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ポジティブな私 ポジ人

炎天下の路地裏で

札幌も暑い日が続く。月曜日、30度超えの午後1時過ぎ。日が陰ってから出掛けたいものだと思いながら、用事があって家を出た。

数件の用事を足した後、日傘をさしながらの帰り道。日陰を求めて、かなり古い家屋の立ち並ぶ路地裏をぼんやり歩いていると、住宅の基礎部分の壁を、ものすごい早さで動く生き物を見つけた。
5センチ程の長さのあるその生き物は、遠目には細長い身体の昆虫だと思ったが、近くまで行ってみると多足類のムカデであることが分かった。

足の数が多いとあって、驚くほど動きが早い。それはまるで蛇行する川の流れのようで、美しく、見た目が面白かった。
もっと良く見たいと思って近づいて行くと、それを察したのか、ムカデは地面に近い小さなスギナに素早く身を寄せ、じっと動かなくなった。
チョボチョボと生えた貧弱なスギナからは、ムカデの身体は丸見えだったけれど、身を隠しているつもりらしい。

炎天下ではあったけれど、私は日傘をさしたまま、ムカデがいつ動きだすだろうかと、その場に立ち尽くしたまま様子を見ていた。

じっと待っていたが、なかなかムカデは動かない。私の方がしびれを切らして、帰る方向へと顔を向けた。
「帰ってしまおうか…いやいや、せっかくの機会だ。もう一度ムカデが動くのを間近で見てみたい」そう思って待っていた。

5分ほど経過した頃、ムカデがスギナの影から上に向かって出てきた。動いた!と思った瞬間、あっという間に基礎と外壁の隙間に入り込んで見えなくなってしまった。
少しガッカリしたけれど、ともかくも再びムカデが動く姿は見ることができた。

私は家に向かって歩きながら、言ってみればあんな小さな虫でも(ムカデは昆虫ではないが…)、私を敵とみなし、自分の身に危険が迫っていることを感知して、身を潜めるのだなと感心した。あの仁丹より小さな脳ミソで考えたなんて、すごいと思った。いや、考えることもない、本能であり、ただの反射なのかもしれない。

人間なら、見知らぬ人とすれ違っても、基本は無防備だ。よっぽどの事がない限り、相手を敵とは考えない。秩序ある人間社会ならではの当たり前の話だが。

自分が野生の生き物だったらと想像すると、不意に異種の動物に出会ったら、常に緊張を余儀なくされるだろう。相手の出方を見極めなければならないのだから。補食されるか、補食するか。あるいは縄張りで争うか等々。

最近、ニュースで理由もなく人が襲われ、命を奪われたり、怪我を負う事件が多い。そんな出来事が頻繁だと、何気なくすれ違う人も、もしかしたら襲ってくる可能性が無きにしもあらず…と、そんな事を考えてしまう。
前方からやってくる人が危険人物ではないかどうか。その手に刃物はないか、そんな事まで確認してしまう。

昔、歌の歌詞に「コンクリートジャングル」という言葉があった。私が中学生の頃にやっていたテレビ番組、桜木健一主演の「刑事くん」の主題歌だ。
コンクリートジャングルという言葉は、一見秩序のある人間社会にあっても、都会は危険な猛獣(犯罪者)が潜む危険な場所であるのだ、と何となく解釈していた。

この頃の日々流れるニュースを見ていると、私が今歩いているモルタルの住宅街だって、もしかしたらジャングル並みに危険な場所にだってなりうるのだと思わずにいられない。

実際には穏やかな何事もない路地裏から遊歩道へ抜けながら、そんな風に危険を実感していたのは、あのムカデだけだったなあと思いながら帰宅した。

帰宅してから、今日見たものが間違いなくムカデであったかをスマホで画像検索した。間違いなくムカデであったものの、画面に出ているムカデのアップにビビって、画面を消すために指でタップすることが、気持ち悪くてなかなか出来なかった。
外で見かけたからあんなに冷静でいられたけれど、家の中に出てきたなら、とにかく悲鳴しかでないだろうなと思った。やっぱり私は虫が苦手だ。



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