鯖の塩焼き

　済州島初日の夕食は、フロントで割引クーポンをもらったこともあって、
　まだ入ったことのなかった、ホテル内の日本食レストラン「日の出」にした。
　スシにサシミにテリヤキにとなんでもあり。
　その上、午後は閉まっている韓国料理店の代わりまで務めている。
　ここはもちろん韓国料理をと、鯖の塩焼きと海鮮鍋の定食を二人前頼んだら、
　別々にしては？とウェイターさんに勧められたので、私は焼肉定食に替えた。

　付きだしの小皿料理は４品と少ないけれど、普通のお店よりおいしかった。
　海鮮鍋はまあまあ、黒豚焼肉は味付けがどうしても甘すぎた。
　韓国で焼肉を食べるなら、塩胡椒でいただくほうが合うなあ。
　それにしても、鯖の塩焼きがなかなか来ない。
　鍋を食べ終えた夫が尋ねると、海鮮鍋単品の注文になっていたらしい。
　どれぐらいかかるか聞くと、ウェイトレスさんの答えはなんと！

　「五十分ぐらいかかります」

　焼き魚に五十分て！（まさか市場へ？）

　驚き呆れて断ると、ほどなくウェイトレスさんが戻ってきた。

　「すみません、五分でできます」

　だよね！（笑）

　あー、びっくりしたわ、もう～。
　言い間違いではないかと気づく常識はどこへ行ったのやら。
　日本語が通じる安心感か、相手が母国語でない言語を話していることを忘れ、
　つい文字通りに受け止めてしまうのかもしれないなあ。

　しばらくして、鯖の塩焼きが登場♪（さすがに五分では無理）
　皮はパリッとこんがり焼けて、身は柔らかく、脂はほどよく落ちて、
　その脂には変な臭みやくどさなどまるでない。
　こんなにおいしい鯖の塩焼きを食べたのは、実に久しぶりなのであった。


（次を読む）