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ワンダフルなにか ビューティフルだれか

並べてみると 輪郭がつかめるかもしれない

David Wiesner

2013-02-26 00:27:05 | 



ふと興味が湧いてDavid Wiesnerを何作か読んでみた。


【David Wiesner】
1956年アメリカニュージャージー生まれの児童文学作家。


「かようびのよる」
とある火曜日の夜。池のカエルが蓮に乗って街にやってきた。
コールデコット賞 絵本にっぽん賞特別賞受賞作品。 
大量の(リアルな!)カエルが夜の街(郊外)を行く様が異様な雰囲気を放つ。

「3びきのぶたたち」
3びきのこぶたからぶたたちが飛び出してきた!ぶたたちが様々な絵本を冒険するメタ絵本もの。
絵本内と外の描き分け方がとてもうまい。

「セクター7」
エンパイアステートビルの展望台に上がった少年は雲の子に出会う。雲に乗って行った先には…
5作中最も好きな作品。雲の世界の描写と様々な生き物の形になる雲の絵がとても良い

「1999年6月29」
小学生の少女が苗木を空に打ち上げる実験をした。すると大きな野菜たちが降ってきた…
絵本らしい絵本。

「夜がくるまでは」
建物の雨どいであるガーゴイルが、夜な夜な街を徘徊する物語
文章部分の隙間もうまく使うなど、絵と文字の配置がうまい。










ドミトリーともきんす

2013-02-15 00:40:53 | 



高野文子が現在連載しているドミトリーともきんす

この連載がいつまで続くのかわからないが、
高野文子作品の中で一番好きなものになる予感がしている。

科学を勉強する学生が集う寮を舞台に
毎回一人の科学者を描きその著作を紹介していく漫画。

現在四回分が掲載されており、
「鏡はなぜ上下反転しないのか?」
と一冊の本を書き上げ
「物理学の自然というのは自然をたわめた不自然なつくりものだ」
と書きながらノーベル物理学賞を受賞している朝永振一郎、
「植物観察には絵筆と虫メガネが一番」
とデジカメを一蹴し植物図鑑を書き上げた牧野富太郎、
「雪は天からの手紙」
と雪と氷の研究をし随筆も残している中谷宇吉郎
の三人が紹介されている。

マンガ家が活字本の魅力をマンガで紹介するというのは
考えて見ればもっともな話だけど
他のマンガ家がやっているのを読んだ事がないから新鮮だし、
それが高野文子の視点とコマ割りで描かれるのだから当然おもしろい。
おもしろいうえにタメになる。
寺田寅彦の随筆くらいしか読んだことのない人間にも
付いていけそうな理系の世界が広がるきっかけにもなりそう。

寮母の、
科学なんてよくわからないけど興味は無いこともない
というスタンスでの振る舞いが読む側を安心させてくれる。














白山宣之「地上の記憶」

2013-01-24 23:57:57 | 




これを読むまで著者について全く知りませんでした。

が、谷口ジロー、大友克洋、高野文子がメッセージを
寄せていると聞いちゃぁ読まないわけにはいかない。

ニューウェーブ世代の旗手として大友克洋・高寺彰彦・山本おさむらとともに活躍した
白山宣之の遺作集。(amazon)


5作からなる短篇集。
「陽子のいる風景」の冒頭、
父と娘の朝の出勤風景を淡々と描いた一連のコマを見て
この豪華メンバーがメッセージを寄せている理由がわかってしまった。
(窓からの風で捲れる文庫を読む通勤バスの娘が決定的だった。個人的には。)
体育館内の空気感がものすごく良く出ている「ちひろ」とともにこの2作品は
所謂小津的と言われる作風。
その他、平田弘史の影響を受けた「大力伝」も冒険活劇「Tropico」もおもしろく読んだが、
個人的ベストは「Picnic」。
農民が食いもん飲みもん持ち寄って見晴らしの良い所から関ヶ原の戦いを見物しようという話。
まずこの発想が新鮮。
そして描かれてる人達が本当に良い。
侍に憧れる子供、それを馬鹿にする子供。
首を斬り取る瞬間を見て目がハートになる娘達。
どっちが勝つか賭け始める男達。当然モメる男達。
「ほれ、キレイだべ?」と泣く赤子に戦を見せる母親。
取り敢えず飲みたい親父。
よくわかってないが長生きして良かったとキセルを吸う爺さん。
これらの人間がカラッと描かれていて読んでて心地良い。

天下分け目の大戦がこんなにのどかに描かれた創作物って他にあるんだろか?


晩年の病床で、寡作だった著者が夫人に言った言葉が印象的だった。

「俺達は新しいものが次々と出てくる時代に育ったから、創りだすものは、自分も含めて誰も
 見たことの無いものじゃなくちゃいけない、って思ってた。
 だけど、そうじゃなくてもいいんだ、って解ったんだ。受け取ったものを、自分なりに消化
 して、作り出せばそれでいいんだよ。どんな芸術だってそうしてきたんだよな。」






追記:白山宣之の娘さんのブログというのを発見した。
   氏が黒澤明の撮影風景を取材したものや未完作品の表紙イラスト等が載ってる。
   これがまた、イイ…






海外マンガ漬け 大友克洋漬け

2012-11-18 23:22:58 | 




「海外マンガフェスタ」とそれに関連したトークイベント「BDにおける身体」


コマ割りマンガの起源と言われているテプフェールについての講義を
「闇の国々」の作者ブノワペータースから聴き、
同じく闇の国々の作画スクイテンの参加した映画のスケッチの数々を見せてもらい、
「ムチャチョ」の作者ルパージュの静かで真摯な創作への姿勢を垣間見、
イラスト入りサインまでもらい、
バスチャンヴィヴェスという作家の魅力を知り、
浦沢直樹を拝み、
大友克洋を二日連続で生で拝む。
ちばてつや先生まで拝む(会場ですれ違う)。

こんな豪華な二日間があるだろか?



実物を見て気になった作品をいくつか。


バスチャン・ヴィヴェス 『塩素の味』
Le Gout Du Chlore


Polina - la bande annonce



「服を着た姿を知らない男女が出会う話をやったら面白そう。
 でも出会いの場としては個人的には最悪だと思う。」(ヴィヴェス談@トークライブ)
というプールでの男女の話。水中と水上を輪郭線の有無によって表現し分ける(ヴィヴェス談)
などの細かいことをやりながらも、「デッサンではなくクロッキーっぽい」(大友克洋談)
軽めの印象のタッチで見ていて飽きない。女性の表情もすごく良い。
他作品として
「(踊る方の)バレーを題材にしてるが根性物じゃないのがおもしろい(大友克洋談)」
という『POLINA』や、日本の「バクマン」を読んで参考にした格闘漫画を現在執筆中らしい。
全てPCで作画してるそう。



アルチュール・ド・パンス『ゾンビレニアム』の原書
Zombillénium tome 1 ; Gretchen - Bande Annonce



雑誌ユーロマンガvol.7で知った作品の原書。
続きを見ることができたが、これは内容がおもしろいので邦訳の続きを期待しつつパラ見。
パンスの公式サイト
ゾンビレニアム公式サイト



Jean-Marie Omont・作、Golo Zhao・画『La Balade de Yaya(ヤヤの長い旅)』
La Balade de Yaya - Musique : Petite Valse de Domenico Curcio



この存在を知ったのが一番の収穫かもしれない。
読んだ方のサイトによると
1937年戦時下の上海を舞台にしたピアニストを目指す少女と浮浪児の少年のお話。
ストーリーも面白そうだし画のタッチも日本的で抵抗なく読める。
シナリオはフランス人、作画は中国人というのも興味を惹かれる。



■スクイテン、ペータース参加映画『L'affaire Desombres』サントラ
L'affaire Desombres (Brüsel) - Bruno Letort



会場でかかっていて結構好きだったので、小学館プロのブースで聴きだし詳細判明。
Bruno Letortという人が作曲。日本では未発売で仏アマゾンにはなく英アマゾンにはかろうじてあった
Bruno Letortのいろいろな音源サイト

■谷口ジロー原画展IIIパンフ『谷口ジロー 情景のマエストロ』


これが予想外の大収穫。
夏目房之介、藤本由香里、宮本大人、原正人、ブノワペータース、ユーロマンガ編集長の
谷口ジロー評が読める個人的には超超超豪華冊子。
宮本氏の「動物の心を擬人化という手法を取らずに描く」稀有な作家としての谷口ジロー評に
いたく感銘を受ける。





「マグニチュードゼロ」の平田弘史

2012-03-21 01:21:11 | 



国内外のアーティストによる東北大震災復興支援のためのイラスト集。フランスで出版された復興支援イラスト集『Magnitude9』の日本版。
約70人の海外アーティストに加え、日本からは、しりあがり寿、安齋肇、中島信也、森本晃司、三代目魚武濱田成夫他、実力派アーティストが参加。
(Amazonより)


パラパラと立ち読みしたが、正直いって本としては
あまり買いたいとは思えなかった。
(判型の割に作品のサイズが小さすぎるのが致命的。)

ただ。

日本版に新たに参加した平田弘史の絵だけは別格だった。
ボロボロの桶(棺桶)に、はみ出しながらも入れられてる死人を、
足を踏ん張り、渾身の力で背負って前を向いている髷姿の男の絵。
ただそれだけの絵。
なのにあの絵のパワーは何だ。
こんなにわかりやすくはっきりと
絵からパワーを感じるという経験ははじめてだ。


ずっと脳裏に焼き付いている。
本は買っていない。
でもずっと脳裏に焼き付いている。
あの絵だけほしい。
平田弘史を読んでみよう。


東京に展覧会はこないのか。


谷口ジロー 「猟犬探偵 セントメリーのリボン」

2011-12-20 23:21:51 | 


谷口ジロー先生の新刊。
この判型、このクォリティ、この値段。
お値段以上の贅沢な時間をいつも提供してくれる
間違いないマンガ家。
超能力も魔法も使えないロボにも乗らない、
強くも若くも恋に悩んでいるわけでも
特段のコンプレックスに悩んでるわけでもない人間を
描かせたら右にでるものはいないんじゃないだろうか、
と再確認したりするなど。

要は今回もテッパンですってこと。



作中に出てきたので盲導犬をyoutubeで検索したらこんなのがあって見たらもう。。



引退盲導犬、パピーウォーカーの元へ帰る



ひらひら 国芳一門浮世譚

2011-12-14 23:08:39 | 


国芳とその弟子たちを登場人物とした
江戸娯楽漫画。


 


杉浦日向子の大傑作「百日紅」に衝撃を受けて以来
浮世絵に興味を持ったクチなので
浮世絵漫画に対する期待値が高すぎたのかもしれない。
「ファンタジーとしての江戸」の理想イメージが
杉浦日向子の描く江戸になってしまっている。
それは何なのか。
ざっくり言ってしまうと
色恋やアイデンティティの問題に対してもっとカラッと対処している江戸。
描いてる人が違うのだから当たり前だが本作にその雰囲気はない。

作者はLGBT作品を主に手がけている方(と今知りました)
なので浮世絵師の褌やら胸筋やらがやけに強調されて
描かれてる事に納得。

正直、漫画としてはあまりハマれなかったけど
絵として楽しめる作品でした。
表紙は線といい色使いといいとても惹かれるものがありました。
この表紙でジャケ買いしたようなもの。
そしてそれは全然後悔なし。


というわけで今週末から遂に東京ではじまる国芳展が楽しみだ。



井上雄彦「pepita(ペピータ)」をミータヨンーダ

2011-12-13 23:54:03 | 



井上雄彦 meets ガウディ
というテーマでスペイン取材風景を収録したDVDと
それによって生まれた作品集。
この人漫画以外の活動が収録されてる動画は
気になってついつい見てしまう。

今作を見て改めて思ったけど
どこまでも絵で表現する事に長けている人なんだなこの人は。
インタビューや文章等で発せられる言葉は
妙にストイックすぎるというか、正直いって個人的には息苦しくなる事の方が多い。
が、その発せられた言葉に動機づけられて描かれた絵を見ると
とたんに開放感が生まれる。
「なんだそういうことか」と言葉じゃなく体が納得する感じがままある。

DVDは本編よりも日本の仕事場で黙々と絵を描いているところの映像の方が
よっぽどおもしろかった。
あと、井上雄彦とガウディを扱う本のくせに
装丁が味も素っ気もないのはいかがなものか。
(小口の断裁面といい、丸みを帯びた柔らかい印象がまるでない。ガウディなのに。)


伝説の「どりこの」一本の飲み物が日本人を熱狂させた

2011-11-16 00:43:50 | 



それは、かつてこの国を席捲し、誰もが知っていた飲み物である。
誰がどう作ったのか?なぜ昭和を代表する飲み物になったのか?
そして、なぜ消えたのか?
謎の飲み物から新しい昭和を描き出す、発掘ルポの傑作!!




ちょっと本屋に行かなくなっただけで
こんなものが入荷してたりする。
これだから本屋チェックはやめられない。