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ワンダフルなにか ビューティフルだれか

並べてみると 輪郭がつかめるかもしれない

最近読んだ本

2011-11-08 01:37:44 | 



<SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006>
何の気なしに入った閉店間際の古本屋で遭遇。
発売当時買い逃してアマゾンでは暴騰していて
あきらめていたものが2000円で手に入る!
小さなラッキーどころじゃなく見つけた時に思わず声が出た。







<泣かない女はいない>
「ああいう、使い道がないのに消えない記憶や知識は、使えるときに使ったほうがいいんだ」(P79)
<センスなし>
男は一度もよけなかった、と書いてある。ぐったりしているので女は救急車を読んだが、病院で死亡した。
男も女も自分たちよりも数段高尚な存在に思えて、保子は感嘆の息を付く。記事を二回読み返す。
フライパンというのがいい。悲しみを一手に引き受けるのにふさわしい道具のように思う。(P169)。

どちらも雪のある冬の描写が札幌に住んでいた頃を思い出す。
(朝、ストーブにあたりながら正座して新聞を読む母や自分など)







<本へのとびら――岩波少年文庫を語る>
基本的にDVDで語られてる事と同じ。
父親について語ってるところが印象深い。







<遺体 震災、津波の果てに>
震災後の岩手県釜石市の遺体安置所をめぐるルポ。
ひとつの場所をめぐる複数の立場、視点による差異。
そしてずっと疑問に思っていた事柄のディテールが描かれていた。
海上保安部員の海での遭遇の描写に絶句。
津波に襲われた地区で生き延びた人はみんな見ているのだこの情景を。
そしてその経験をくぐり抜けて今いるのだな。




変わった沖縄観光ガイド

2011-11-04 00:20:00 | 


「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること」

今年のベスト5には絶対入る面白い本でした。
良質な写真満載で「るるぶ」感覚で読み進められる沖縄の「基地」観光ガイド。
基地への行き方・見学の仕方が丁寧に書かれていたり、
ディープな話題と同じページに、付近のカフェやベーカリーショップが
載ってたりするところがこの本のいいところだと思います。
敷居は低く中身は深い。
個人的な入門書として最適でした。
タイトル通り知らない事だらけ。
これを持って沖縄を旅行してみたいです。
しかし、「菊と刀」が日本を長期隷属させるために他のアジア諸国と連帯させない事を目的として
日本文化の独自性を強調したアメリカの「対日心理戦争」の一部だったって記述(P165)には
衝撃を受けました。





本書内のブックガイドがバラバラに書かれていたのでまとめてみました。






















<画像なし>
ペリーは、なぜ日本に来たか (新潮選書)
ペリーの対日交渉記
沖縄の帝王 高等弁務官
瀬長亀次郎回想録
一九四六年憲法-その拘束―その他 (文春文庫)
クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史 (中公新書)
田中角栄新金脈研究 (朝日文庫)
米軍基地を押しつけられて―沖縄・少女暴行事件から


<サイト>
国立国会図書館「日本国憲法の誕生」
普天間基地のグァム移転の可能性について
democracynow!
independent web journal
沖縄県知事公室基地対策課






ラーメンと愛国:「ご当地」って「GOTOUCHI」として世界に広められそうですね

2011-10-26 23:39:33 | 


「ラーメンと愛国」 
速水健朗 講談社現代新書



戦後のインスタントラーメンの普及がアメリカの小麦戦略の影響を受けていた事や
ケロッグコーンフレークが禁欲的な宗教一派の理想食を目指して作られたって話や
ドラマ「渡鬼」を題材にした世代間のラーメンに対する意識とノスタルジーの話など。

中でも一番おもしろかったのが第四章「国土開発とご当地ラーメン」。
地方産業を発展させようとした田中角栄の意志を受け継いだのは岩岡洋志館長であり、
「日本列島改造論」の意志は「ラーメン博物館」に受け継がれている。
って話が「くだらねぇ!w」と「おもしれぇ!」が絶妙に混ざった最高のものでした。
そしてラーメンで使われる「ご当地」って言葉の説明が「なるほど!」と膝を叩く内容でした。
もともと札幌に味噌ラーメンがあったわけじゃないし、喜多方に平たい麺のラーメンが昔から
あったわけじゃない。たまたまそういう珍しいものを出すお店がメディアによって有名になり
地域の観光地化という目的のために意図的に普及、統一されていった。
つまり、「ご当地ラーメン」は地域の名産を使って
「郷土の気候、風土、知恵が混じり合い、その地域に根ざした」
ものではないのだそうです。

これを読んで
「ご当地ラーメン」が行ってきた「伝統の捏造」って、グローバル化に対抗したいけどスロー
フード運動みたいなゴリゴリの政治的な反発でもなく、なんだかスキのある感じになっていて
とても親近感が湧きました。
でもまじめな話、この「ご当地」って概念、説明次第で世界中に広められないですかね?
グローバル化によって歴史や伝統が途切れ、壊れてしまった地域は世界中にあるだろうし
それを取り戻そうとするならやっぱり「捏造」が必要で有効だと思ってしまいます。
政治性を帯びてない分、「ご当地」は余計に広めやすい気がしてしまいます。
「OTAKU」「MOTTAINAI」に続いて「GOTOUCHI」。
イタリアでGOTOUCHIパスタ、インドでGOTOUCHIカレー現象が起こってもおかしくないと思います。
(もう起こってるかもしれないですけど)


湾岸戦争を真面目に語った直後に「一方日本では環七ラーメン戦争があった」
に吹いた第五章もおもしろかったけど、
90年代以降の日本のナショナリズムとラーメンを語るなら、著者も好きなサッカーを
出さないのは不自然だし物足りなかったです。絶対関係あるでしょ、日本代表と
趣味的共同体としての新しいナショナリズムは。
有名店主による「ご当人ラーメン」て言葉も初めて知りました。





ショーンタン講演会でとっさに残した携帯電話へのメモ(そして再会が二度あった日)

2011-10-23 00:52:33 | 



パース郊外発展破壊見て育つ
父中国系マレーシア人 母英国・アイルランド系オーストラリア人
所属の問題
日本の影響アトム浮世絵ブルームの日本人真珠ダイバー減圧症
実在の街と非日常
きたむらさとし UFODIARY
エドワード・ゴーリー うろんな客
クラフト・エヴィング商會どこかにいってしまったものたち
博物館からえたいのしれないものタンさんが説明
パース海の生き物
LOSTTHING制作一年映画化説得され一年
映画内テレビ広告フライフィッシュは自作
アライバルパースの沼カエルおたまじゃくし成長の途中半端
移民どこにも属さない
ディエゴという飼ってる鳥の目くちばし
フレンドリーかつ予期できない
絵をかくとき音楽流さない
線は未完成であるべき
兄がいる
アニメーションに興味あり 


あとでこれ見て考えをまとめたい。


追記
近くに座ってたのは道尾秀介だと思う。




杉浦日向子三昧

2011-10-22 01:32:37 | 








社会の個人の諸々の大きな出来事以後に妙にハマってしまった杉浦日向子。
好きなタイプの異性は?と聞かれれば「百日紅のお栄」と
即答してしまいそうな今日この頃。
上段四冊はこれから何度も読み返すだろな。

百物語はゾッとするというよりはひんやりと涼しくなる怪異譚。
一番好きなのが「旅の夢の話」。
男が商用で遠出しやっとのことで家路についてみたら
女房子供が自分の存在に気づかない。
何度呼びかけても気づかない。
気づくと自分がハエに変わっていてはたき落とされる。
と思えば家路の途中で我に返る。
夢だったのかどうかわからない。
「それからずっと旅をつづけております」と
告白する老人の話。
読むとなんかスーっと涼しくなる。
女が化けて出る理由が生前井戸にコンニャクを落として
気になって成仏できないっていう別の話も
可笑しくもスーっと涼しくなっていい。

「とんでもねぇ野郎」みたいにいい加減に生きたい。
逃げて誤魔化して思いつめずに楽しく適当に安定して。
自分には絶対無理だと最近特に痛感してる。
完全なる憧れ。いいなぁ。



あと



にのってる「三味線枕」って漫画の絵がとってもいい。
色がいい。






大野更紗「困ってるひと」

2011-06-08 23:32:46 | 
ふと本屋で手にしたポプラ社「asta」という冊子に載っていた
大野更紗さんという人のインタビューで興味を持った
web連載がおもしろい。
かなり稀な難病を患って闘うという内容で
事実だけ羅列したら凄まじいんだけど、
読後感はただひたすらに「おもしろい!」が残るという文章。

ご本人が「闘病記じゃなくておもしろいものが書きたい」と
意図して書いたそうだが、全くその通りになってる。
ほぼ徹夜で一気に読んでしまった。
いや~おもしろい。

でもその「おもしろい」には
この国の制度の矛盾や「人とのつながり」ってものが
決してただひたすら「良きもの」としてあり続けることができない
限界があるものだという現実(だからこそ制度が必要だと著者は強調している)や差別や孤独や。
そういうものが闘病を通して露わになっていくので読み進むうちに考えさせられる。

しかしそういったヘビーな現実達も含めて
「おもしろく」書き記されているから余計に引き込まれる。
そして、人はささいな理由で、その一点のみで、
自ら終わろうと考える程どん底だった状態から這い上がる
バイタリティの塊のような人間に豹変し、
およそ無謀とも思える闘いにも挑んで勝利できてしまったりする。
絶望も希望も普遍的なものなんかじゃなく幻想であり、
世界を見る角度によってそれはどうとでもなるものなんだ。
などという熱い思いも沸いてきたりする。
それもおもしろと一緒に。


関係ないが、
「この内容をこんなおもしろく書けるのか!」
という意味で古谷実のシガテラを読んだ時を思い出した。


本にもなる模様

おもしろいので買ってもう一度読もう。



絵ばっかり

2011-03-27 01:42:32 | 
          


        


          



最近絵ばっかり見てます。
すごい絵は時間て概念が無くなっちゃいますね。
いろんな世界に連れて行かれて
いろんなものを突きつけられて。



オールタイム枕元に置く本

2011-01-25 22:07:46 | 


        絵引民具の事典



新年早々今年買った本のベスト級のものに出会ってしまった気がする。
庶民の生活用具である民具を

 「たべる」   「よそおう」
 「すまう」   「たがやす」
 「かう」    「とる」
 「つくる」   「はこぶ」
 「あきなう」  「いのる」
 「たのしむ」  「まじわる」

の用途別に分けて紹介している事典。
何がいいって全部の項目にイラストが入ってて
そのイラストがいい味出しててしかもわかりやすい。
(検索したらイラストレータの息子さんと思われる方のページ

めったに行かない近くの古本屋で新品同様の状態で置いてあり、
めちゃめちゃ惹かれて、でも3400円もして高けぇなぁ…
とずっと迷ってたが、
amazonを見ると中古でも5500円もしていて
急に3400円が安く感じられたので思い切って購入。

いや~買って良かった。
ぜんぜん知らないことばっかり載ってるからおもしろい。
これからずっと寝る前にちょこちょこめくる本として
枕元に置いておきそうな予感。


やっと読んだ

2011-01-21 00:05:49 | 


やっと思想地図βを全部読んだ。


<ショッピングモール>
全体的に、やはり、ショッピングモールに魅力は感じなかった。
かといって商店街的なものに魅力を感じているかといったら
そうでもなくて、そうすると、
きっとこの論に対置されるべきなのは嫌消費だったり、
ネット通販だったりするんじゃないだろうか?
とか思ったりした。

秋葉原と裏原宿が「趣都」として全く同じだというレポートが面白かった。


<パターン>
こっちの特集・対談の方がおもしろかった。
李さんの
「やはりボクは自分がデザインをしている人間だけに、個人が主観的な心象レベルで
 モデルを立ててパターンを想像していくと逝ったことに、とうに限界を
 感じてしまっている」(P159)

という箇所や、
東さんの
「作家の個性とは何か。~そんな個性なるものは、作家の文章を全て形態素解析して、
 単語の発言頻度ネットワーク図なんかつくると、けっこうわかりやすく可視化できて
 しまう気がするのです。サイエンスの外側にクリエイティビティがあるという二分法は、
 計算機科学の導入により崩れ去ってしまうのではないか。」(P162)

という疑問や、
井庭さんの
「あくまで構造のパターンであって、創造のシステムのパターンではない」(P163)
という反論がある。
そして東、増田氏による
人間関係を数値化することによって自殺、鬱の問題すら解決の糸口が見つけられる
という可能性が提示される。

東さんが常に提示しようとしているのは、
全ては
「単純な形では構造化されていないだけで決して無秩序ではない(P166)」
ものにパターンを見いだすことによってそしてそれを可視化して認識できるように
することで、あらたなフィードバックが起こって全く新しいものが立ち上がってくる可能性
であり、そこにすごく魅力を感じる。

こういった問題は理系学問では既にとりあげられてる問題だったりしている
みたいだが、この問題を増田さんがいう
「哲学的なセクシーさ」をもって繋げ、語られているところに
この雑誌とこの対談のおもしろさがあると思った。
「それがうまく図式化できると、ツリー型のユニットの集積として構築された20世紀
 初頭までの国家や社会のモデルが、本当の意味で置き換えられるようになるでしょう」
(P167)


そしてこれは音楽対談での菊地さんの
「マニアが勝つという希望もしくは絶望に対して、マニアでなくともいい、
 泣けて共感できれば、そして、純粋、ということが対置されましたが、
 それは対置のようでいて対置ではない。
 アナリーゼができると手持ちのレコード50枚あれば単純に強いリフレッシュと
 抗鬱効果が期待できます。」

という主張にもつながる部分があるような気がして読んだ。


ジャンルを越えてもっと混ぜ合わせることでいま起こっている問題を
乗り越えられるかもしれないという可能性を一貫して主張しようとし、
なおかつそれが専門知のないものにも深い部分までかろうじて見えるよう
語ってくれる東さんおよびこの雑誌はやっぱり超刺激的でおもしろい。


個人的には鳥のツイートの話と福嶋亮大さんの論考がいちばん好きなんだけど。