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ワンダフルなにか ビューティフルだれか

並べてみると 輪郭がつかめるかもしれない

フォトブック・シンポジウム:MACK マイケルマックトークショー

2015-03-19 00:44:00 | 写真




イギリスの写真集出版社MACKのマイケルマック(Michael Mack)が来日し、トークショーを行うというので(そしてカタログとトートバッグがもらえるというので)久しぶりに六本木のIMAストアへ。


トークは二部構成になっており、最初に15年間働いたシュタイデルを離れ2010年に立ち上げた出版社MACKの歴史をマックが語り、第二部ではアマナフォトコレクション・チーフディレクターの河内タカの質問にマックが答える形で行われた。


「お久しぶり」という声が飛び交う業界関係者っぽい人々がほとんどの中、自分のような日の浅い単なる写真集好きビギナーが楽しめるトークショーなのか不安だったが、終わってみればとても濃い内容で写真集という媒体がより好きになった。まずMACKの歴史を1時間半かけてじっくり語ってくれたおかげで、写真集出版社というものがどういう意図と想いで運営されているのかよくわかった。第二部も「シュタイデルでできなかった事は何だったのか?(つまりシュタイデルを辞めた理由つまりMackを作った理由)」「影響を受けた写真家は誰か?」「自身の名前を会社名にした理由は?」「印刷会社は複数使っているのか?」「Paris Photoなどイベントに合わせた周期で出版活動を行っているのか?」といった質問がすでに面白い内容だったので、第一部で聴いた歴史がより立体的になって見えてきた。


個人的に面白かったのは、写真集業界はイベントに合わせるため、ファッション業界のように春夏・秋冬といった周期で出版行っているという事だった。また、Mackは経営戦略上アマゾンには卸していないらしく、アメリカでは大手書店Barnes&Nobleでの取り扱いが近いうちにはじまるらしい。「シュタイデルのような出版点数・高価格ではないものにする事で新しい読者を創っていきたい」と語っていたが、手の届く価格帯でアマゾンに頼らずに採算を取っていくやり方はそれだけで応援したくなる。改めて実物を見たらBroomberg&Chanarin「Holy Bible」がとても良かったのでいつか買おう。ちなみにマックが好きな写真集はMICHAEL SCHMIDT「WALL」「U-NI-TY」だそうだ。あと、Alec Soth「Songbook」は3週間で5000部を売り上げたらしい。実物を触ったが、表紙の(ふんわりやわらかな)触り心地がとても良かった。



フォトブック・シンポジウム:MACK
IMA CONCEPT STORE
2015年3月18日 20:00



Jungjin Lee  Unnamed Road

2015-03-01 00:09:23 | 写真





韓国生まれでニューヨークで活動している女性写真家Jungjin Leeがイスラエルとパレスチナヨルダン川西岸地区を撮った「Unnamed Road」はシンプルな白黒写真なのだが、静かな空気が流れていてどれも見飽きない。見ているうちにモンドリアンやザオウーキーの抽象画に思える瞬間がある。(撮影場所からして)深い何かが込められているのだろうが、白黒ゆえの線と濃淡をたっぷり楽しめる写真そのものの魅力が何も知らない自分をも惹きつける。あぁ白黒写真て楽しい。イギリスのMACKから出版されている。



北島敬三写真展 ヘンリー・ダーガーの部屋

2015-02-26 23:12:44 | 写真



「HENRY DARGER'S ROOM」を今年初めに買って、大きいサイズで作品を見てみたいと思っていたところに丁度良く写真展が開催された。


北島敬三がダーガーの部屋を撮ったのはダーガーの死後四半世紀が過ぎた1999年だが、大家で自身が芸術家でもあるネイサンラーナーが保存してくれたおかげで(一時期、自分の暗室として改造したり壁を白く塗り替えたりしたらしいが)ダーガーの痕跡がまだ残っている。会場のエプサイトはエプソンのショールームの一角ギャラリーとして使っている感じなので、展示数も多くはなく、照明もやや暗すぎ(懲りすぎ)な気もしたが、写真集より大きいサイズで見られた事ので行った甲斐はあった。





ヘンリー・ダーガーの部屋
エプソンイメージングギャラリー エプサイト
会 期 2月20日~3月12日
時 間 10:30~18:00



宇佐美雅浩展 Manda-la ミヅマアートギャラリー

2015-02-22 00:42:00 | 写真



一年前の自分なら確実に手に取ることはなかったコマーシャルフォトという雑誌この写真を見て一発で好きになった宇佐美雅浩という写真家が、ちょうど個展をやっていると知りミヅマアートギャラリーへ。


どんなジャンルであろうと、結局自分が何を求めているかといえば「痛快」という言葉が似合うものなのだ、この言葉が似合う想像力と手間が感じられるものが好きなのだ、と再確認させられた。あまり連発すると陳腐になってしまうし、そもそも使い方が合っているのかわからないが、私にとって宇佐美雅浩の写真はどれも痛快だった。


「Manda-la」シリーズは、中心人物を設定し、その周囲に関係する人・もの・空間を配置した現代版写真版曼荼羅図というコンセプトで創られているらしい。筋ジストロフィーという難病を抱えつつメイドカフェや同人誌書店を経営する会長を中心にアイドルやメイド、執事が映った秋葉原、ワインバーを経営する男を中心に津波で打ち上げられた漁船と持ち主不明の大漁旗が映った気仙沼、幼稚園と寺を運営する住職夫妻を中心に防護服姿で花見をする者たちが映った福島、高校の美術部顧問を中心に自身の茶道仲間とコスプレイヤーの娘とその仲間が同時に映った美術室など、被写体は多彩だ。


中でも印象的だったのは広島原爆ドーム前で撮られた作品だった。自身が被爆者で原爆体験記集「原爆の子」執筆者の会会長早志百合子氏を中心に、写真右側にはきのこ雲の巨大写真や黒い傘をバックに喪服を着た多数のダイ・イン、左側には多数の赤ん坊や身ごもった女性、そして広島カープのキャラクタースライリーが映っている。一人の人間を中心に広島の過去と未来が写し出されている。


文字にしてしまうと社会的メッセージが込められた「崇高な作品」という印象になってしまうが、(もちろんそれは込められているが)実物は見ていて物凄く気持ちのいい写真だ。ジメッとしていない。カラッとしている。込められた想いやかけられた手間と想像力が丁度良い湿度で画面に現れている。(負の遺産としての)過去、(解決したわけじゃない)現在、(それでも願う希望の)未来が一枚の写真にこんなに気持よく表れている事に胸を打たれ、ずっとこの写真を眺めていた。撮影を追ったドキュメント映像も流れており、これも必見。


他にも京都東寺で撮影された、弘法大師とお稲荷さんの出会いが描かれた「稲荷来迎」を舞妓さんも使って現代に蘇らせた↓も良い。天気の良い日に神仏習合している様は本当に気持ちがいい。


ちなみに、現在宇佐美は沖縄でシリーズ最新作を撮影しており、それが完成したら写真集を出版する予定だそうだ。絶対に買おう。











マンダラ広島プロジェクト


宇佐美雅浩 ドキュメンタリー「Manda-la in Fukushima 」(ダイジェストver.)






宇佐美雅浩展 Manda-la
ミヅマアートギャラリー
会 期 2/13~2/28
時 間 11:00~19:00



Gail Albert Halaban 「Paris View」 と 「Out My Window」

2015-02-16 00:58:26 | 写真






相変わらずいろんな所で写真集を手にとっては初めて見る良い写真に唸っている。
最近のお気に入りはGail Albert Halabanだ。


Gail Albert Halabanは1970年生まれニューヨーク在住の女性写真家でNYの様々な窓(窓の中)を撮影(盗撮)した「Out My Window」が話題になり、それがルモンド誌のフォトエディターの目に止まったことでフランスでも個展が開かれ、それがクチコミで評判になり、それきっかけでパリの窓を撮った「Paris View」という写真集が生まれた。というのが最近の活動の主な流れらしいのだが、この2シリーズがとにかく良い。


他人の私生活を覗き見している背徳感と快感があるのは確かだし、どこかでヒッチコック「裏窓」を引用した文章があった気もするが、そういうのを抜きにして唯々写真を眺めているだけで、屋内に篭る光・空気とその周りに広がる屋外の光・空気の対比が気持ち良くなってくる。メインは勿論「窓の中」なんだろうが、「窓の中」に魅せられれば魅せられる程、その手前に、そして奥に広がる街並みが気になってきて、いつまでも見ていられる写真だった(ちなみに室内から窓の外を写した作品もある)。そして写真自体がとても綺麗。これは大判プリントで見たい。今年もNYのEDWYNN HOUK GALLERYパリGalerie Esther Woerdehoffで個展をやるらしいが日本でもやらないだろうか。また、どうやら世界中でこういう写真を撮ろうとしていて撮影可能な場所募集中らしい。ちなみにエドワード・ホッパーオマージュの「Hopper Redux」母をテーマにした(?)「This Stage of Motherhood」など他シリーズも良い。


関係ないが「Paris View」を見て最初に思い浮かんだのはヒッチコックではなく、昔プレステで出ていたゲーム「UFO」だった。あれは面白かった。




 





David LaChapelle「LAND SCAPE」のメイキング

2015-01-29 22:59:05 | 写真
(1/2) LAND SCAPE by David LaChapelle | Medium format | Raw converter | Phase One




David LaChapelleの写真集は代官山蔦屋に置いてあるものを見たくらいなので全ては知らないしそもそも代官山蔦屋にはめったに行かないので忘れてるものもある(「Heaven to Hell」すらもどんな内容だったか忘れた)。が、この「LAND SCAPE」だけはずっと印象に残っていた。最初のインパクトも強いし、どこまでが加工なのか判断できず見返す楽しみもあった。要するに欲しかったのだが、高くて買わなかった。そのメイキングがアップされているとは知らなかった。こんな風にロケをしていたのか。メイキングを見た方がこの写真集の魅力は増すと思う。








こんな動画も
Eye Candy: The Crazy World of David LaChapelle



ソファをむしるなど冒頭の手持ち無沙汰感が味わい深い
Artist Interview: David LaChapelle at Gilded Lily







John K Sitting これがホントの「そこにすわろうとおもう」

2015-01-23 01:00:07 | 写真



パンと尻。


なぜこれまでの人生で一度もパンに座ろうと、座らせようと思わなかったのだろう。
こんなに最高な写真が撮れるのに。


この写真はJohn Kという無名の写真家が60~70年代に撮ったもので、その他にもパイ・ケーキ・果物・剥製・猫など様々なものに裸の女性を座らせている。何故世に出たかというとEric Krollというフェティッシュな作品を撮る写真家がコレクションとして持っており、その展覧会が開かれ、「Sitting」として出版されたかららしい。このJohn Kなる写真家についての情報がほどんとないため(そこが謎めいていて良いのだが)、写真集に書かれたeric krollの文章を読んでみたい。現在はAmpersand booksという米ポートランドの書店から2nd Editionが出版されている。日本ではflotsam booksで以前は買えたらしいが現在は品切れ。関係ないが、先日IMAストアのParisPhotoフェアではじめて見た大橋仁の「そこにすわろうとおもう」が何かと話題になっているらしいが、その原因や本自体の評価は別として、あれよりもこちらの方が“そこにすわろうとおもう”だと思う。



何度見てもパンと尻の質感と凹み具合が最高。




Francine Fleischer  SWIM The Water in Between

2015-01-18 01:33:07 | 写真





「ドイツシカゴ経由モダンのエリート」(byスチャダラパー)は全く関係ないけれど、シカゴニューヨーク経由で神戸にたどり着いた。


JulieBlackmonを調べようとシカゴのedelmangalleryという写真ギャラリーのサイトを見ているうちにFrancine Fleischerという写真家に興味を持った。特にメキシコのセノーテ(Cenote)という石灰岩盤が崩れて出来た泉で泳ぐ人々を撮影したシリーズ「SWIM」が良い。かつてはマヤ文明の生贄を捧げる場でもあったセノーテは、今やレジャースポットとして多くの人が泳ぎに来る場所なのだそうだ。という情報を知らなくてもこの写真はインパクトがあった。これそれこれなんかも。「鯉が泳いでいるようだ」と書いてる人がいたが、漆黒の水に鮮やかな水着の人々が密集している様はまさに池の鯉だ。密集している作品もいいが、これそれなども良い。ただ人が泳いでいるだけの写真なのだが、セノーテをよく知らないおかげで、この映っている空間がミステリアスで想像を掻き立てられるものになってると思う。


公式サイトを調べているうちに、なんと去年神戸で個展をやっていた事を知った。しかもこの「SWIM」が日本の版元から既に出版されているなんて!ギャラリーもやっている写真集の出版社兼書店のうたかた堂というところから出ているそうだ。調べた限りここ以外世界のどこでも出版はされてないようだから妙な縁を感じてしまう。いや、日本は写真の盛んな国だからおおいにあり得るし、神戸はそんなに縁はないのだが。それはそれとして、この写真集はとても気になる……





和田悟志 Invisible Borderと新たな系譜学をもとめてと関根直子

2014-12-22 00:28:54 | 写真



3年連続3回目のインフルやらなにやらでいろいろ予定が狂った12月、気になっていた和田悟志の個展が今週で終わってしまうので久しぶりに清澄白河へ。


現代美術館すぐそばのTAPギャラリーで小じんまりと開かれていた個展は、おそらく中国の都市開発や巨大建造物を撮ったと思われる作品が主に展示されていた。グロンスキーに近い匂いがして気になっていた作家なので、何が似ていて何が違うのかを思いながら鑑賞。展示の他に他シリーズ「すべてがそこにある」などがファイルで置かれていてけっこうな数の作品を見ることができた。


近いので現代美術館にも行った。ミシェル・ゴンドリーは気乗りせずスルーして「新たな系譜学を求めて」を見たのだが、美術展に限らずあらゆる場所で行われる身体表現はどういう形で見るのが最適なのだろう?といつも思う。ていうかやってる側は観客の身体をどう思っているのだろう?今展ではたくさんの身体表現の映像が20インチ程度の液晶画面で上映されていてそれをヘッドホンをして見るという、美術展ではよくある形なのだが、1作品10分はあるものを限られたヘッドホンを奪い合い(そんな殺伐とはしてないが)、立ちながらすべて見るというのはけっこう疲れる、というか無理である。映像にしろ生にしろ、立ってみるのか座ってみるのかこっちも合わせて動くべきなのか?身体表現はどうやって見るのが一番良いのだろう?


一度生で見たかった金氏徹平が手掛けたチェルフィッチュの舞台美術を見ることができた。「家電のように解り合えない」という芝居の美術だが、変な家電がいっぱい並んでいて面白い。突然震え出す冷蔵庫に一瞬ひるむ。なぜ金氏徹平は何度見ても飽きないのか?が自分でも整理できてないがやっぱり良い。この部屋に一番長くいた。


現役時代のジダンの映像が大画面で上映され、中田英寿がジダンの動きについて解説していたのだが、身体表現としてのスポーツで日本に限らないのであれば、マイケル・ジョーダンの方が見たかった。というよりジョーダンとコービブライアントの重心移動の違いについてだれか語ってくれないものか。あれだけ似せてきたコービは本当に凄いプレイヤーだが、あれだけ似せた事で改めて浮き彫りになったジョーダンの凄さもあってそれは主に重心移動の幅の違いだったので。(バスケットつながりで言うと、デルカリー・ステフォンカリー親子の、容姿じゃなくて動き(シュートフォーム)が遺伝した珍しいケースも美術館の大画面で見たら面白いのに)


コレクション展も見たが、まとまって展示されていた関根直子の作品がとても良かった。鉛筆とシャーペンで描かれた抽象的な線に唯々魅入る。「一つのこと」「反響」が特に良く、あの奥行と流れてる時間は何なのだろう?と何度も見返した。その他、吉田博と横尾忠則が並ぶスペースもとても良かった(横尾「木花開耶媛の復活」が良かったし、吉田博の帆船シリーズの時間の移ろいの綺麗さは実物じゃないとわからない事がミュージアムショップの作品集を見てよ~くわかった)。









新たな系譜学をもとめて-跳躍/痕跡/身体
東京都現代美術館
会 期 9月27日~2015年1月4日
時 間 10:00~18:00

和田悟志写真展『Invisible Border』
TAP Gallery
会 期 12月9日~12月21日
時 間 13:00~19:00



Julie Blackmon「Homegrown」と紀伊國屋新宿南店の洋書売場

2014-11-22 00:05:19 | 写真




リアル書店の良さとして「意図しない本との出逢い」が挙げられると思う。しかし、すべてのリアル書店にそういう出逢いがあるわけではなく、むしろ全く無い店のほうが多いかもしれない。私にとって紀伊國屋新宿南店の洋書売場は、いま一番出逢いのある場所だ。たいていの書店では大型の(高額の)美術書や写真集・海外コミックはビニール包装されているのだが、この店ではかなりの数を開いて読むことができる。ギュスターヴドレの版画以外を集めた画集やハンマースホイの画集、バンドデシネ「闇の国々」の海外版(日本版よりも少ない頁数で多くの冊数でできている)の実物をはじめて触ったのもこの店だった。


先日行った時にも新たな出会いがあった。Julie Blackmonというアメリカの女性写真家だ。↓の宙に舞う赤ん坊に惹かれて何となく開いてみたらどの写真も不思議な空気を醸しだしていて見入ってしまった。子供を題材にした写真が多いのだが、子供=カワイイを主張してくるような(私の苦手な)ものではなく、子供を良い写真のための一要素としてしか見ていない感じが良い(それにより、映ってる子供が逆に可愛く見えてくる)。Julie Blackmonは、9人兄弟の最年長であり3児の母でもある自身の子や甥姪を主な題材に、興味対象に夢中で周りが見えてない子供たちが集まったカオスを撮ることや現実と幻想が混ざり合った世界を撮ることを狙っているらしいのだが、正直どこまでが演出なのかがわからない。この写真なんて演出じゃないと撮れない気がするが、これこれなんて決定的瞬間を捉えたようにも見える。そしてどの写真も一瞬、アントニオロペスのような細密画にも見えるほど写真とは思えない異世界感が漂っている。これなんて特に。写真技術に疎いおかげでどこまでが加工なのかわからないのが良かったのかもしれない。


出版されているのは今のところ「Homegrown」だけみたいだが、公式サイトにある他のも作品も良い。いつか大判プリントを生で見てみたい。