ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

追憶

2018年11月04日 | なつかシネマ篇


ロバート・レッドフォード→ブラッド・ピッド→ライアン・ゴスリング。ハリウッドにおける正統派イケメン男優の系譜をたどると、なぜか金髪碧眼という共通点にたどりつく。この映画をみると、二枚目を演じていた初期のブラピがレッドフォードのコピーをしていたことがよくわかる。しゃべり方はもちろん、肘をはってやや猫背気味にワイングラスを傾ける仕種などがクリソツなのだ。当時世紀の美男子とさわがれていたレッドフォードと共演したくない女優などいるはずもなく、政界にもコネがあったといわれるバーブラ・ストライサンドだけに「相手役がレッドフォードじゃなきゃ映画に出ないわ」とワガママをいったかどうかはわからないが、逆オファーがあったとてしもおかしくない組み合わせだ。

バーブラ・ストライサンド演じるユダヤ娘ケイティが、ハブル(ロバート・レッドフォード)のつやつやに光ったぱつ金を再三さわるシーンが出てくるのだが、女性ホルモンを刺激しないではいられないもてオーラがレッドフォードから発せられており、それを見つめる鷲鼻女ケイティの眼差しが終始(役の上ではなく多分マジで)♡になっていることにお気づきになるだろう。そんなモテ男がけっして美人とはいえない、どちらかというとファニーフェイスのケイティと(一時的にせよ)なぜ結ばれたのか。しかも、学生時代の反ファシズム運動に始まり、赤狩り時代はハリウッド10に対する抗議運動、そしてハブルと離婚後今度は反原爆運動にのめりこむ筋金入りの左翼運動家である。

本作の脚本家アーサー・ローレンツが自らの学生運動を思い出しながら描いたとされるシナリオだが、数々の政治的発言で物議をかもしたバーブラ・ストライサンドの実人生と大いに重なるキャラクター設定にもなっているのだ。学生時代はスポーツ優等生、軍役を経たのち小説家として才能を認められ、ハリウッドでシナリオライターとして成功するハブルに対して、天然パーマのもじゃもじゃ頭、図書館で勉強する以外はいくつものバイトをかけもちする所帯じみたケイティのどこがそんなに魅力的だったのか。裕福な家庭のお坊ちゃまくんやお嬢様が集まるパーティでは、退廃的な空気や政治や社会をおちょくったジョークに我慢ならず、突如としてキレ出す反社女である。大人なハブルも社会は所詮出来レースなんだからそんなにムキになるな「妥協しろ」と説得するのだが、本人まったく聞く耳をもたないのだ。

はなっからウマが合うはずのないカップルを無理やりくっつけたシナリオにも当然無理が生じるわけで、ストライサンドの強烈すぎるキャラクターにひきずりまわされたあげく、監督シドニー・ポラックをもってしても映画らしい演出を何もできないままエンディングを迎えてしまった作品だ。とにかく出会いとラストの再会シーンをつなぐシークエンスがバラバラすぎる。まるでバーブラ自身のバイオグラフィーをなぞるかのような各エピソードのあくが強すぎて観客はすんなりとラブストーリーに酔えないのである。60年間!!!にわたりビルボードチャートトップの座についたのは、米国広しといえどもこのバーブラ・ストライサンドだけだそうで、あのマライヤ・鯨・キャリーやマドンナさえ達成できなかった前人未踏の偉業だというではないか。ビル・クリントンを大統領にかつぎあげた影の功労者も熱狂的民主党サポーターでもあったバーブラだったとか。そんなバーブラ御年74にしてトランプ政権抗議のためのアルバムを2018年12月にリリースするらしい。アメリカ保守層に対する嫌悪感は相当根深いようである。

追憶
監督シドニー・ポラック(1973年)
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