燈子の部屋

さまざまなことをシリアスかつコミカルかつエッセイ風に(?)綴る独り言的日記サイトです

外出

2001-03-03 00:00:00 | 母の病気のこと(完)
今日は午前中に母の見舞いに行った。
まずまずのお天気で風もなかったので、外出にはちょうどよかった。
土曜日は午前中だけ担当医が勤務していると言われていたので、
今日は十分に余裕があると思い、職員に頼んでみる。

 「外出許可をいただきたいんですが」
 「許可もらってますか?」
 「?…ですから許可をいただきに来たんですけど…」

こんな漫才みたいな会話になるのもここならではなのか?
職員はなぜか許可を出すのが嫌いらしい。
結果として毎回違う人に許可をお願いしているけれど、反応は皆同じ。
すんなり担当医に取り次いでくれる人はいない。
何かあったときの責任問題が許可を出しにくくしている。
でも、患者一人一人をきちんと把握していれば、
外出が適当かどうかわかるというもの。
それにどのみち、医師が判断して許可を出すのだから、
その前にイヤな顔をしなくてもよさそうなものだ。

ま、とにかく、許可がもらえたので病棟を出た。
3階なので、出るだけでも母にはけっこうしんどい。階段だから。
これが運動にもなるのだけれど。

外は気持ちいい。
暖かで、ほとんど風がない。
パプリカみたいに黄色いユニクロのフード付きパーカーを着た母は、
そのまま菜の花畑から出てきたみたいだ。
母の好きな黄色をいつの間にか私も好きになっている。
ちょっと派手かなぁと思いながら買ったのだが、母はとても気に入ってくれた。

今日はたっぷり時間があるので、ゆっくりと駅まであるくことにした。
私の早足でも20分はかかる。
久しぶりに遠出なので、休み休み歩く。
途中に河があり、浅瀬には鳩や鴨、家鴨などがいる。
50センチはありそうな鯉もいた。
昔はもっと汚い河だったような気がする。
そう、この町に私は2度にわたって住んだことがあったのだ。
良い思い出もあれば悪い思い出もある。
でも、今となってはすべてが何度も読み返した昔話のよう。

なんということもない話をしながら母と私は駅のそばまで来た。

最初はスターバックスに入ろうとしたのだが、
混んでいたので、もう少し先にあるドトールにした。
3階まであるので、せっかくだから3階席にする。
ちょっと母は不満そうだったけれど、
じきにお昼になって混んでくるのがわかっていたので、
「リハビリになるってば」と励まして(?)階段を昇ってもらった。
そして、たった1杯のブレンドコーヒーで1時間半もそこに居座ってしまった。

哀しかったのは、フロアにいた高校生のカップルとか大学生たちに、
母は、ストーカーの仲間ではないかと目を光らせていたこと。
それでも、以前のようにわざわざ廻りこんで
顔を確かめようとしなくなっただけでもよくなったのだ。
もう少ししたら、それもしなくなるかもしれない。

母のほうからはあまり話さず、もっぱら私のほうがこれからのことなどを話していた。
ときどき母はぼーっとすることもあった。
そんなときは、私もぼーっとして母が還ってくるのを待った。
きっと今夜はぐっすり眠れるに違いない。
今日は確かにとっても疲れるだろうけれど、それが心地よい疲れであってほしい。


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