Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

沿岸部のデモと内陸部の暴動

2005-04-16 15:14:09 | 国際
中国の反日デモは学生が主体と伝えられているが、このところ中国各地(四川省漢源、重慶、折江省東陽など)で頻発している大規模な民衆暴動と関連してはいないだろうか?

反日デモに対する中国政府の対応は、デモを擁護するつもりなのか、断固規制するつもりのか、あまり判然としてしない。このような不透明さは、頻発する民衆暴動をおもんぱかって、デモに対し政府として厳しい規制を掛けることができなくなっていることを示しているのではあるまいか。

一部でも報道されているように、反日デモに圧力を加えると強い反発が起り、民衆の矛先が政府そのものに向ってくる事態が予想される。中国政府はこのことを恐れているのではないか。改革開放以来薦めてきたさまざまな施策が、貧富の格差、官僚制度の腐敗、土地政策や農業政策の失敗などを生み、このところとみに高まっている民衆の不満が、そろそろ限界点に達しつつあることを物語っているのではなかろうか。

このことに触れた「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」の記事があるので紹介しておきたい。「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」はメールマガジンなのでリンクさせるわけにはいかないから、ここにコピーを掲げておくことにするが、必要な方はこのメールマガジン(無料)に登録してお読みいただきたい。


「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
通巻第1092号 平成17年(2005年)4月14日(木) 

昨年10月、重慶の暴動は、市内の萬州区で起きて、5万人が暴れた。主体は、三峡ダムで立ち退かされた農民達の、スラムに流れ込んだ生活苦の人達だった。

昨年10月下旬、四川省漢源県でおきた15万人の大暴動は、漢源ダムで立ち退かされた農民が立ち上がった、生きるか死ぬかの必死の抵抗だった。この暴動は数十人が死んだといわれるが、爾後、現場は戒厳令が敷かれ軍が投入されているため、事情がまったくわからない。まるで劉邦が決起した黄巾党の乱のごとし。

折江省東陽市は、北に歌山鎮、南に画水鎮、別名「歌山画水」といわれた、風光明媚、水墨画にも描ききれない美しい場所だった。人々は自然を愛し、環境に親しんだ。


折江省東陽市を示す。この図には上海や杭州なども含まれる

この環境を破壊したのは、4年前に新設された化学工場の廃液と煙突である。自然環境を享受してきた村人に異常な病気が蔓延し始めた。東陽市郊外に急造された「竹渓工業団地」から、汚染された廃液が流され続けた。なかでも悪質なのは、染料工場、化学肥料。悪名高い企業は「東農化工有限公司」という。農薬製造の大手だが、利潤をあげて税収に寄与するので、地方政府は公害対策をなおざりにした。

この工場の周辺に小学校、中学校が建ち並び、もし事故が起これば、数千人、数万人の生命に危機が及ぶと専門誌が指摘した(2004年10月16日付『中国化工報』)。

付近の草木が枯れ、河が異臭を放ち、農薬の廃液が農地を汚し、毒性の空気を吸い込んだ妊婦が奇形児を産んだ。環境破壊、公害対策を訴えて、最初は老人たちが路上に座り込み、地方政府に抗議を開始した。

3月23日から、村人たちの自警団が監視チームを組織してトラックの搬入を見張った。道路を竹網で封鎖し、警察に逆らい、遂に警官隊3千人人が導入された。抗議の村人の女2名を公用車が轢き殺し、数百名が負傷、うち5名が危篤状態という(「大紀元」、2005年4月12日付)。

騒ぎはここから争乱状況へと陥った。事情を知った村人5万人が駆けつけたのだ。2005年4月10日、北京や広州では反日デモが暴走をした日である。激怒した村人らは、政府ビルに投石を開始し、公用車30数両を横転させ、警官とみるや殴りかかった。

大規模な衝突はこうして公害、環境汚染が元凶となった。同様な暴動は、河南省浚北県、江蘇省盆城県、四川省遂寧市、重慶市合川県、広東省紹関などで起きており、ガンの異常発生などが報告されている。

また、4月11日には北京で、退役軍人ら1千人名が「待遇改善」を要求して西門付近でデモ行進をした模様。これも「反日デモ」の翌日である。

本当に他人事ながら心配である。中国の若者よ、反日運動なんかやっている場合か。

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