ノルウェイの森を読んだ。ラストの主人公が電話ボックスの中でここはどこだかわからないと電話の向こうの緑に話すところで終わるのだが、謎めいた終わり方だ。自分なりに考えてみた。これは導入部に語られる井戸の話に通じているのだと思われる。草原に井戸がある。草に覆われて誰も気づかない。もし、誤って落ちてしまったら、誰にも気づかれず。失踪者として片付けられ、忘れられていく、そんな話だ。電話ボックスは井戸の底を連想させる。電話の向こうの緑は草原の緑、すなわち地上だ。主人公は直子という垂直に掘られた井戸の底のような思い出に囚われている。
この物語はある男の回想として語り始める。だから、形式としては最後に男の現在に戻らなくてはならない。けれどもそうではなく回想された時制まま終わる。井戸の底に落ちたままなのだ。草原の緑のなかに誰にも気付かれず物語も沈んでいるのだ。
この物語はある男の回想として語り始める。だから、形式としては最後に男の現在に戻らなくてはならない。けれどもそうではなく回想された時制まま終わる。井戸の底に落ちたままなのだ。草原の緑のなかに誰にも気付かれず物語も沈んでいるのだ。
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