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スピルバーグのこだわりに一票 - 宇宙戦争(2005) その2

2011年01月24日 | よしなしごと
宇宙戦争、数日前テレビでやっていたので見た方も多いかと。興行的には大成功したが、ほめる人、けなす人の落差が激しい作品。基本的に派手な戦闘機と宇宙人の空中戦を予想した人はがっかり。「宇宙」なんかどこにも出てこない。H. G. ウェルズの原作が「宇宙戦争」と訳されているという、単にその理由だが、スピルバーグ自身オリジナルのThe War of the Worldから最初のTheを取っただけで映画のタイトルにしている、そういうこだわりにも原因が。

中心人物の設定以外はかなり原作に忠実。アメリカが舞台だが原作の舞台イギリスに一番似通った風景のニュー・イングランドをわざわざ舞台に設定しています。何万年もかけて準備してきた宇宙人が微生物の対策を怠ったなんて考えられませんが、原作はそういう筋書き。スピルバーグはあくまで原作にこだわっている。

ある意味では彼、新しい映画を作るというよりはH. G. ウェルズに対するオマージュ作品を作ったという意識かもしれません。いままでに彼は娯楽作品からシリアスな作品まで、いろいろ作ってはいますが、オマージュは最初の経験。

オマージュ(場合によってはパロディ)は劇中にもいくつか見られます。まず、宇宙人のデザインだが、ローランド・エメリッヒの映画、「インディペンデンス・ディ」に出てくる宇宙人と極似。戦闘機械(トライポッド、つまり三脚、と映画では呼んでいる)の触手が部屋の中を探索する様子はジェームス・キャメロンのアビスに出てくる、触手のように造形された水とこれまたよく似ている。ちなみにこのアイデアはのちのターミネーター2のリキッド・メタルのアイデアへと導かれます。

原作でも戦闘機械の不気味さは圧倒的存在感。原作の挿絵の直線的な構造とはかなり異なったデザインですが、金属の冷たい輝きとアンバランスなほどの滑らかな動きが、その不気味さをうまく伝えていると思います。ダメおやじのトム・クルーズやダコタ・ファニングもいいが、やはり主人公はこのトライポッドだとつくづく思いました。