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ポジティブな私 ポジ人

TOUKO MIURA drove a red car SAAB900

「近々映画観に行くから」と私が言うと、大抵は「ふーん」というだけの夫が、今回は珍しく「何観るの?」と聞いてきた。
恐らく、私が今度観る作品を予想していたのだろう。
「ドライブ・マイ・カー」と伝えると、「僕も見ようかな」と言う。
3連休明けが人も少なくて良いだろうと、2月14日月曜日に二人揃って劇場に足を運んだ。はからずもバレンタインデー。

ドライブ・マイ・カーは村上春樹の「女のいない男たち」に収録されている短編が原作と聞いていた。また、数々の映画賞もすでに取っており、アカデミー賞にも4部門ノミネートされている。
主演が西島秀俊とだけ知っていたが、それ以外はあえて知らない状態で観ることにしていた。

上映時間は午前11時20分から。
「お昼ごはんはどうしようか。観終わったあとにしようか」と映画が終わる時間を確認すると午後2時30分。
ここで初めて長尺な作品であることが分かった。

主人公家福悠介役を西島秀俊、妻役を霧島れいか、ドライバー役を三浦透子。
運転する車はサンルーフがついた赤いSAAB。

演出家兼俳優でもある家福が演出するチェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」。出演者は国も人種も言葉も違う人々がそれぞれの母国語で演じるスタイル。言語の翻訳は舞台上のスクリーンに映し出される。
戯曲の台詞の数々が、進行していくストーリーと家福の心理、心情がリンクするような演出で、文学を味わうような、ゆったりと進む映画だった。
所々に意外なエピソードが描かれており、長さを感じさせないストーリー運び。

近くに居ながら、心は遠く。

遠くへ走るに従い、近づく心。

ストーリーが進むに連れ、次第に伝わり始めるそれぞれの人々の心の距離。

商業的な作品にしようとすれば、編集で2時間程度の作品にすることも可能であっただろうが、あえてストーリーがゆっくり流れることで、最近の映画では久しく味わったことのない感覚を得られた。
丁寧な作りの映画で、昔の日本映画のようにも感じられた。

観終わってから調べてみると、ドライバー役の三浦透子が奇しくも札幌市出身であることがわかった。
劇中でも北海道出身という設定だった。
彼女は今回の作品の中でとても存在感のある役柄だった。
化粧っ気のない無表情な顔。野暮ったい格好が、秘められた彼女の過去と相まって、独特の雰囲気を醸し出していた。
私は彼女に助演女優賞をあげたいな。

また、三浦透子は新海誠監督のアニメ「天気の子」のボーカリストであったことを、子供達から知らされた。彼らのお気に入りのボーカリストだった。

重要なシーンとして北海道の地が使われている。
ロケ地は赤平市。
赤平市民のみならず道産子にとっては、何か嬉しく、また誇らしくも感じられた。北海道が関わっていることで、親しみも感じられる作品となった。

かつて、ロシア文学、ドストエフスキーの「白痴」を三船敏郎主演、黒澤明監督の映画作品で観たが、物事を単純にしかとらえられない私にとって、ロシア文学は苦手だ。
私が主人公だったら、こんなに複雑で難しいお話しにならないのにと思った。

主人公の家福が直情型の人間なら、この映画もまた違うストーリーになっただろう。

この映画はPG12の作品だった。
PG12はご存知の方も多いと思うが、映倫が定めた映画鑑賞の際の年齢による鑑賞制限の一つ。PGはparental guidance
の略で12歳未満の子供が鑑賞する際は保護者の助言、指導が必要な作品という事だ。

冒頭から夫婦が裸のベッド上のシーンから始まる。
この映画、子供同伴で鑑賞する親もいるだろうか。世界的な作家、村上春樹の原作だから。
この物語に対しての助言と指導をどうやってしたら良いのか。
とても難しい大人の問題の物語だ。
私なら12歳以下の子供に何と説明を補うだろうか。
せいぜい言えることは、人生に我慢は必要なことだが、時として感情を素直に出した方が良いときもある…だろうか。

最近の12歳と私が12歳だった時とでは、同じ12歳でも精神の成熟度が大きく違うのだろう。だとしても、私が12歳の子供達に見せるかといえば、この作品以外のものにするだろうな。苦悩する作品は大人になってからで良いと思う。

アカデミー賞4部門にノミネートされているということだが、作品賞はどうだろうか?
派手さのないこの作品はアカデミー会員達に選ばれるだろうか。ただ、村上春樹の作品がベースとなっていることを考えると、受賞の可能性も大かも。

映画を観終わって一日が経過した今、様々なシーンが一つまた一つと脳裏に浮かぶ。
劇場から出るときに「あー、面白かったー」とはならなかったけれど、じわじわと後から来る作品だ。

映画館を出た後、夫がスマホでいろいろ調べて教えてくれる。
ドライブ・マイ・カーの“ロケ地めぐり”が始まっているらしいとか、サンルーフからタバコを持った手をかかげる劇中のワンシーンを真似する人が出てきているとか…。
そんな話を聞きながら、スタバで遅すぎる昼食を取った。

映画の余韻に浸りながら、スタバで過ごすこの何気ないひとときに、美味しさとうれしさがたまらない。

ブレゼントにスタバカードをくださったH様、感謝ですー。
素敵で楽しい“セントバレンタインズデー”になりました。




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