みのもり雑記

旅行関連が多くなるかと思いますが、ふと書きたくなったことを気の向くままに、という感じで。

『この世界の片隅に』感想

2017-11-12 12:04:37 | アニメ
映画『この世界の片隅に』が、ちょうど昨年の11月12日に上映スタートしました。
私が見たのは翌13日ではありましたが、ついに1年経ったのかと思うと実に感慨深いですね。

ということで、「何かしたい」感はあるけれどイラストを描けるわけでもない私は
感想を書くことで満足したいと思います。
なお、ネタバレ満載なのでご注意ください。

ただ、実はmixi日記の方では昨年12月31日に感想日記をあげているんですよね。
これはこれで、当時の生の感覚ですので有効活用(転載)しようかと思います。
下記日記以降に追加で2回映画館で見ていますので、末尾にその辺のことは書こうと思います。

~~~mixi日記、転載開始~~~
映画『この世界の片隅に』の感想です。
この映画は、本当に多くの人に見て欲しい名作、傑作ですね。

タイトルにもありますが、ネタバレをふんだんに含んでいますので、観ていない方は鑑賞予定の有無にかかわらず以降の内容は読まないようお願いします。

とか警告をしつつ、最初は当たり障りのないことからはじめて、事故発生率の低減に努めましょう。

12月31日現在、この映画を3回観ました。
観たのはすべて、渋谷にあるユーロスペースです。

この映画館、いわゆるミニシアターですが…場所がだいぶ人にお勧めしづらいですね。
ホテル街に隣接しているような立地で、道路も汚れています。
困りものです。

とはいえ定期でいける一番近い映画館。
そのうえ、この映画館では席の予約システムがないため当日早く行けば席を確保できるというメリットがあります。
さらに言うと、オンライン予約できないために新宿では壊滅状態になっている座席の確保が、わりと余裕です。
むしろ、初回ならかなり空席があります。

私はいつも、スクリーンに向かって左側のブロック、前から6割程度の通路側に座ってみていました。
(厳密に言えば、3回目は通路から2席目ですが)



さて、ここからは本当にネタバレです。
感じたことを羅列していきます。

最初に「8年12月」(だったかな?)という表示とともに始まります。
1秒だけ要して、「ああ、昭和8年か」ということで脳内で西暦変換。1933年ですね。まだ二・二六事件も起こっていない時代です。とは言え世界恐慌はすでに起きているので不景気真っ最中でしょうけど。

と思いきや、案外と町に活気があります。
教科書だと東北の農村で大根をかじっている子供の写真が掲載されていましたが、さすがに全国的に壊滅していたわけではないんですね。

さて、主人公のすずさん(このときは小学生)が広島に着きました。
そこで荷物を背負うシーン、その丁寧な描き方を観て、「ああ、これは良い映画だ」と悟りました。

迷子状態になったすずさんが映り、そこからオープニングが流れます。
この歌、カバーだということを2回目の後で初めて知りました。
正直、2回目以降はこのシーンですでにこみ上げてきます。

Twitterで「ただ"泣ける映画"を作るだけならこの歌を最後に流せば良かったけど、それをしなかった」という旨のつぶやきを見かけましたが、本当にその通りですね。
インターバルをあけて見たのにこの威力、そしてこれをオープニングに持ってくる監督の采配!

続いてばけもん。
これは結局なんなんでしょうね?鬼イチャンでいいんでしょうか?
最後に出てきた個体と同一個体なのかも気になりますが、そもそも現実の生物と同じように時間の連続性を適用して良いものかどうかも微妙です。

余談ですが周作さんとの出会い。
正直1回目は、最後の方でばけもんが再登場するときまで、周作さんがどこですずと会ったのかに気がつきませんでした。


江波と草津を干潟経由で歩いて往復できるというのは、今の広島湾からは想像もできないですね。
そしてカブトガニまで。(2回目を観た後、Twitterで存在を知り3回目でようやく気がつく)

「子供でいるんも悪うはない」ってのは、だいぶ子供らしからぬ発言って気はしますが、そんなもんなんですかね。


小学校の時間割、時代を感じさせますね。

"波の兎"の絵を受け取って「嫌いになれん」と言って水原くんが帰って行くところ、唐突に原作チックになるのが印象的で良いですね。


「珍奇な女」あたりのやりとり、良いですね。
ところで周作さん、ここで気づいたりはしなかったんでしょうか?
ほくろが見えなかった?


さて、呉へ。
1回目の後に知りましたが、「海側の鎧戸をお閉め願います」というのは、防諜のためだったんですね。
線路脇にも同様に遮蔽板が立ててあり、時代を感じさせます。
フライングしますと、戦後のシーンでその遮蔽板がすべて取っ払われているのが対比として大変よろしい。


木炭バスが上まで登ってこれないというシーン、当時の日本の工業力を思うと涙が出ますね。
戦後シーンでのろいバスを米軍のジープが抜かしていくのも同様です。


祝言で、念仏を唱えるんですね。経験が無いので違和感がありましたが、まあそういうものっぽいですね。

祝言の帰り際、径子さんを「誰じゃったか」というシーンは、「うんうん、あるある!」という感想でしたとさ。


結婚したら、次の日からもう労働力としてみなされていたのだなあ、というのがわかる水くみ・飯炊きでした。

少ししてからの径子さんの「広島に帰ったら」発言、すずさんの誤解から里帰りということになりましたが…北條さんご一同何も言わなかったけど、ほんとうはどうなる予定だったんですかね?


お砂糖は……うん、もう少し重心を下げてだね?
(友鶴事件)


お母さんの「大事(おおごと)じゃ思っとった時代が懐かしい」っていうのは…本当に重みのある台詞でしたね。
そしてそれを軽く流しちゃうすずさんすごい!


初空襲。
トランペットの「来るぞ!」感が!
絵筆で対空砲火の炸裂を表現するのは素晴らしいですね。
すずさんの絵描き属性を生かしつつ、煙が薄らいでいくところを表現しなくて良いんですから!(こら)
兎もそうですが、原作絵の引用(なのかな)を印象的、効果的に使いますね。

対空砲がさっぱり当たらないのも、情け容赦なくていいですね(笑)

そして三式弾と、米軍のロケット弾!
これだけでご飯をいただけます。

砲弾の破片というのは、ほとんど意識していなかったのですが、確かに当然ですよね。
しかしお父さん、軍艦マーチに乗せて歌ってましたが、本当に死ぬようにしか見えない。

晴美ちゃん、「敵は何馬力?」とか聞いちゃいけないことを聞いてはいけません!
ところであの燃えていた空母、なんだろ? 艦橋がないタイプでしたが。


しかし、この映画、暗いはずのシーンでも笑いを入れてきますよね。
というか全体的にギャグが冴え渡っていて、中盤までは笑うシーンがとても多いですし。


前後しますが、憲兵騒ぎも良かったです。
1回目は気がつきませんでしたが、確かに笑いをこらえてますね。


リンさんのところ、というかリンさんはかなりカットされたみたいですね。
30分拡張の完全版が楽しみです。
とりあえず、「こんなとこへは、再々来るもんじゃないよ」が好き。


夫婦ってそういうものですか?
当時の考え方がわからん。


空襲警報ラッシュのところでは、もうなんというか、「もう勘弁してあげて!!!」という気持ちになりますね。
淡々とタイムスケジュールを出させることで、かえって日常的に発生していたイベントであることが強調されます。


広の空襲では、山越に燃えている描写だけ出すあたりが余計に被害を想像させますし、また「すずさんの視点」としての洗濯物という日常を映しているのが良いです。

お父さんのご飯の支度だけしてある食卓が、実に良いです。


さて、いよいよ運命の時です。
なぜ空襲後も戻らずに南下を続けるのか!!

爆撃での振動が本当に怖いですね。
入り口で様子見をしていた人の警告もとても怖いです。

個人的に気に入っているのが、爆弾投下のシーンで、着弾地点の衝撃波が描かれていること。
「総火演で見た!」といった気分でした。

空襲が終わってみてすぐ目の前の家がやられているのも、少し外れていれば防空壕直撃でしたし、家の人の立ちすくんだ様子がまた。

問題の現場、防空壕からさらに南下しているんですよね。
灰ヶ峰は北側なんですが。
そして問題の場所、歴史の見える丘あたりです。

S茂とわいわい写真撮っていたあの場所で、70年以上前に晴美ちゃんが死んだんですね…。
そしてそうしたことはあの当時、当たり前の光景だったんですね。
あれだけの怪我を負ったすずさんが助かったのは、運が "よかった" のでしょう。

すずさんが目を覚ましたときに径子さんが横にいましたが、いったいどんな気持ちですずさんの看病をしていたことでしょう。
(でもすずさん的にも、なじってくれた方が楽なのかも?)


焼夷弾の時は、照明弾に対するリアクションが良かったですね。
市街地に焼夷弾が降り注ぐところも、象徴的ではなくただの事実として扱っているところがいいです。
このとき、まだすずさんは感情が抜けたような状態ですから。

ラジオで広島放送局が「呉の皆さん、頑張ってください」って言うんですが、そのときスクリーンでは
猛火に包まれる呉市街地が映されていて、ほんとうにたまりませんでした。
「何が頑張ってくださいだ!!畜生!!」と、頭にきていました。

1回目では気がつきませんでしたが、小林さんはこのときから合流していたんですね。


遅れましたが、大和。
すずさんが見ていないということで当然ながら坊の岬沖海戦は描写されないわけですが、米軍機に撮影される補給中の大和のカットはいいですね。
晴美ちゃんの「戦艦はいるけど空母はいない」発言など周囲から少しずつ戦局の変化がわかるのもいいですが、大和は特別扱いですね。
そして何の台詞もない表現がまた良い!


すみちゃんが来て、径子さんがお茶を出すときに2人して神妙にしていましたが、あれはなんなんでしょうね?
Twitterでは「呉弁ではなく広島弁ではしゃいでいたから」というのを目にしましたが、
私は最初見たとき、たんに晴美ちゃんのことを踏まえてかと思いました。

すみちゃん、6日のお祭りに誘うところで「すずさん逃げて!ちょー逃げて!」状態でした。
たぶん観客の中で同じことを思った人も多いでしょう。
ゆがんでてもなんでも、その死亡フラグは拾ってはいけません。


鷺のとき
あの猫、なんなんでしょうか。
最初の頃の空襲でも「どこの猫!?」ってのがありましたし、エンディングにあった家族の集合絵でも猫が映ってました。
どこまで同一の猫なんでしょうか。

すずさんが「聞こえん」っていったときには、ヒヤリとしました。

ていうか天城が!日向ないし伊勢が!大淀が!



あの日。
普段なら「○月×日」と出るところを「その9日後」となっているのがうまいですね。
確かに、たんに「8月6日」と出してしまってはつまらない。

でも言われてみれば、「今日は朝から暑い」とか、十分臭わせてくれているんですよね。
これはTwitterで見かけて初めて気がついたんですが、その瞬間まで、蝉がよく鳴いているんですよね。



その瞬間。
呉でもあんなに光るんですね。そりゃ人の痕くらい残ります。
あんなに風が吹くんですね。そりゃ倒壊します。

焼夷弾で破損していた屋根から瓦が落ちるあたり、設定が上手に使われていますね。

ラジオの「広島放送局?広島放送局?こちらは岡山放送局です。広島放送局?」っていうのが心にきました。
そのとき映っていた雲の下がどういう状態かを多少なりとも知っているから余計に。。。

呉の人々が、何も情報が無い中で不安げにキノコ雲を見上げている様子がリアルを感じさせます。

りんぽかん(隣保館?)での行き倒れ、よくぞ短時間でそこまでたどり着いたものです。
5月に実際に広島から呉まで電車で行きましたが、30分くらいはかかります。
"顔も服もベロベロ" な状態でよくもまあ…。

呉から広島へ向かう救援の車列とは逆にボロボロの状態で呉方面へ歩いてくる人々も…。
彼らも被爆して、とても助からないような状態なのでしょうに、帰るという執念だけで体を前に進めていたことでしょう。
そして、ほぼ全滅したのでしょう。

最後、「自分の息子だと気づかなかった」という台詞が、やるせなさをいやまします。



8月15日
玉音放送で、最後にしゃべっていたのは片渕監督だそうですね。
さて、すずさんがあんなに起こるのは予想外でした。
径子さんが泣いているシーンが、きつかった。

畑で、焼夷弾の筒を映してから、横の花を映したあたり、時代の変化を印象づけますね。



水原さんのラスト登場シーン
声はかけないんだなぁ。
というか2人とも、リアカーにそんな量の荷物を積んで警固屋から灰ヶ峰の麓まで行くんですか!?



広島でのスケッチから、まさかの場面転換です。
少々場面場面の間隔が短いですが、なんとか必要な情報はくみ取れたように思います。
正直、呉が中心なのでそうしたシーンはないものと油断していました。
米軍機が消毒薬を空中散布しているのも含めて、いいですね。

スガシカオさんの感想にありましたが、すずさんは右手だったのを、このお母さんは左手で子供の手をつかんでいるんですね。
(よくそんなの気づくな…)


最後のシーン、径子さんが「去年の晴美の服じゃ小さいかね」とか少しうれしそうに言って服を物色していたのが
1回目で一番泣きそうになったシーンです。

エンディングの絵もいい。
そしてまさかのクラウドファンディング感謝コーナー。
リンさんとすずさんが手をつないで楽しそうにしているカットがたまらあああああああああん!!

結局、あの右手はなんなんでしょうね?



今年は7作品ほど劇場で見ましたが、文句なしにこれが一番でした。
完全版も楽しみですし、ブルーレイの発売も待ち遠しいですね。

少しでも多くの人に見て欲しいですが、好みが完全に分かれそうで強く勧めにくいのが難しい。
私の場合は、歴史(軍艦関係も含む)に明るいのでなおさら楽しめましたが。
~~~転載終わり~~~

今年に入ってから、2回映画館で見ることができました。

1回目は6月2日、健康診断が終わってからその足で丸の内の映画館へ。
これまで渋谷ユーロスペースさんでしか見たことがなかったので、大きな劇場での音を聞いてみたかったんですよね。
少し迫力がアップしたような?

2回目は8月26日、幕張で。
休日出勤が入って冷や汗ものでしたが、なんとか間に合いました。
ULTIRAのすごさを体験したいと思い足を伸ばしましたが……これは大正解ですね。
遠くまで行くだけの価値は十二分にあります。
機銃掃射のシーンとか、これは死ぬと確信できるほどの怖さですよ。
いろいろな音が、今までで一番よく聞こえていました。

ひるがえってブルーレイを自宅のテレビで見ると……音が……。
冒頭、鬼いちゃん「こりゃ!うるさい!」って言った後の咳すら、がんばらないと聞き落とします。
2年目突入ということで劇場で見ることが難しくなってきている情勢ではありますが、
それでも何度でも言いますが、これは劇場で見るべきです。

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