この映画の主演俳優さんが大好きなのに、最近名前がなかなか思い出せなくてもどかしい。
思い出す為には必ず、お笑い芸人のジョイマンのネタを思い出す必要がある。
♪健康はーだいじー、坂東は英二
ナナナナ、ナナナナ、ナナナナ軟骨♪
こんな感じで始まるラップネタ。
この「ナナナナ」は彼の“愛娘ななちゃん”の名前を呼んでいて、生まれたらしい。
♪おなかのーたるみーtell me show me♪
彼らの個性も相まって、何回見ても面白いジョイマン。
♪食生活は大事だよ、今朝は何食べたsay!♪
相方が「ウィンナー」と答え、何本?と聞く。「2、3本」と答える。
ここから、俳優の名前。
♪OK2、3本 イ・ビョンホン ペ・ヨンジュン ペルー人♪
その次だ
♪ウォン・ビン ビール瓶♪
そうそう、ウォン・ビン!
このようにして、いつもウォン・ビンの名前を思い出すのに時間がかかる。
ウォン・ビン主演の2011年公開作品「アジョシ」ジャンルで言うと、サスペンス・アクション映画。
主人公は、悲しい過去を持つ元特殊工作員。現在は質屋のアジョシ(おじさん)として無気力な日々を送るウォン・ビン。伸び放題の髪の毛でほとんど顔が隠れ、陰気な印象。
その質屋をよく利用する幼い少女。
物語の背景には、何処の国でも生じている社会問題があり、それがより身近な問題として感じられ、映画の中に引き込まれるてしまうのかも知れない。
少女を取り巻く環境はあまり良い状態とは言えない。
少女は母親との二人暮らし。母親はストリッパーとして働いているが、身持ちが良くない。男を連れ込んでは、娘を家から追い出すような女だ。
質屋をよく利用する貧困家庭。少女は学校にも行けない境遇だ。
そんな少女は質屋のアジョシに心を寄せる。家庭事情を知るアジョシもシンパシーを感じている。
そんな状況下で、母親が犯罪に関わってしまい、少女も事件に巻き込まれてしまう。
犯罪組織は薬物だけに留まらず、臓器売買などにも関与し、少女が危険にさらされる。質屋のアジョシは少女を救うために動き出す。
ウォン・ビン、警察、犯罪組織の三つ巴の戦い。
薬物と臓器売買と聞くだけで暗鬱な気分になる。そして冒頭、見た目陰気な質屋のアジョシ、ウォン・ビン。だらし無い母親。これらを並べただけで、鬱々するが、ここに明るくて、おしゃまな少女が加わるだけで、物語全体の明暗のバランスがとれる。
また、駄菓子屋、あるいは文房具屋なのか、そこのおやじさんがまた良い味を醸す。緊迫した状況の多い中、ホッコリさせてくれる。
劇中の警察官の会話も面白く、個性が際立つ。悪役達もそれぞれに魅力的だ。
ストーリー展開もハラハラ・ドキドキの連続で、ウォン・ビンのアクションも素晴らしい。
韓国の映画監督は無茶振りをすると、確か藤原紀香が韓国映画に初出演した時にインタビューで言っていた様な気がする。
確かにアジョシでも、ウォン・ビンが追われて逃げ場に窮し、建物の2階の窓から飛び降りるというシーンがあった。スタントマンじゃなく、本人が実際に飛び降りていた。危険な撮影だ。
これまでみた韓国映画でも、ここまでやるかというシーンはよくあった。
特に近年観た「パラサイト 半地下の家族」では、何度息を呑んで思わず手を口に当てた事か。
エンターテイメントとしては、あらゆる要素をすべて盛り込んでおり、ストーリーの意外な展開といい、驚きの連続で面白い。しかしその一方で、ショッキングなシーンも多いのだ。
年配の女性が頭から地下への階段を転げ落ちるシーンなどは、年代の近い私としては大丈夫かしら?と大いに心配になった。
別のシーンでは、倒れている青年の頭頂ギリギリのところに、見た目30キロは超えていると思われる本物の石を抱えた男が、足元の男の頭の位置も見ずにボーゼンと上から石を落とすという、一歩間違えば大惨事というシーンがあり、恐ろしかった。
ウォン・ビンの出演する映画はあまり多くない。まさか、監督の無茶ぶりに懲りてしまったという事は無いと思うけど。
私の知る彼の映画の中では、ダントツ1位のアジョシ。
この作品の中で最大の魅力とは。
それは無気力に生きていた一人の冴えない見た目の男が、少女救出のために内に秘めた力を解放し、ヒーローとして活躍する過程が胸をすくからだろう。そして、ウォン・ビンに漂う哀愁、私にとってはそれも魅力だ。
彼が出演する作品で2009年公開の「母なる証明」も面白い作品だった。
奇しくも「パラサイト半地下の家族」のポン・ジュノが監督している。
ウォン・ビンは、事件に関わる知的障害の青年を演じているが、この作品ではキャラクターを演じる演技力も確かなものだと感じさせた。
アジョシとは対極にあるキャラクターを演じているので、アジョシを観た後だったら、見る側の心のスイッチを切り替えて観賞するのが良いでしょう。
おばさんからのアドバイスです。