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ワンダフルなにか ビューティフルだれか

並べてみると 輪郭がつかめるかもしれない

Netflix「アドレセンス」

2025-04-03 01:22:26 | 映画
週末にNetflixオリジナルシリーズ「アドレセンス」を見た。
とんでもなく良いドラマ。

あるイギリスの街の夜。
複数の武装した警察が自宅に押し入り13歳の息子を逮捕して行く所から始まる。
家族は何かの間違いだと警察に行くが次第に真相が明かされていく。

思春期の子供を、特に男の子を持つ親には刺さる内容だ。
まだだが、もうすぐ息子を授かる予定の私には刺さりまくった。

INCEL、日本で言うなら「非モテ(という自己認識に由来するミソジニー)」と呼ばれる題材がリアルに描かれてる。
国、時代を問わず存在する「男(らしさ)」の問題がSNS等テクノロジーの進化でより厄介なものになっているのはネットを見てれば嫌でも知らされる。

イギリスでは国会で取り上げられたほど大ヒットしているそうで、
世界中の思春期(Adolescence)の少年少女たちとその親が、この問題にどう対処したら良いのかわからずにいるんだろう。

主人公家族はどう見ても良い家族だ。
夫婦は互いを思いやり、いっぱい語り合いじゃれ合い、子供を大切に思ってる。
子どもも親とのコミュニケーションを嫌がってない。
なのにこの悲劇が起きた事に、この問題の厄介さが浮き立つ。

EP1で全編ワンカット撮影の世界観に惹き込まれる(「Boiling Point沸騰」も見てみたい)。
EP2の、学校という場の獰猛さ。
EP3の、思春期の純真さと脆弱さと暴力性のアンバランスさをリアルに描いた会話劇(少年と精神科医のどっちの役者も凄かった)。
そしてEP4。
あのドライブシーン。
マッドマックスばりに行って帰って(買って帰って)来るだけなのに、魅入ってしまう。
あんなに痛々しくも尊い思い出話があるだろうか。
(会話は心を停滞させて押しつぶさないためにあるのだなきっと)

帰ってきてからの予定変更(計画縮小)も良い。
あんなにホッとする出前(Take Away)もそう無いだろう。
最後の夫婦の会話が良いのは言わずもがな。

EP2で学校に捜査に来た警官2人も良かった。
思春期の、どうやらいじめられている(捜査に行った学校に通う)息子を持つ、子供が欲しいとは思ってなかった父親警官。

欲しくなかった。
でも息子を愛してる。
だけど時々息子にとっていい父親じゃない気がする。
I never wanted 'em.
But I do love him very much.
But... Look.....
Sometimes I don't think I'm the right fit for him as a dad.


子供を持つ気のない無骨な相棒の女警官の言葉も良かった。

学校はクソだったけど、中には素晴らしい先生も生徒もいた。
アート、写真を教えてくれた。絵を書くのが好きだった。
子供には一つでもなにか誇れるものがあれば十分だ。それが必要だ。
Cause I had a good teacher. I had Mrs. Benton, who was fucking class.
I had Mrs. Benton, who was fucking class.
She taught, um, art and photography.
I liked drawing pictures and stuff.
All kids really need is one thing that makes them feel okay about themselves
.


年始に見たAppleTVのオリジナル「Little America」もめちゃくちゃ良かったし、
ドラマの当たりが続いている。


『アドレセンス』予告編 - Netflix

THE FIRST SLAM DUNKについて

2023-01-23 21:21:23 | 映画
映画『THE FIRST SLAM DUNK』

映画『THE FIRST SLAM DUNK』

映画『THE FIRST SLAM DUNK』2022.12.3 公開。

映画『THE FIRST SLAM DUNK』

 


オープニングの登場シーンと再現度が高過ぎるプレイシーンを作ってくれただけでも
東映と井上先生ありがとうございますだし、
スポーツを描いたアニメーションとして最高峰では?とも思う。
誰にとっても初体験の「THE FIRST」となり得るSLAM DUNK。
文句なく面白かった。


でも。
少しモヤモヤする。
なんでだろう。


連載時から30年近く経ったいまアニメ映画化する理由として、
痛みを経験して、それでもなお一歩前へ出て殻を破る。
この視点こそ、今時分がやる意味になる。

と作者はインタビューで答えていた。
宮城という、原作ではそこまでバックグラウンドが描かれてなかったキャラクターを
掘り下げることでそれを実現しようとした。
成功しているとは思う。面白かったから。



でも。



そもそも原作スラムダンクの何にグッと来てたんだっけ?自分は。
こういう事のような気がする。
作者に寄せて言うなら、痛みに対する対峙の仕方が良かったのじゃないか?
痛みや挫折を(も)抱えた人間たちが、それはそれとして、
強がりや虚勢をはりながら、時には愚行も犯しつつ、
純粋に競争を楽しみながら競争を通して人と関係し、人生を進めていく様が、
新しいスポ根漫画という感じがしてグッと来てたのじゃないか?
つまり、作者の言う「痛みを経験して、それでもなお一歩前へ出て殻を破る。」
バスケだけを使って描いていたから良かったのじゃないか?
実力だけがものを言う残酷で平等な世界。
その残酷な平等が痛みへの癒やしにもなり得る。
それが原作スラムダンクには描かれていたと思う。
(より描こうとしたのは次のバガボンドなのかもしれないが)
キャラクター達は強がる。
痛みを抱えてたとしても。
単に負けたくないから。
勝ちたいから。
辛くても強がる。
そこが良かったのだ。


だから、宮城の生い立ちを描くのは良いし、
実は「心臓がバクバクで怖い」という気持ちを大切な人に吐露してても良いのだけど、
それでも表では、コート上では、原作のような強気な様をもっと描いていてほしかった。


そしてバスケットボール。
というかスポーツ。
スポーツと人生。
ある競技において直面した具体的な困難を、具体的に乗り越えていく経験が、
その後の人生のあらゆる局面での痛みや挫折を乗り越える糧となったりする。
それがスポーツをやる事の良い面だ。
だから、原作の山王戦の名場面たちを忠実に描くことそれだけでも
作者の描きたかった「痛みを経験して、それでもなお一歩前へ出て殻を破る。」
は描けたのじゃないか?
河田兄との残酷なまでの実力差を見せつけられ、
積み重ねてきた努力が無に帰すような挫折一歩手前まで行くゴリ。
過去の愚行、ブランクを悔いながらスリーを決めまくる三井。
コートに立つことすらできないがベンチから一緒に闘うと決めた小暮。
才能ある教え子を潰してしまった過去を持ち、その教え子を超える逸材があらわれた(しかも二人同時に)事に興奮を禁じえない安西監督。
不純なきっかけで始めたが、人から期待される喜びを味わえたバスケットが出来なくなるかもしれない怪我と闘う桜木。
山王戦だけでもドラマはもっとある。


山王戦の試合描写にもっと時間を割いて欲しかったのだな自分は。
山王戦にはもっといっぱい大切なものが詰まっているから。
あのレベルでプレイをアニメ化してくれてたから尚更そう思うのだな。

音についてもちょっと。
観客の歓声やどよめきのメリハリがもっとついていれば試合への没入感が増しただろうし、
選手が集中して外部の音が聞こえなくなる描写やラストの無音がもっと活きた気がする。


でも、結論としてはめちゃくちゃ面白かったです。


『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』

2021-01-08 00:48:05 | 映画
『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』日本版予告



2017年に話題になったこの作品を元旦にNetflixで見た。
最初は切ない、少し不思議なラブストーリーものかと思ったが違った。
幽霊となった主人公を通して家に宿る記憶、土地の記憶を描く本作は、
タモリがずっとタモリ倶楽部やブラタモリで軽妙に見せてきたものに通じる。

人も想いも生まれては消え、また生まれては消える。泡のように。その繰り返しが続く。
その繰り返しも(あの「家」である時期に行われたパーティで中年男性が語ったように)
いつか宇宙の膨張の結果として全ては消滅する。

そのような壮大な、手塚治虫の火の鳥のようなスケールまで広がったうえでの
ラストシーンは、公開当時議論の的になったという。
私はあれは(たとえ大人の事情で差し込まれたものだったとしても)結果的には良かったと思う。
どんなに壮大なスケールの、客観的な視座を手に入れたとしても、
どんなに多くの情報を手に入れたとしても、
人はごくごく些細なことを気にし続けこの世に未練を残す生き物なのだ、という諦念。
そしてそれを繰り返す、全てが消滅するまで。
ということすらを受け入れる深い包摂を(結果的に)描けていたと思う。



スリービルボード TOHOシネマズ新宿

2018-02-01 23:38:05 | 映画
『スリー・ビルボード』予告編 | Three Billboards Outside Ebbing, Missouri Trailer



リキッドの坂本慎太郎LIVEはサイコーだった。
そして今日見たスリービルボードもすごく良かった。

これは「Three Billboards」であり、「Three Letters」でもある。
「あの鐘を鳴らすのはあなた」の二番の歌詞でもある。
そして、立川談志解釈による「鼠穴」でもある。

自分を頼って上京してきた弟に、「独立して商売した方が儲かる」と励まして餞別と称して三文を渡した兄。悔しさから発奮して商売に成功した弟が数年後に尋ねてきた際に「お前のためを想ってあえて」三文を渡したという兄。
「ほんとかね?人間の気持ちと関係ってのはもっと曖昧模糊としたもんですよ」と言った談志。


ミズーリ(それもオザーク高原)と聞いてピンとくる程アメリカ事情に詳しくはないけれど、
共和党が勝ち続け、警官による黒人射殺事件が起きるような土地での、
曖昧模糊とした愛と許しについての映画。
だったと思う。
ストローで人の凝り固まった気持ちを溶かすことができるのだな。

予告編はよくできてる。
この結末を想像できないがこの作品を見たいと思わせている点において。
また見返したい。


映画を見終え、外に出ると雪が降っていた。


繰り返すが、リキッドでの坂本慎太郎のLIVEはサイコーだった。



ヴァスチャンヴィヴェスのBD「ポリーナ」が映画化

2017-10-01 00:43:38 | 映画
映画『ポリーナ、私を踊る』本国版予告編



個人的なBDブームが落ち着いた今見直してもヴィヴェスのBDはコマの進行具合が気持ちいいし、サクッと読めて読後感がカラッとしている。


元々この人の作品は映像向きだと思っていたので楽しみ。「塩素の味」の主人公がプールをただただ泳ぐシーンの方を映像化してもらいたいけど。


↓は原作。

Killer Joe マコノヒー最高映画

2017-07-30 23:52:46 | 映画
Killer Joe Official Trailer [HD]: Matthew McConaughey, Emile Hirsch and Juno Temple: ENTV



気づけばもう夏。
毎時毎年、時の経つ速さに驚愕しているが、面白いこと忌々しいこと凹むこと興奮することがとっかえひっかえにやってくる。

この二ヶ月はわりと映画を観ていた。↓はほぼ初見なので、いかに最近映画を観ていなかったかがわかる。この中で印象深いのマーゴット・ウェディング(全編通して変な空気が流れててサイコー)、ディストラクションベイビーズ(モロに「ワールドイズマイン」だけど柳楽優弥の顔がサイコー。ラストの河原でサングラスを取るシーンはあまりに狂人然とした目つきがわざとらしかったけど)、マンチェスターバイザシー(正統派に良い映画)、ブラック・スワン(ナタリーポートマンの俯せオナニーとラストの充血した目がサイコー)だろうか。

それ以上に最高だったのがキラー・スナイパー(原題Killer Joe)。登場人物全てがクズ。マコノヒーのあのピュアな目、主人公一家の継母ジーナ・ガーションのクライマックスの顔(アップ)。全編笑える。今作とマーゴット・ウェディングと、ツボにはまるアメリカコメディに出会えた。マコノヒーはウルフ・オブ・ウォールストリートよりこっちの方が好きかもしれない。追憶の森は観ていない。

今みたいのはエミリー・ディキンソンの自伝映画。



201707
mud
キラースナイパー
ビフォアミッドナイト
ビフォアサンセット
ビフォアサンライズ
フィフティジェイズオブグレイ
山田孝之のカンヌ映画祭
山田孝之の北区赤羽
セッション
アバウトタイム
ミリオンダラーベイビー


201706
マーゴットウェディング
海街ダイアリー
ある天文学者の恋文
ディストラクションベイビーズ
ジュリエッタ
カフェドフロール
葛城事件
ヒメアノール
サウルの息子
マンチェスターバイザシー
ストレイトアウタコンプトン
ブローン・アパート
イヴ・サンローラン
エクスマキナ
ブラックスワン
プラダを着た悪魔
ハドソン川の奇跡
コンプリートアンノウン
パーソナルショッパー



コンプリートアンノウン Complete Unknown

2017-05-16 00:15:50 | 映画
Complete Unknown Official Trailer 1 (2016) - Rachel Weisz Movie




amazonプライムで「コンプリートアンノウン 〜私の知らない彼女〜」という映画を見た。
これがとても面白い。

何かになりたいのか?本当は何者にもなりたくないのか?
己の人生から逃げるor逃げないとは何なのか?(結婚はどっちなのか?)
自由って?責任って?
といった思春期くらいに湧いてくる根源的かつありふれた疑問について考えを巡らせてしまう映画だ。


無い事は自明なのに探してしまいがちな「本当の自分」なるものに背を向けて世界を泳いできた主人公は自由でミステリアスで空虚さも身にまとう魅力的な女性だ。


確かに、この主人公はクライマックスの別れのシーンで自分のこの生き方を寂しく思ったのかもしれない。ただ、それが唯一の本心ではないはずだ。一時寂しく「も」思ったが(だからこそ男主人公に会いに来たのだ)、結局この、世界中どこへ行っても何者かになって生きることができてしまう自分の才能を謳歌して今後もやっていくのだろう。空虚さも決して消えはしない。けれどもそれは誰かとどこかに定住してひとつの固有名のもとに安定した暮らしをしたところで消えるものではない。という事をおそらく彼女は知っている。だからこミステリアスで魅力的に見えるのだ。


明石家さんまが座右の銘は?と聞かれて「人生上っ面」と答えていたのを思い出す。




藤子F不二雄と大友克洋と秋本治が手塚治虫について話している

2017-03-30 01:54:08 | 映画
Atom and AKIRA: Katsuhiro Otomo talks about Osamu Tezuka (手塚治虫の遺産 アトムとAKIRA~大友克洋が語る手塚治虫 )



F先生と大友克洋が手塚治虫について対談している。
秋本治やりんたろうまで出てきてなんとも豪華な番組をやっていたものだ。
ユーチューブがいきなりオススメしてきた。
やるじゃないかユーチューブ。



この世界の片隅に

2016-11-27 23:08:05 | 映画
君はそう決めた ( You Just Decided ) / 坂本慎太郎 ( zelone records official )



確か公開二日目に見に行ったのでだいぶ経つが、どうも大ヒットしてるらしい。
能年玲奈を干してきてこの映画の宣伝すらほとんどやらなかった(らしい。とネットで見た。うちにTVがない)クソみたいな芸能界に中指を立てる意味で絶対に映画館で見ると決めていたこうの史代原作のこの作品が良いことははじめから分かっていたので見終わって立てなかったとか嗚咽したとか、そういうのは無かった。アニメ作品としては、動かない一枚絵にセリフを載せるシーンがあるだけで萎えてしまうという個人的な嗜好もあってか、かぐや姫の物語程打ちのめされはしなかった。でもこの映画は文句なく良い映画だし、能年玲奈の声優としての才能を堪能できただけで大満足だ。


この映画で扱ってる価値観は坂本慎太郎があの時期に出した「君はそう決めた」によって(そして朝ドラ「カーネーション」によって)すでに自分の中に埋め込まれているなと思いつつこの映画を見ていた。



終戦直後の径子姉さんの路地裏での嗚咽が一番キた。
感情移入をさせない、どこかの戦地で死んだ(らしい)すずの兄さんもずっと気になってしまう。


でも今年一番の映画は「キャロル」です。



DENKI GROOVE THE MOVIE ? 高橋以前と高橋以後

2015-12-29 23:19:50 | 映画




むっっっちゃくちゃ面白かった!!!
マッドマックスより全然面白かった。
今年ほぼ唯一正規料金を払って劇場で見た映画がこれ。


本当はお正月に見ようと思ってたのだが、本人とナイツの塙のトークショーがあると聴いて急遽見に行ったら本人の来ないトークショーだった。それでも今年の27日という日に電気グルーヴに影響を受けて漫才を作っている程電気ファンのナイツ塙が電気グルーヴの映画のイベントであの話題で毒を吐かない訳はなく、腹を抱えて笑った。おそらくこの先誰も思いつかない視点で電気グルーヴ史が語られた日だ(サイコー)。笑いはもうテレビで見てもしょうがないな。酸いも甘いも正常も異常も「笑い」という一点で包み込んで有りにしてしまう恐ろしくも懐の深い、くだらない大好きな笑いは。それにしても昔の電気は狂ってる。




「DENKI GROOVE THE MOVIE ?」SPOT