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学びかたのちがうこどもたち

2013年09月23日 | よしなしごと
「こども10人に1人は軽度発達障がいか、健常児と軽度発達障がい児のボーダーにいる」そうです。

当記事は以前アップした「ちょっと変わった」子どもについて学ぼうや、「ちょっと変わった」こどもについて学ぼうの底本がいまや入手不可能ですので、独立した記事になるようまとめなおしたものです。軽度発達障がい理解の超入門とお考えください。タイトルは底本の一つのタイトルを敬意を表して用いています。

まず、「学習障がい」は狭義にはLD (Learning Disorder) のことを示しますが、それ以外の「注意欠陥/他動性障がい」や「自閉症」、「アスペルガー症候群」などを称して「軽度発達障がい」と称します。中枢神経の病気です。

健常児と軽度発達障がい児との区分は素人目には極めてあやふやですが、専門的なテストを受けると確実に数値として把握できるそうです。3歳でもある程度可能だそうですし、5歳児であれば確実に把握できるとのことです。

AD/HD(Attention-deficit / hyperactivity Disorder:注意欠陥/他動性障がい)

必要なものをすぐなくす、じっと座り続けることが苦手で、手足をそわそわ動かす、話の途中から急に割り込んだり、待つこと出来ない子どもっていませんか?本人の性格が悪い?親のしつけが悪い?そうかもしれませんが、時として本人もどうしようもないことがあります。これをAD/HD(Attention-deficit / hyperactivity Disorder:注意欠陥/他動性障がい)といいます。中枢神経の病気の一つ。本人のせいでも親のせいでもないんだから、そのところを理解してあげる必要があります。

中枢神経の病気にはほかにもいくつかあります。すこし勉強してみることは、もしかしたら「学びかたのちがうこどもたち」をちゃんと理解してあげることにつながるかも知れません。

LD(Learning Disabilities:学習障がい)

私達が見たり、聴いたりして得る情報を処理しその情報の意味をわかることを認知能力といいますが、この認知の能力の偏った発達のために、聞く、話す、読む、書く、計算する、といった学習の分野のどれかが極端に苦手なことを言います。

たとえばある子どもは視覚認知が弱い、つまり点や線の位置関係がわかりにくい、線の長さや傾きの区別がつきにくいなどから、絵を描くのが下手で文字の形、特に画数の多い漢字が覚えにくく、算数では図形領域が苦手のことが多いです。また人の表情を見分けたり、風景を覚えることも苦手なので、そう、「空気を読めない」で人とぶつかったり、大変です。

一方、聴覚認知の弱さを持つ子どもは、音の種類の区別がつきにくい、音の記憶がしにくいなどから、似ている言葉を聴き誤ったり、本人が一生懸命聞こうとしているのに、すぐ忘れてしまう、といったことがよくあります。こういった子どもは、大勢の中で会話を聞き取ることや、一斉授業の中で説明や指示を聞いても理解がおいつかず、大変苦労をしています。

自閉症
 
人間関係が苦手で、興味や関心に著しい偏りがあります。視覚的、具体的、規則的なことは得意ですが、想像力や推理することはすごく苦手。自閉症の子どもは、そうですね、順序だててやることを説明してあげれば、その通りできますが、急に状況や環境が変わったり、さきほど聞いたことと違うことを急に言われたりすると、パニックに陥って暴れたり、逆に自分の殻に閉じこもってしまったりします。同時に二つ以上のことをやるのは苦手。トランポリンは上手に飛べても、上肢と下肢の運動を同時に行う縄跳びは大の苦手。

ケースその1:高校1年生の彼女は軽い自閉症、「ナルト」が大好き。いつも大体一人でDSと格闘していますが、頼まれたことはちゃんとやるし、お昼の時はみんなと一緒。ただ、ほとんど喋りません。でもみんなと一緒にいることは嫌いじゃあないみたいです。他の人とちょっと距離を置いていますが、そのことに他人が干渉しない限り、その距離が彼女にとって心地良いようです。本人は親に学校(通信制だが毎日登校させる支援学校)は楽しいと報告しています。

ケースその2:小学生低学年の彼女、自分の殻に閉じこもるタイプで、文字通り座布団一枚のスペースが彼女の世界。いつ何時座布団が移動するか予測不能で、一体一のケアが必要ですが、親が参加させるキャンプや野外活動は、積極的参画は望めないものの、表情がやや緩むなど、雰囲気はキライではないようです。彼女なりの楽しみがあるのでしょう。

アスペルガー症候群

自閉症は通常知恵の遅れを多少ともないますが、ことばや知恵の発達がまったく遅れていない、時によっては優れている場合、これをアスペルガー症候群と呼びます。お勉強が大変よく出来たり、よく喋ったり、普通の子どもとあまり変わらないことが多いのですが、やはり自閉症にはちがいありませんので、想像したり推理したりすることは苦手。

一度に二つのことは出来ませんので、相手の気持ちを思いやりながら、自分の気持ちを表現するということは出来ませんし、悪意はなくても自分中心で一方的な態度や表現になってしまうのです。想像力が乏しいので場の雰囲気を正確に感じ取ったり、ルールや常識的なことを把握するのも苦手。仲間はずれやいじめの対象にされることもあります。

AD/HDとアスペルガー症候群の違い

見かけ上かなり似通っており、併発もあるようですが、基本的にAD/HDは自閉症ではなく、認知障がいを伴いません。物事を正しく認識しているものの、体や感情が先に動く、その極端なケース。なかなか健常児との境目が難しい。ある子どもは小学生の時AD/HDと診断されたものの、中学生になってかなり改善されました。診断が間違っていたのか、知性が行動を抑え込むほど成長したのかは不明。

つまり、AD/HDは行動障がい、アスペルガー症候群は認知障がいブラス行動障がいであると言えるでしょう。AD/HDは上記のようなケースもあるみたいですが、現在の医学ではアスペルガー症候群は長~い付き合いが必要なようです。

自閉症スペクトラム

最近の傾向ですが、専門家の間で、どうしても自閉症とアスペルガー症候群の境界の定め方が難しい、ということで自閉症スペクトラムという総称を用いる傾向にあるようです。そんなこと言えば健常児と自閉症児の明確なボーダーはあるのかい、という気もしますが。以下、wikiにあったおおよその概念図。



理解して欲しいこと

いままで勉強してきた注意欠陥/他動性障がい、学習障がい、自閉症、アスペルガー症候群は、例えば人と人の関係につまずくなど、どこか似通った症状もありますし、いくつかの症状を合併している場合もあります。

もちろん「ちょっと変わった」子どもたちが全部病気とは限りませんし、むしろ本人の性格、躾や教育によるものの方が実際多いでしょう。そして中枢神経に障がいがあるのか、そうでないのか素人ではまったく判断できません。素人が判断するのは大変危険。絶対に専門家に任せる必要があります。大事なことは、「自分の努力だけではどうしようもない」悩みを持っている子どもがいるかもしれない、そのことをわかってあげることだと思います。

なお、本文中「障害」に替わり「障がい」という表記を用いています。閣議決定により平成21年度に設けられた「障がい者制度改革推進会議」が昨年『「障害」の表記に関する検討結果について』という報告書をまとめましたが、「障害」、「障碍」、「障がい」、「チャレンジド」など意見が分かれ、まとめるに至っていないそうです。「障」、「碍」、「害」、どれを取ってみてもネガティブなイメージは免れません。「チャレンジド」でさえ、個々の障がい者のそれぞれチャレンジしていく姿勢を示すものであっても、社会全体の目標とはとらえがたいという意見が出る始末。欧米ではストレートにハンディキャップドとかディスエイブルドという言葉を使いますが、社会背景が違い、参考になりません。まったく新しい造語が必要かもしれません。

初版 2013年8月19日
第2版 2013年9月23日