窓から道路を見ると、早朝に雨が降ったらしく水たまりが出来ていた。かなり激しい雨だったようで、水たまりの水の量がそれを物語っていた。
空が明るくなってきたので、早速ジョギングの為に外へ出た。
例年のことだが、豊平川の河川敷の一部は冬季間は雪の堆積場となっている。私が走るコース上にあるので、雪が解けて片付けが終わるまでの間、閉鎖されている。ゴールデンウィークに入りやっとコースが開放された。先週まで対岸のコースを走っていたが、いつものコースを今日から走る事が出来る。
土手の階段を降りてコースに入ると、雨後の…タケノコじゃなくて、びっくりするほど大量のみみず。やはり今朝の雨は地中のみみずたちにとって、大災害だったに違いない。
溺れて絶命したのもいれば、まだのたうち回っているのもいる。小さな物は4~5センチ、大きな物は20センチはあるのじゃないか。踏んじゃったら嫌だな。
「みみずを踏む」から連想して「蛇を踏む」という本の題名を思い出した。
蛇を踏むならある程度の感触はあるだろうが、みみずとなると小さなものなら靴で踏んでもわからないかも知れない。でも、大事に履いているアンダーアーマーのジョギングシューズでは、絶対みみずを踏みたくない。
両目は地面のみみずをとらえ、よけることに必死になりながらのジョキング。
走りながら考える。このみみず、野鳥は食べるだろうか?小鳥なら、ちょっとサイズ的に大きいかも知れない。
鳥がみみずを引っ張って食べている光景は、ヒヨコかニワトリのイメージだ。
そんなことを考えていたら、みみずを食べているカラスに遭遇した。カラスは歩きながらみみずを食べ続けてきたらしく、カラスとすれ違った辺りから、みみずがほとんどいなくなっていた。
折り返し地点に到達して、復路。風が吹き、日光が照りだすと、さっきまで濡れていたコースが直ぐに乾き始める。みみずも死んだものは乾きはじめてきた。カラカラに乾いて食べづらくならない内に、野生動物の餌になって成仏したら良いのに、と思わずにいられなかった。
いつもジョギングのゴールにしているミュンヘン大橋の下を過ぎてから歩き始める。南22条大橋まで歩こうと思い、歩き始める。
すると、こっちのコースは更に信じられないほどの量のみみずが避けようもなく、散らばっている。ほぼ全部4~5センチのみみず。
男性ランナーが数人、全く気にすること無くみみずを踏みながら走っていく。うわ~。無理。
みみずの少ない脇道を、絶対踏まないように気をつけながら進む。帰りの道は上の歩道からと心に決める。同じ道は無理だ。
南22条大橋近くで、ムクドリ4羽が草むらにいた。オレンジ色のくちばしが目立つ。私が近づくと、直ぐに小さく鳴きながら、4羽とも飛んで逃げた。もしかしたらムクドリたちも、水難のみみずたちを食べていたのかも知れない。
ムクドリたちから5メートル程離れたところにいたヒバリは、私が近づいても逃げもせず、高らかにさえずり続けていた。ああ、平和だ。
みみずだらけの河川敷から、土手の階段を上がり歩道を歩き始める。
上から河川敷を眺めながら歩いていると、大きくて立派なカラスが地面をついばんでいる。みみずを食べているんだなと思っていたが、良く見てみると、鳥が物を飲み込む時のアクションがない。地面のみみずをすくっている。やがてくちばしに何本ものみみずをくわえて、土手の私の近くまで飛んできた。それはいつか見た海鳥ウトウの姿を思い起こさせた。
やがてカラスは、草むらにみみずを置いたようだった。貯食だろうか。
カラスは再び元の場所に戻り、今度は拾いながら次々に食べているようで、上を向き喉の方に流し込んでいる動作をし、数匹食した後、また何本かみみずをすくってくちばしにくわえたまま、私の歩いている後方のガードレールに止まった。私はカラスを驚かさないように、今来た道を戻ってカラスのくちばしを観察した。くちばしからは、やはりみみずが何本も垂れ下がっていた。カラスはみみずをくわえたまま、さっきとはまた別の方へと飛んで行った。
カラス、朝からモーニングビュッフェだな。みみず食べ放題の。カラスにとって優雅な良い朝だった事だろう。みみずは大災難だったろうけど…。
早朝の雨がもたらした、自然界の小さな大事件を目撃した。ささやかではあるけれど、非日常をディープに体験したような気分の朝だった。