言語聴覚士の独り言

言語聴覚士の日記

最後のビール

2023-05-06 09:59:00 | 日記
私は訪問してリハビリを提供する仕事をしています。

難病により一人暮らしが困難となり、住宅型の老人ホームに入所されていた方への介入が

昨日で最後でした。

理由は病状が進行して、看取り対応の介護医療院へ転所されるからです。

一年半前まではお孫さんと走りながら遊んでいた方です。

難病は本当に残酷です。

私は最後に何かできないかと考えました。

常日頃、その方はリハビリ中や終わりに
「ビールが飲みたい」と言われていました。

その方は家族の往来が少なく、糖尿病もあり、且つ転倒の既往もあり飲む事ができていませんでした。

介護医療院へ入所されても飲むチャンスはゼロではないかも知れませんが、老人ホームで難しかった方だと考えると、ほぼ困難だと予想できます。

私は何とか最後にビールを飲んでいただけないか動いてみました。

・上司(私の)への許可依頼
→いいね。
・管理者(私の)への許可依頼
→施設内で転倒でもあった場合こちらの責任にならないように。
・ケアマネジャーに相談
→施設に許可をとってみます→少量ならok
・家族に許可依頼
→ありがとうございます

当日
施設管理者に直接再度許可依頼
→ok

ビールは当初は350mlを予定していましたが、転所前に転倒や体調不良を促してはいけないので125mlにしました。

本人様にはサプライズです。

訓練中に「あ〜ビールが飲みたい」

私「ありますよ。飲みますか?」

保冷バッグでキンキンに冷やしたビールを飲まれました。

「うまい」

大人が一杯のビールを飲むのにどれだけの許可が必要か呆れそうになりましたが、

この一言で報われます。

私は部屋を出る時にお別れを伝えることができません。

なぜなら正式に転所することを本人様に伝えていないからです。

怒ったり、不穏になると困るからだそうです。

私にはどうにもできませんが、あまりにも本人様の気持ちではなく、責任の所在に重きを置いた考えだと感じます。

もう少し自由度の高い支援が可能な環境になるように私も少しでも働きかけたいです。