taimuのひとり言

毎日の生活の中で感じた事を 徒然なるままに・・・。

「寂しい写楽」 宇江佐真理著 

2010-11-25 23:31:16 | 読書

 
 

 内容紹介
  寛政3年、改革令に触れて、版元の耕書堂蔦屋重三郎は手鎖50日、
  身代半減の刑を受けた。
  それでも蔦屋は、幕府の倹約令に反旗を翻すように、多色の雲母摺りで
  歌舞伎役者の大首絵刊行を試みる。
  絵師に選ばれたのが、東洲斎写楽。本業は能役者で斉藤十郎兵衛という男だった。
  大量出版のため、助っ人に借り出されたのが、山東京伝と、のちの葛飾北斎と十返舎一九。
  世間をあっと言わせようという蔦屋一世一代の大勝負だったが……。
  屈指の人気時代小説家宇江佐真理氏が、デビュー前から温めていたテーマに取り組んだ。
  江戸の繁栄の狭間に一瞬だけ光り輝いた、奇矯の絵師の真実に迫る渾身の一作。

 
 「寂しい写楽」という題名にひかれて手に取った本です。
 
 しかし「写楽」という謎めいた魅力的な主人公の話かと思ったら
 全く違いました。
 どちらかというと蔦屋重三郎の話です。
 助っ人の山東京伝、のちの葛飾北斎と十返舎一九が主な登場人物で、
 ほかにも大田蜀山人や喜多川歌麿、滝沢馬琴らが登場して、
 それぞれに重要な役割を担います。

 これだけのそうそうたる人物が 同じ時期に同じ街で活躍していたというのも
 興味深いです。
 
 それだけに個々の人物をもう少し掘り下げて、あるいは誰かに絞ってあれば
 もっと面白かったのでは・・・。

 「写楽」というのは一人の人物、というよりも蔦屋重三郎が仕掛けた
 プロジェクトチームの作品という発想は 私には新鮮でなるほどと思いました。

「告白」湊 かなえ (著)

2010-06-23 23:47:03 | 読書


 
  

 内容(「BOOK」データベースより)
  「愛美は死にました。しかし事故ではありません。
  このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした
  中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。
  語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、
  次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。
  衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、
  第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!
  “特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。

 
  「第6回本屋大賞受賞」作品ということで 期待して読みました。
  
  どんどん読み進められますが だからといって 面白いわけではありません。
  いったいラストはどうなるのか その一点だけを期待して読みました。
  
  しかしこんなに 読後感が良くない小説は初めてです。

  たとえ悲惨な復讐劇でも、読み終わって心に重いものが残っても、
  それでも読んでよかったと思える良質の作品はいくらでもあると思う。

  でも この作品に関しては 最後まで不快でした。

  書店の店員さんが「皆に読んでほしい」という作品を選ぶのが
  「本屋大賞」だと思っていましたが 本当にこの本がふさわしいのか疑問です。
  
  作者は いったい何を伝えたかったのか 最後まで理解できませんでした。

  もちろん 映画も 見るつもりはありません。

  
 

「オリンピックの身代金」奥田 英朗 (著)

2010-06-08 23:35:33 | 読書


 

 内容(「BOOK」データベースより)
  昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。
  この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。
  そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」
  という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。
  警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。
  「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。

 
  東京オリンピック開催の直前に起きた爆弾事件を捜査する警察と、
  一人の若者が東京と地方の経済格差に疑問と憤りを感じ、
  東京オリンピックの開催を妨害するために身代金を要求していく過程。
  それがそれぞれの立場で描かれ、最後に対決する様子は最後まで目が離せず
  フィクションなのにノンフィクションのような感覚で 全編に緊張感があり
  読み応え十分でした。

  ただ東京オリンピックは無事に開催されたのだから 物語の結果は予想でき
  奇妙な安心感がありました。 
  東京オリンピックの年 私は小学校低学年で当時の記憶は定かではないが 
  学校で競技のテレビ中継を見たような・・・。

  当時 これだけの熱気と国民感情の高まり、そしてその裏で出稼ぎ労働者の
  過酷な現実、そんなことがあったなんて全く考えたこともなかった。

  中卒の出稼ぎ労働者が「秋田弁」で語る言葉が 現実的で的確に現状を捉え
  それでいて温かい雰囲気で 悲惨だけれども「秋田弁」にひかれるものがありました。

  「三丁目の夕日」とはまた違った一面の「昭和」を感じることが出来る本だと思います。

  もっと奥田 英朗氏の本が読みたくなってしまいました。
  

「財布のつぶやき」群ようこ著

2010-04-18 23:01:22 | 読書


 
 内容
 老後の資金が不安になり、家計簿を付け始めたものの二か月で挫折。
 六〇歳まで払い続ける予定の実家のローン、そして年末に襲ってくる税金問題!
 どんぶり勘定から脱却し、堅実な生活を送れるのはいつの日か?
 身近で鋭い視点に誰もが共感!お金に関するあれこれを綴った、
 群ようこの最新エッセイ集。

 

 
  群ようこさんは 私と同年代の方なので「あ~そうそう
  なんて思いながら読みました。

  「うまくいかないことばかり」でアクリル毛糸で編んだたわしで
  茶碗や皿を洗うときの話など まさにその通りで 私だけじゃなかったんだと
  思いました。

  また「時とともに変わる読書の楽しみ」の話も全く同感
  やはり 私も集中力が無くなってきているためか「長編小説」を読むときは
  かなりの覚悟が必要になってきています。
  (だから「エッセイ」とか「短編小説」ばかり読んでいます)

  幼馴染の友人達と 愚痴を言い合って ストレス解消をしているような
  親しみを感じました。

  
  

「花世の立春」―新・御宿かわせみ

2010-02-17 08:11:23 | 読書


 
 あらすじ   
 花嫁修業には目もくれなかった花世が源太郎と祝言をあげることに。
 源太郎も法律を学ぶ身で十分な収入がなく、不安を抱えていた―。
 表題作など全六篇。若い二人の門出を描く「明治のかわせみ」第三弾。

  

 「御宿かわせみ」シリーズの大ファン だった私は
 「新・御宿かわせみ」を読んで ビックリ
 主人公の二人 東吾は行方不明、源三郎は亡くなっていた。
 麻生家の人たちは 花世と宗太郎の他は惨殺されていて・・・。
 とにかく 激変していた。
 でもこれらのことが 割とあっさりと書かれていたので 
 わかりづらく 消化不良な感じ。
 
 時代は明治で 子供達に世代交代していた。
 麻太郎、源太郎、花世、千春、は のびのび・すくすく育って
 特に男二人はあまりにまっすぐで やっぱり 物足りない。

 東吾と源三郎も 好青年で友情に篤くさわやかな印象だったが
 嫉妬心も かすかな妬みも 女性関係も 秘密もいろいろあった。
 またそこのところが 生身の人間らしく ハラハラ、どきどき、
 しながら読んでいた。

 そして江戸時代の雰囲気や町並みや風習などが適度に織り込まれ
 しっとりとした 江戸情緒にひたることができた。
 何か そういうところが好きで ずっと読んでいたんだと 
 あらためてわかったような気がした。

 この3冊に関していえば 何か説明調の文章が多く、
 情緒とか人情とかもっと内面の人間模様を描いてほしいと思います。

 それでもこれからもやっぱり「新・御宿かわせみ」を読んでいくことでしょう。

 行方不明の東吾が ひょっこり現れるのを微かに期待しながら・・・。

「シズコさん」佐野 洋子 (著)  読書日記

2009-09-13 08:58:08 | 読書


 内容(「BOOK」データベースより)
  あの頃、私は母さんがいつかおばあさんになるなんて、
  思いもしなかった。ずっと母さんを好きでなかった娘が、
  はじめて書いた母との愛憎。

 
  佐野 洋子さんの本は何冊か読んだことがあります。
  歯切れの良い文章、凛とした強い意志、独立心、・・・。
  この本も そんな軽いエッセイ集のつもりで手にしました。
 
  読み始めて すぐに読むのをやめようと思ったくらい
  何か大変なものを 読んでいるという気持ちになりました。
  他人に一番知られたくないところを ズバズバと
  これでもかというくらいに書いてあり 私のほうが苦しくなります。
  でもそれは わたしの気持ちと重ね合わせていたためかもしれません。
  あ~こういう母娘もいたんだと思いました。
  この本を読みながら 私は娘になったり、母になったり、
  その時々で感情が交錯して 疲れました。

  私が一番衝撃的だったのは 洋子さんが認知症になってしまった
  母に会いに行き「添い寝」をするところ。私は多分 できないと思う。
  これほど実母との確執を赤裸々に描いていながら
  高級老人ホームに入れたことを「金で母を捨てた」と
  何度も言っている洋子さん。

  そんなことないよ、洋子さん。

  こうして「シズコさん」のことを本にして 
  シズコさんの家事能力の素晴らしさや 
  母から自然と身に付いた料理や裁縫の話など、
  客観的に見つめていて 認めている部分もあるように感じました。

  そして本の最後に 乳がんが骨に転移した、私もすぐそっち
 (なくなったお母様のほう)に 行くよ、という文章があり
  遺書のようなその一文に 胸が痛くなるような気持ちになりました。

  洋子さんには「娘」がいません。
  もしいたら 母に対する思いは変わっていったかも・・・。

  昨年読んだ本で「ずっとやくそく」 黒柳徹子、鎌田實(著) の中で
  「かぞく」という章で鎌田氏が
   「いい家族を作るためにはお互いがちょっと歩み寄ったり、
    心を配ったり、ときには時間をたっぷりかけながら、
    育てていく必要があるように思います。そう、
    いい家族はあるものではなく、育てるものなのかもしれません。
    いま、いい家族の中にいる人は、その家族のみんなが
    目にみえないところで努力したり、心配りをしているから、
    なのかもしれません。きっとそうだと思います。・・・」

  なぜか 読み終わってこの文章を 思い出しました。


  つらい部分も受け入れられないところもありましたが
  やっぱり 読んでよかったと思いました。




「パラドックス13」 東野 圭吾 (著)  読書日記

2009-08-30 17:50:07 | 読書


 内容(「BOOK」データベースより)
  13時13分からの13秒間、地球は“P‐13現象”に襲われるという。
  何が起こるか、論理数学的に予測不可能。
  その瞬間―目前に想像を絶する過酷な世界が出現した。
  なぜ我々だけがここにいるのか。生き延びるにはどうしたらいいのか。
  いまこの世界の数学的矛盾を読み解かなければならない。

 
  東野 圭吾氏の本としては 今までにないジャンル
  “P‐13現象”が 私には理解できなかったのですが、
  (そこの部分だけ 3回ぐらい繰り返し読んだけど・・・)
  一瞬で異次元の世界に放り込まれてしまった人たち。
  繰り返される大地震と異常気象の中で、人間の文明は完全に破壊され
  廃墟になった東京でサバイバルを強いられるわずかな生存者達。

  とにかく映像になることを 意識して書かれたような文章で
  前半は 夢中で読んでしまいました。
  ただ 読み進むうちに 同じような設定の瓦礫の東京なので
  中だるみの部分も少し感じました。
  結局 生存者達は「生きる」というところだけで
  つながっているわけだから 道が二つに分かれていたら
  やはり こういう結果になってしまうのでしょうね。

  ただ リーダーで皆をひっぱて来た誠哉の『イブ発言』には
  女性としては「え」って引いちゃいましたね。

  それと 前半で高齢者のご夫婦が亡くなってしまったのが
  個人的には不満です。やはり こういうサバイバルストーリーの中でこそ
  経験豊かな知恵を生かす話も入れてほしかったな~。

  ずいぶん古い映画ですが「ポセイドン・アドベンチャー」でも
  子供から中高年、弱者、など いろいろな人たちで構成されていたから
  様々な人間模様が描かれていて パニック映画として
  面白かったのですから・・・。

  「この話は一体どんなふうに終わるの
   と思ってしまいましたが あっさりと そしてほのぼのとした印象の
  エンディングでほっとしました。

  


「流星の絆」東野 圭吾 著 読書日記

2009-07-09 23:01:45 | 読書


  内容紹介
  惨殺された両親の仇討ちを流星に誓いあった三兄妹。
  「兄貴、妹(あいつ)は本気だよ。俺たちの仇の息子に惚れてるよ」
  14年後――彼らが仕掛けた復讐計画の最大の誤算は、
  妹の恋心だった。

  「この小説は私が書いたのではない。
   登場人物たちが作りだしたのだ。」――東野圭吾

  息もつかせぬ展開、張り巡らされた伏線、驚きの真相、
  涙がとまらないラスト
  すべての東野作品を超えた現代エンタメの最高峰

 
  東野 圭吾氏の小説は読みやすいので 一気に読んでしまいました。
  テレビドラマにもなったし(私は見ていませんでした
  それなりに面白かったけど・・・
  <すべての東野作品を超えた現代エンタメの最高峰>
  とは ちょっと大袈裟かな

  三兄妹の養護施設での生活の描写が少ないので、
  かなり苦労したんだろうな~と思うけど
  多分 そのあたりが描かれていないので 大人になってからの
  三兄妹の「絆」の強さや「魅力」があまり感じられませんでした。

  三兄妹が詐欺に手を染めるようになった動機もよくわかりません。
  残された幼い兄妹が 生きていくために味わった苦労や
  三人で必死に生活してきた過程が もう少し深く描かれていたら
  私も三人に感情移入ができたでしょう。

  この物語で一番気になった登場人物は戸神行成です。
  気持ちの優しい、心の広い好青年で 
  「ほんとに静奈でいいの」と
  余計な心配をしてしまいました。

  私としては「容疑者Ⅹ」の方が断然面白かったです。
  
  
  

  
  
  
  

「こんな感じ」群 ようこ (著)  読書日記

2009-06-20 16:41:11 | 読書

  
 群 ようこさんの本は軽いエッセイのようなものは読んだことがありましたが
 特に 猫好きな私には つい手に取ってしまうものが多いです。

 この本は そんななかでちょうど同じ世代の3人の女性の話ということで
 読んでみました

 確かにその通り こんな感じです。
 会えば あちこち体の調子の悪い話 年老いて来た両親のこれから・・・。
 それよりも自分が老いを感じてしまうことなど
 止め処もなく 話してしまい また盛り上がってしまいます。

 この本の登場人物の3人は 実はどういうつながりの友人たちか
 書かれていませんが 仕事を持ち、自立していて 独身という共通点があります。
 そして同居したり 隣同士になっても つかず 離れず
 いい関係だな~と思います。
 女同士というと 必要以上にべったりと付き合っている人たちなど
 私の周りにもいます。でもそういうお付き合いは長続きはしませんよね。
 私には 夫も子供たちもいますが やはり最後の根っこのところは
 一人だと思います。 
 
 この本は 事件が起こるわけでもなく、淡々と書かれていますが
 それだからこそ すぐそこにある日常生活を感じることができます。

 でも 一人になっても信頼できる友人が そばにいてくれたら
 心強いですね。
 
 また私も 誰かから そんなふうに頼られる存在であり
 信頼される人間になりたいものです。

「砂冥宮」内田康夫著 読書日記

2009-04-14 21:44:42 | 読書


 「砂冥宮」内田康夫著
  文豪・泉鏡花『草迷宮』のモデルになった三浦半島の旧家で、
    浅見光彦が取材をした老人は、「金沢へ行く」と言い残して数日後、
    安宅の関で死体となって発見された。
    浅見は死の真相に近づくため、金沢へ向かうが、
    老人の足跡は意外な場所で途切れていた…ファン待望、
    浅見光彦シリーズ最新の書き下ろし長編。

  
   浅見光彦シリーズの典型的な作品で 安心してスラスラと
   読んでしまいました。泉鏡花『草迷宮』の話から物語が始まるので
   泉鏡花にまつわる話かと思ったら あまり関係ありません。

   『内灘闘争』という50年以上前の話にまつわる事件です。
   私は全く知らない話で なおかつ石川県・内灘町が舞台で
   なじみはなかったのですが、内田氏の読みやすい文章で
   紀行文のような描写もあり 行った事もない内灘町
   の風景が浮かんできました。

   ですが、50年という年月の故か 殺人にいたる動機としては
   ちょっと弱いかも・・・

   「水戸黄門の印籠」のような「浅見刑事局長の弟」という
   いつものパターンも今回は使われていません。

   それから もうそろそろ浅見探偵は携帯電話を持っても良いのでは
   小学生でも持つ時代に 取材旅行で飛び回っている立派な大人が
   おかしいでしょう。いくら雪絵ママのご命令といってもね~。

   でも前作の『壷霊』よりは 面白かったです。
   長さも丁度良いし いつもの浅見光彦の落ち着きとクールさも
   感じられたし 楽しめました。

    
   浅見光彦シリーズは 常に登場人物が年をとりません。
   いつでも浅見光彦は33歳です。でもこれだけ長期間
   設定が変わらないと だんだん辻褄が合わなくなってきています。
   ファンの一人としては 年をとった浅見光彦さんも
   みてみたいですし、案外いいんじゃないかな~
   なんて思っています。