Jazzを聴こうぜBLOG版

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さり気なくバチッと決まっている瞬間!!

2004-11-23 23:35:10 | ジャズの話題
山下洋輔の「風雲ジャズ帖」という本を読み始めた。
75年に刊行されたのを新たに構成しなおしたものらしいんだけど、結構面白い。
まだ半分も読んでいないんだけど、印象に残る言葉がいくつもある。
面白かったのが「人間のする事に本当の無秩序はあり得ない」(だっけ?)っての。
山下洋輔って日本のフリージャズの大家といっていい人だと思うんだけど、一見無秩序なフリーフォームの演奏がなぜ破綻せずにひとつの演奏として成り立つか、その方法論というかコツというか、どういったコンセプトで演奏に臨んでいるかという事が色々と書かれていてスンゴク興味深い。

具体的には、「ドラムが特定のフレーズを叩いたら、それを合図として次の展開へ行く」というの。
ピアノ、サックス、ドラムスの編成でそれぞれがそれぞれの音を聴きつつ自由に演奏していて、ドラムの特定のフィルイン(本文中では「ダパトトン!」というフレーズだと書かれていた)を合図にテーマに戻リエンディングへつなげる。
もしピアノが反応できずにサックスソロになったら、それはそういう演奏として処理して演奏は続く。
3者がきちんとテーマに戻ってこれれば、演奏はそこでエンディングに落ち着く。
なるほどねぇ・・・・・。

こういった「合図」ってのは、ジャズの演奏に関わった事がある人なら誰でもある程度は経験してると思う。
歌の立場から合図というものの例を挙げてみると、例えば1コーラス目を「Rubato」に指定してピアノの伴奏のみでフリーなテンポで歌っておいて、2コーラス目の頭に「Vocal Picup」と指定しておいて、そこからカウント出しをしてインテンポになったりとか。
曲のエンディングである範囲の進行に「X-Time」と指定しておいて、その伴奏を延々繰り返してもらい自由なスキャットをかぶせる。
で、そろそろ終わろうと思ったらバンドに判るように片手を挙げるなりチラッとバンマスを振り返るなりして、「止め」の合図を出す。
その終わりの部分に「Pocorit」と指定しておきブレイク。ひとフレーズ歌ってジャラーンとエンディング、みたいなね。
以上のように、僕の場合はどんな決まり事を使うかは基本的に譜面で指定しておく事が多かったかな・・・・・。
山下洋輔も基本的にはある程度譜面に指定してあるようね(本文中にその当時の譜例が載ってる)。「Bs Tom」とか、具体的な指示があるのはまだしも、「ダパトトン」とか「ケーコタン」とかって、フレーズを擬音にして片仮名で書き込んであったりもする(笑)。

で、普通はこれらの合図にきちんと反応する事が大前提としてあるんだけども、フリーフォームの場合は基本的には常に各々の音に反応してカウンターメロディやリズムパターンの変化を自由に行なっていく事に醍醐味がある。
「合図」だけでなくあらゆる音に反応していかなきゃならないわけだ。
だから「合図」に反応できなくてもそれはそれ、「これはそういう演奏なんだ」って処理して先へ進めていく。期を見てまた別のタイミングで合図を出せば演奏としてはまったく不都合が無いという。
また、特定の曲を演り始める合図もある程度決まっていて、まったく別の曲の途中で気分によって他の曲へと移行していく事もある。
スゲェなそのコンセプトは・・・・・。

フリーフォームの演奏を除外してみても、ジャズって基本的に「反応の音楽」だよね。
ソロをとっているパートが突然3連で演り始めたら伴奏側も即座に反応して全体がそのリズムになったり、ひとつのフレーズを反復しながら下降していく時に、伴奏も同じ音形でユニゾン合わせてみたり。
こういった事が決まり事なしにさり気なくバチッと決まっているような場面が、スモールコンボの演奏ならどんなアルバムでも1曲中のそこかしこにある。
最初ね、ジャズを聴きはじめた時はそんな事まったく分からなくて「順番にアドリブでソロを演って、最後にもう一度テーマを演って終わるのね」程度に考えてた。
歌う事に関しても伴奏から外れないように歌うのが精一杯で、自分が入るところを逃さないように必死でカウントしてたっけ(笑)。他のパートが何を演ってるかおぼろげながら聴けるようになってきたのは、ライブやりはじめて3年目くらいだったかな。
音楽を、殊にジャズを聴く時に、鳴ってる音の全体を同時に聴くように努めていくと、楽しみが確実に広がる。「ああ、こいつらお互いの音をちゃんと聴きながら演ってるんだな」って、まぁそれは当たり前のことなんだけど、それを本当に実感できるとジャズ聴くのがスッゲェ楽しくなるよ。
鳴ってる音を全部聴き取る・・・・・この聴き方って慣れるまでは結構集中力を要するし、「さぁ聴くぞ!」って、ガッチリとオーディオに向かい合ってじゃないとできないよね。
聴く事に訓練が必要な音楽なんて難儀だけども、でもその「さり気なくバチッと決まっている瞬間」が分かるようになると、これはたまらんほどカッコイイよ。
これからジャズを聴こうと思っている方は試しに練習してみてください。

で、山下洋輔。
文中で自分達の演奏を「グガン!、グガン!、ダパトトン!、グガン!、ダパトトン!」とかって擬音で書いたりしてるんだけど、載っていた譜例を見たら本当に「Gugan」ってタイトルの曲なの。
ワハハハ、面白れぇ。
じゃぁ今日は山下洋輔聴いて寝るか。

本日の安眠盤、山下洋輔の「Canvas In Quiet」
ではでは。