goo

オールイングリッシュ?

2013年05月26日 | 英語生活ノおト
英語生活ノおト 第4巻> 英語ご異見板> オールイングリッシュ?

今年の4月施行の新学習指導要領ですが、外国語、特に英語は「オールイングリッシュ」の授業が求められてているとか、ずいぶん先生方も戸惑いの中にあるようですが、実はどこにも「オールイングリッシュ」という言葉はなく、「授業は英語で行うことを基本とする」という、ややあいまいな表現で、必要があれば日本語を使っていいことになっています。

言わんとすることは従来の暗記中心の受動的な英語学習から「英語を使う」能動的な英語学習に移行していくのだから、教師もそれなりに英語を使ってちょうだいということかな。

管理人は基本的に「オールイングリッシュ」には「あまり賛成ではない」立場ですので、今回の指導要領は大変よろしいという気もするのですが、学参なんか見るとタイトルを変え、若干カテゴリーを分けなおしただけのような気もしないではありません。まあ、その方が今の先生には使いやすいし、当分はそんなもんじゃあないでしょうかね、何十年も親しんできた受動的学習が文科省の一声で変わるものではありません。徐々に進んでいけばいいじゃあないですか。

さて、半人造言語であるBasic Englishですが、英語の入門教育には最適でもあり、20世紀半ばにチャールズ・ケイ・オグデンの共同研究者でもあるアイ・エイ・リチャーズなどが中心となり、Basic EnglishをもとにGraded Direct Methodという英語教授法、そのための教材English Through Pictures(画像)を開発します。これは、例えば中国語を全く解さないアメリカ人が中国人に英語を教える、そのようなシチュエーションを想定して作ってあり、大変よくできています。come, get, give, go, keep, let, make, putなど基本語を動作や絵など、視覚的に教えるため、comeイコール「来る」、goイコール「行く」よりはそれぞれの語彙の本質をたたきこみますので、大変応用が利く。その点では全く素晴らしい教授法ではあります。まさに「オ―ルリングリッシュ」です。

では、なぜあまり賛成ではないかというと、Graded Direct Methodをはじめ、欧米発の英語教授方法はネイティブが教えることを前提としています。それをそのまま当てはめ、日本人が日本人に教えるのに、「オールイングリッシュ」に固執するとやや滑稽な感じが否めません。肌が黄色い先生が。日本語で説明した方がよっぽどわかりやすいことだってあるし、comeとgoだって日本語で説明できないこともない。時間の節約になることだってある。場合によっては「わかんなーい。日本語で説明して、時間の無駄」…で学習意欲だってそぎかねません。

GDM(Graded Direct Method)研究会と言う組織があります。そこでトレーニングを受けた講師が子供や大人向けの英語教室に派遣されたりしています。特に子供の英語教育に果している役割は一定以上のものであるといえましょう。この研究会の最大の悩みは、子供たちが折角「オールイングリッシュ」で身につけた英語の基礎が、学校のcomeイコール「来る」、goイコール「行く」的教育で、脆くも崩れ去ることだそうです。だって「相手(またはお互い)の立場になり、相手(お互い)に近づくのがcome」(というようなことを図解で説明)と「comeイコール「来る」」じゃあ、まったくと言っていいほど違う、一体どっちなのと迷ってしまいます。新学習指導要領の普及に伴い、今後少しはGDMの将来が開けていくのではないでしょうか、個人的には日英混合の臨機応変が好みですが。