先月のある日、夫と夕飯を食べていると、義姉から電話がかかってきた。
検診で義父の肝臓に影が写ったという。
そういう話なら、夫が直接聞いたほうがいい。
が、電話を代わるタイミングがなかなか見つからない。
聞けば聞くほど余計な相槌を打つはめになって、言いづらくなるばかりだ。
やっと言い出せた時には、話のほとんどを聞いた後だった。
そして、深刻な話をしていたにも関わらず、互いに吹きだしてしまった。
話の切れ目がなくて当然、義姉は、夫がまだ帰っていないと思い込んでいたのだ。
それぞれ旦那に電話を代わり、義兄と夫はようやく話をすることができた。
昨年一月、義父は、直腸と大腸のがんの手術を受けた。
大好きなタバコをやめたのが最大の変化に思えるほど、義父は元気だ。
食事量は減ったけれど、好きな物を食べ、好きなお酒を飲んでいる。
義母と旅行も楽しんでいるし、人工肛門にしたことを除いては、
以前とほとんど変わらぬ生活を送っているのだ。
それなのに転移だなんて、とても信じられない。
しかし、もっと驚いたのは、主治医についての話だった。
義父の年齢になると、がんの進行は遅くなるらしい。
――副作用のある抗がん剤を投与せず、放置するという選択肢もある
主治医の話は、最初はこのような内容だったらしい。
付き添っていた義兄は、それを聞いて安心した。
ところが、十日ほど経って行くと、今度はなんと、
――すぐに抗がん剤投与を始める必要がある。余命は六ヶ月(!)
という内容の所見に変わっていたのだ。
義父は、投与を受けることを決め、その場で署名してしまったという。
先の所見で安心していた義兄は、この日は付き添っておらず、
もしも同席していれば、必ず保留にしたに違いなかった。
たった十日で「放置してよし」が「すぐさま投与開始」になるなんて、
裏に何か製薬会社の陰謀でもあるのか?と疑いたくなる。
もちろん義兄は、別の医師にも診てもらうべきだ、と義父に勧めた。
が、聞き入れてもらえないという。
それなら、と夫が先日の食事会で勧めたけれど、結果はやはり同じだった。
セカンド・オピニオンを聞く妨げになっているのは、義父の主治医に対する遠慮だ。
よその病院、例えば国立がんセンターで診てもらう場合、原則として紹介状が要る。
当該サイトのQ&Aには、病状について書かれた紹介状を用意できないと、
受診を断る場合のあることが明記されている。
紹介状がないと、予約の段階でためらってしまいそうだ。
お世話になっている医師に紹介状を頼むのは、正直言って気が重い。
義父のそういう気持ちはわかる。
わかるけれども、そういう遠慮はまるっきり無用とも思う。
医師も一人の人間であって、全知全能の神ではない。
どんな名医でも間違える可能性はあるだろう。
それなのに、自分の生命がかかっている決断を下す時に、
たった一人の意見しか聞かないなんて、そんなことはばかげている。
しかし、周りがいくら勧めても、義父はうるさがるだけなのだ。
義父のように、昔気質というか、義理堅いというか、
要らぬ遠慮をする人は多いのではないかと思う。
でも、そういう人に「考え方を変えろ」とは言えないし、
また、言われたほうも簡単に変えられるものではないだろう。
紹介状や治療記録などがなくても必ず受診できるというなら、
おそらく義父も気兼ねなく足を運ぶだろうと思えるのだけど。
それにしても……
余命半年は絶対何かの間違いだと思う。
義父の飲みっぷりを見れば、そうとしか思えない。
(次を読む)
検診で義父の肝臓に影が写ったという。
そういう話なら、夫が直接聞いたほうがいい。
が、電話を代わるタイミングがなかなか見つからない。
聞けば聞くほど余計な相槌を打つはめになって、言いづらくなるばかりだ。
やっと言い出せた時には、話のほとんどを聞いた後だった。
そして、深刻な話をしていたにも関わらず、互いに吹きだしてしまった。
話の切れ目がなくて当然、義姉は、夫がまだ帰っていないと思い込んでいたのだ。
それぞれ旦那に電話を代わり、義兄と夫はようやく話をすることができた。
昨年一月、義父は、直腸と大腸のがんの手術を受けた。
大好きなタバコをやめたのが最大の変化に思えるほど、義父は元気だ。
食事量は減ったけれど、好きな物を食べ、好きなお酒を飲んでいる。
義母と旅行も楽しんでいるし、人工肛門にしたことを除いては、
以前とほとんど変わらぬ生活を送っているのだ。
それなのに転移だなんて、とても信じられない。
しかし、もっと驚いたのは、主治医についての話だった。
義父の年齢になると、がんの進行は遅くなるらしい。
――副作用のある抗がん剤を投与せず、放置するという選択肢もある
主治医の話は、最初はこのような内容だったらしい。
付き添っていた義兄は、それを聞いて安心した。
ところが、十日ほど経って行くと、今度はなんと、
――すぐに抗がん剤投与を始める必要がある。余命は六ヶ月(!)
という内容の所見に変わっていたのだ。
義父は、投与を受けることを決め、その場で署名してしまったという。
先の所見で安心していた義兄は、この日は付き添っておらず、
もしも同席していれば、必ず保留にしたに違いなかった。
たった十日で「放置してよし」が「すぐさま投与開始」になるなんて、
裏に何か製薬会社の陰謀でもあるのか?と疑いたくなる。
もちろん義兄は、別の医師にも診てもらうべきだ、と義父に勧めた。
が、聞き入れてもらえないという。
それなら、と夫が先日の食事会で勧めたけれど、結果はやはり同じだった。
セカンド・オピニオンを聞く妨げになっているのは、義父の主治医に対する遠慮だ。
よその病院、例えば国立がんセンターで診てもらう場合、原則として紹介状が要る。
当該サイトのQ&Aには、病状について書かれた紹介状を用意できないと、
受診を断る場合のあることが明記されている。
紹介状がないと、予約の段階でためらってしまいそうだ。
お世話になっている医師に紹介状を頼むのは、正直言って気が重い。
義父のそういう気持ちはわかる。
わかるけれども、そういう遠慮はまるっきり無用とも思う。
医師も一人の人間であって、全知全能の神ではない。
どんな名医でも間違える可能性はあるだろう。
それなのに、自分の生命がかかっている決断を下す時に、
たった一人の意見しか聞かないなんて、そんなことはばかげている。
しかし、周りがいくら勧めても、義父はうるさがるだけなのだ。
義父のように、昔気質というか、義理堅いというか、
要らぬ遠慮をする人は多いのではないかと思う。
でも、そういう人に「考え方を変えろ」とは言えないし、
また、言われたほうも簡単に変えられるものではないだろう。
紹介状や治療記録などがなくても必ず受診できるというなら、
おそらく義父も気兼ねなく足を運ぶだろうと思えるのだけど。
それにしても……
余命半年は絶対何かの間違いだと思う。
義父の飲みっぷりを見れば、そうとしか思えない。
(次を読む)
名医と噂の人へセカンド・オピニオンを薦めるのですが
これまでずっと別件で診てもらってきて、また発見して
くれた主治医を信頼して(義理立てして)頑なに拒否
するのです。
父の場合は、投薬か手術かの治療方針についてでした。
家族の決断は、父の気持ちを尊重することでした。
なので、セカンドオピニオンはできませんでしたが、
家族としては、出来る限りの事をしました。
例えば、当時投薬されていた薬より、効果のある薬が
ないか調べるとか(父は手術を、家族は投薬を希望)
執刀する先生の同手術の経験、等々・・・
父の場合は、結果OKでした。
燈子さんの義父さんも良い結果となることを祈念します。
患者からすると「他の病院で見てもらうことにより、主治医との関係が悪くならないか?」とか心配になりますし。
患者は弱い立場ですよね。
>例えば国立がんセンターで診てもらう場合、原則として紹介状が要る。
アホかと!
患者の弱い立場を考えていないのでしょうね。
そうでないと患者が多くなりすぎるというのが理由なのでしょうけど…
義父さんがよくなりますように。
>家族の決断は、父の気持ちを尊重することでした。
意見が違う場合、結局、そうするしかないんですよね。
とほさんのお父様は、それがよい結果となってよかったですね^^
この日記を書いたちょうど翌日に投薬が始まりました。
義母の話では、投薬は週1回、5時間かけて点滴するのだとか。
(内服という選択肢もあったそうですが……)
長時間大変なことだと思いましたが、その間、横にならず、
椅子に腰掛けて受けると聞いてさらにびっくりしました。
副作用のほうは、その晩に顔が赤くほてったぐらいだそうで、
今のところは軽微なもののようです。
>燈子さんの義父さんも良い結果となることを祈念します。
ありがとうございます。
やっさん
>セカンドオピニオンという単語はありますが、
>実行するのは案外難しいですよね。
そうなんですよね。
義父がセカンドオピニオンを聞かない理由には、
「病院が遠くて疲れる」「面倒くさい」というのも……。
確かにそれは無理もないなあと思うんですが(苦笑)
あの宣告を、家族の誰も、たぶん義父自身も、
本気で受け取っていないような気が私はしています。
精神衛生上はそのほうがよいかもしれませんが、
そのために後で悔やむことのないようにとも思ったりします。
>アホかと!
まったくです。
過去の治療歴がわかるほうがいいのは確かでしょうけれど、
それが純粋に患者のためかというと、そうでもないだろう、と。
何かあった時にどちらの病院での治療の結果なのかを明らかにするとか、
「患者が多くなりすぎる」のを防ぐとかのほうが、
理由として上位に来るような気がしてなりません。
ただ、それも結局は「患者のため」に繋がる……のかなあ?
>義父さんがよくなりますように。
ありがとうございます。