイベントに依存しすぎてはいないか、泊まり客が心地よい一晩を過ごせるもてなしの心を失ってしまってはいないか、と疑問を投げかける。剣は山中温泉の故山亭を訪れることを紗衣子に勧める。故山亭を訪れた紗衣子はその旅館の主人紺野から日本旅館のあり方を教えられる。

姑の松乃は日野本館と別荘をもっと大きくしたいと思っているが、そんなことをすればもっともてなしの心が失われてしまうと紗衣子は考えるようになる。松乃には今まで我慢して従ってきたが、ある時本館と別館を建て直したいと持ちかけられ、ハッキリとそうは思わないと意見を主張する。

紗衣子の実家は鹿児島の知覧、父の元則は一人で元武家屋敷に住んでいる。そこに紗衣子の11歳の息子史朗と里帰りする。史朗は4歳の時以来であり、祖父の元則の生き方を知り、母の悩みを察する。実家の紗衣子が暮らしていた部屋にはそのころに残していった箱が残されていた。そこには学生時代に訪れたパリで知り合った建築家の卵、宗野徹也からもらった手紙が入っていた。その手紙には宗野の紗衣子への気持ちがあふれていたのだが、若い紗衣子は手紙の文字面しか読めず、徹也の気持ちがくみ取れなかったのだ。

紗衣子が小さい頃にお世話になった叔父で坊津に住む父の弟の元継を訪れる。そこで、父の気持ちを知ることになる。父は、「姑の松乃との確執で困っているなら帰ってくればいい」と考えていることを、元継の口から知ることになる。上巻はここまで。
春朧〈上〉 (新潮文庫)
春朧〈下〉 (新潮文庫)

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