東京新聞朝刊の「本音のコラム」欄で、いつも舌鋒鋭い文芸評論家の斎藤美奈子氏。またまた痛快に「森友問題」を斬っています。2編続けて紹介します。
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不始末の行方 (3月14日付)
ある日の藩邸。
「恐れながら、森友屋とのこの一件を通すのは無理筋かと」と家臣は言った。「この内容では勘定方が首を縦にふりませぬ」。「無理でもやれ」と家老は言った。「御台所の強いご意向だ」
家臣は関係者の意図を汲(く)んだ文書を作成した。特例であることを強調し他の有力大名や御台所の名前も出した。
ひるがえって勘定所。
「いかがいたしましょうかコレ」と文書を手にした家臣は聞いた。「ここまでの値引きは常識外かと」。「通すしかあるまい」と奉行は言った。いやしかし…。「御台所のご意向だぞ。おぬし拒否できるのか?」
こうして不正の匂いがする藩と森友屋との土地取引は成立した。
2年後、この一件が将軍家の耳に入る。この不始末をどうする。問い詰められた藩主は「誓って関与はありませぬ。私や妻の関与があれば切腹いたす」と約束した。
藩主の言葉を聞いた藩邸は騒然。青くなった奉行は口封じのために森友屋を投獄し、家臣に命じた。「あの文書を廃棄しろ」。でも…。「では問題の部分を削れ」。お言葉ですが、あれは決裁された文書ゆえ…。「よいから削れ。おぬし殿に腹を切らせたいのか」
茶化(ちゃか)しているんじゃありません。私は怒っているんです。詰め腹を切るべきは誰なのか。財務省の一部の職員? ご冗談でしょ。
夫人の立場 (3月21日付)
共同通信社が17日、18日に行った世論調査によると、首相夫人・安倍昭恵氏の「国会招致が必要だ」と思う人は68.3%で、「必要ない」の29.0%を大きく上回った。首相ないし官邸はなぜ夫人の招致をかくも強硬に拒むのだろうか。あえてゴシップ誌的に理由を推測すると…。
①首相愛妻家説。国会での証言はストレスが大きい。妻を愛する夫ならそりゃ拒みたかろう。結婚した際「君を全力で守る」と約束したのかも。
②首相恐妻家説。夫の説得を妻が拒否している可能性もある。妻の強い態度に夫が逆らえない。
③仮面夫婦説。夫婦関係が完全に冷えていた場合はどうか。「勝手にどうぞ」と突き放す? いやいや、愛情を失った妻を国会に出すのはかなり危ない。一種の報復として彼女は夫に不利な証言をしかねないからだ。
④夫人誠実説。もしも彼女が正常な判断力の持ち主なら、さすがに自らの軽率なふるまいを反省し、すべてを正直に話したいと希望するだろう。しかし周囲が妨害する。不都合な真実を暴露されては困るからだ。
⑤夫人天然説。彼女が自由奔放な性格だった場合は? それも怖い。予測不能な妻の発言。暴走でもされたら政権の命取りになりかねない。
しかし、妻は夫の道具じゃないのだ。昭恵氏とて独立した個人。ご自分のことはご自分で語らなくちゃ。
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(※段落のブロック分けはブログ管理人によります。)
フリージャーナリストの田中龍作氏の3月18日付ブログ記事:「【岡山発・森友事件】父親は遺体と会うのに2日待たせられた 警察は自殺者宅を長時間捜索」をぜひご覧ください。自死した近畿財務局担当職員の実家がある倉敷市を記者が自ら訪ね、父親から証言を得ています。職員が死後いかに異例の扱いを受けているかがわかります。