燈子の部屋

さまざまなことをシリアスかつコミカルかつエッセイ風に(?)綴る独り言的日記サイトです

酢豚/道

2001-03-03 00:00:01 | 母の病気のこと(完)
12時半になって、私は病院の夕食が早いことを思い出して、
あまりお腹が空いていない気はしたけれど、お昼にすることにした。
近くてゴージャス(?)なところ…というわけで、なぜか銀座ア○ターに。
7、8年前に叔母と母と私の3人で食事に来たことがある。
その後、改装したと聞いていたので、変わり栄えを楽しみにして行った。

すると、本当にすっかり綺麗で高級感溢れる店構えになっていたので、
思わず普段着で着たことをちょっとだけ悔やんだ。
何しろそれだけでも立派に20人位の宴会ができそうな小部屋が
ウェイティング・ルームになっている上、そこが満席だったのだ。
家族連れや夫婦、友人同士というあらゆる組み合わせにもかかわらず、
みんなちょっとよそ行きのお召し物というのが共通なのに少しひいてしまった。

まぁ、でも、そんなことは席に着いてしまえばどうでもいいことで、
15分は待っただろうか、やっと案内された。
ランチにコースにワインといろいろメニューを出されたが、即ランチセットにする。
二人ともメインに特製酢豚料理を選び、デザートを付けた。
こんなことをするのは実に久しぶりなのだもの、
本当は北京ダックくらい頼むべきだったかもしれないが、
それは退院して新しい住まいに移ってからのほうがいい。

サラダバーで一回限りのサラダを取った。
思った通り、母は全種類制覇!
何か典型的なものを感じてしまった。
何かにつけて勿体無いと言い、出されたものは全部食べなさいと言う母は、
いくらでも用意されるものであっても、
全てに箸をつけないと気が済まない性質なのかもしれない。
でも、日頃、病院で貧しい食事に甘んじている母なので、
こんなときくらいは新鮮な野菜をたくさん食べてほしい。

そして、メインの酢豚が出てきた。
おぉ、これは一人分というにはちょっと多いような。
味は、うん、好みだった。酢加減がちょうどよい。
母は「メリハリの利いた味だわ。」ととても満足そう。
地元にもチェーン店があるのだが、調度といい、料理といい、
こちらの店のほうが数段上だった。
デザートには、母は「紫芋のムース」を、私は「黒胡麻のアイスクリーム」を食べた。
どちらもおいしかった。

2時を過ぎたので、そろそろ帰ることにした。

途中、薬局によって化粧品などを買った。
病院の売店は高いらしい。
それに、私が買ったほうが母のお小遣いがなくならなくて済む。
ぶらりぶらりと歩いて、もと来た道を引き返した。

橋の袂で老夫婦に道を聞かれた。
私はなぜかよく道を聞かれる(方向音痴なのになー)。
ボウリング場へ行きたいというのだが、
なるほど確かに向こうの工場の屋根越しに大きなピンが見えるのに、
ここからどう行ったらよいのか、わからないのだ。
母と私は、

「とりあえず(?)向こうの橋を渡っていけば真っ直ぐ行けるんじゃないですかねー」

などと行って、本当にいい加減な道案内だというのに、
その老夫婦にはお礼を言われてむず痒い気分。

そうして歩いて行くうちに、やっぱり遠回りな道を教えていたことを知る。
私たちと一緒に来たほうが近かったのだ。
河は蛇行しているので、さっきまでとても遠くに見えたボウリング場が、
今度はすぐそこに見えてきたのだ。
あぁあと思ったがもう後の祭り。
ま、まるきり違う道を教えたわけじゃないんだから、いいよね、
などとこれまた勝手な言い訳をして、母と私は病院へ戻ったのだった。

結局、今日は、二人してほっかりしてしまい、
大した話もせずに、食べるだけ食べて、歩くだけ歩いて、
それで半日過ごしてしまったような気がする。

ま、いいか。

この前電話したお陰でその晩はぐっすり眠れたという母のこと、
今度は3日くらい安眠できるかもしれない。
それだけでも来た甲斐がある。


(次を読む)


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