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[映画] アス

2019-09-13 | 映画

「アス」を川崎チネチッタにて観て来ました


一年くらい前にアマプラ配信にて「ゲットアウト」という映画を見ました

2017年に公開され、主役はほぼ無名、監督・脚本を手がけたのも映画初挑戦のコメディアンだったという事ですが、僅か5億円の製作費から300億円の興収をあげた上に、アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞にノミネートされ、見事に脚本賞を受賞したホラー作品です

ホラーといっても血しぶきやら残酷描写ではなく心理的な恐怖に主眼が置かれていて、”サイコスリラー” と呼ぶのが相応しいかもしれません……一見、何の変哲も無い日常風景に潜む恐怖と共に、細かい違和感やら奇妙に謎めいた部分が物語が進むにつれて徐々に大きくなっていくミステリー的な要素も強いので、”ネタバレ厳禁” な作風だったのも人気が口コミで拡大していった大きな要因だったと思われます

そして同監督・脚本による最新作「アス」も同様にネタバレ厳禁な内容となってましたのでバレ無しの感想も一切書かないでおきます









以下ネタバレ感想:

”狂人には狂人なりの理屈があるのだろうけど、こちらはその理屈が全く解らないから怖い”

映画を見てる間はずっとそんな言葉が頭を駆け巡っていて、”狂ってる” としか表現しようのない人たちが登場し、理不尽そのものとしか思えない惨劇が繰り広げられる中からその(理解不能としか思えなかった)”理屈” が明かされるカタルシスが楽しめましたが……前作と同様にその理屈や謎の根拠が ”トンデモ科学” だったりするのは映画ファンの間でも好き嫌いが分かれるところかもしれませんσ(^◇^;)

まあそれを言い出したらゾンビとか宇宙生物とか不死身の殺人鬼が襲ってくる系のホラー映画全てに何も言えなくなってしまうでしょうから、あくまで ”そういう(科学)技術や(宗教的)思想” が存在することを前提とした上で、その事態に巻き込まれてしまった人たちの恐怖を表現してるのだと思うしかありませんな


今作ではおそらく前作のヒットを受けて予算も増えた分スケールも大きくなっていましたが、その独特の着眼点は健在で、この監督はやはり ”狂人” の扱いがとんでもなく上手くて誰の周りにも時々いるであろう、パッと見は普通なのにどこか言動がおかしかったり、意思の疎通が出来そうで出来なかったりする人へのもどかしさを増幅させて ”恐怖” として扱う手腕が抜群です(゚д゚;)

しかも今作では、”実は狂ってるのはこいつじゃなくて、自分の方なのではないか?” という根源的な ”恐れ” みたいなのを的確に ”現実” の展開として表現して見せてくれました(本質的には ”狂ってる人” なんて存在しないと)

あの壮絶な ”地下社会” がどうやって存続されてたのかとかの整合性はともかく(^_^;)、”主人公の少女” が味わった絶望とその後の30年以上に渡る孤独な ”戦い” を思うと胸が締め付けられますな……あのコが1986年の幼少時までに得ていた知識と情報(冒頭で流れたCM等)だけでどうにか ”地上” へと ”反撃” する(他のクローン達の行動をまとめる)手がかりとしてたんだなとか想像するともう涙無しでは…(ノД`)


前作であった人種差別的な寓意は、今作では資本主義社会の光と影を扱ってたカンジですが、”たまたま” この地球上でモノもカネも溢れた国に生まれ出でた ”奇跡的な幸運” に負い目とか引け目を感じてしまうことは(アメリカ人だろうと日本人だろうと)誰もがあるかと思います……でも貧困格差なんて、世界を見渡すまでもなく国内だろうと町内だろうとそれこそ身内の間でもいくらでも目に入ってくるわけで、そこから(自分さえ良ければと)何となく目をそらし続けてしまう気まずさみたいなのを観客につきつける ”鋭さ” をこの監督はこれからも持ち続けて行くのでしょうか

何となくですが、この監督の社会意識からすると次回作で扱うのは ”老人問題” な気がするのでここに ”予想” しておきます


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