ZEN and ZOO  玉野大介

動物園の中に禅の精神、禅の芸術は生き残っているか、そんなわけの分からないテーマを小脇にかかえ、美術を中心につづります。

村山槐多の詩 「童児群浴」

2009-12-21 23:18:56 | 芸術
童児群浴 (作 村山槐多)


黒き玻璃の山脈、赤き血の滴り
げせぬ鋭き天のときの声
これらみな紫の異常になげく
夏の午後の一とき

薄紫、赤、黄は透明を伝染し
天地にみなぎりたり
硫黄泉は地底をつたふ
美しき湯気の香はする
この時太陽は血潮の「能」を舞ひ
この時童子等は大川に喜戯す
紫の渦巻きに
うつれる空に喜戯せり

黄金の童子等は赤く笑へり
一瞬にして人食びとにとらはるるばかりの恐れ
おしかくし勇ましく大笑す
天と地とうつしし水に

げに金属の童子等は
怪しく焼けしその頬に
無窮の笑を帯ばしめつ水にとび入り
爬虫如く戯れつ

かくも眺めてわが胸は
薄青き珠玉の汗を宿し
この現象の惰さに全神経は
焦げはててじつとおののく

童子の腹赤く輝く
五、六、七、美しき河水のそばに
おう赤き童子の群よ
太陽の祖先の如き赤さもて

真赤に童子は喜戯せり
黒き玻璃の山脈にほの赤き幻燈うつる
血の滴、低き天つたひてゆけば
天のときの声ものうく消えぬ

宝玉の如、ものみなは輝けり
さんらんたる思ひかや我をとり
わが目をして大川の浅き底をも
深き天遠くに舞へる太陽をも慕はしむるは。

村山槐多

2009-12-18 20:45:18 | 芸術
現在、渋谷、松濤美術館で「村山槐多展」開催中。
僕は好きです。
大正時代の夭折した天才画家です。
白いふんどしに「melancholy」と書いて水泳の授業をうけていた若者です。
「強盗」という雑誌を知人たちとつくっていたようです。
彼の詩がまたすばらしい。

抽象と感情移入

2009-12-12 22:51:46 | 芸術
「抽象と感情移入」はヴォリンゲルの芸術史についての本です。
ここにゴシックについて少し書いてある。
ゴシック建築は抽象的、図形的な様式をもっている。
本来そういうものは人間の感情を受け付けない冷たいものだが、それにもかかわらず、ゴシックは人間の感情を揺さぶってくる。
動物とか人間の顔の表情とかそういう具体的なものが感情を表現するにはてきしているのだが、そんなものでは表現できない、図形でしか表現できない、そんな不穏な感情をそれは表現しているらしい。
ゴシックという言葉からかんじる、何か不気味なものが理解できるようなきがしてくる。
「図形でしか表せない俺の感情をみてくれ」そう言いながら、妙な図形を披露したいものだ。

いまのところゴスロリについてはよくわからない。

ヒッチコックと茶室

2009-12-02 20:48:38 | ヒッチコック
ヒッチコックの映画と千利休の茶室は似ている。
素材をできるだけ制限する。そして、そのなかで限りなく可能性を探る。
竹、一本でなにができるか。顔のアップ、一つでなにが表現できるか。
ヒッチコックのそれぞれの映画を、うまく変換すれば、ひとつひとつが茶室となる。
すぐれた茶室で一服の茶を飲めば、おのずと一つのシナリオが導き出せる。