社会の鑑

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衆議院での再議決

2008-05-14 09:26:58 | ノンジャンル
 昨日、福田内閣は、憲法59条2項に基づく、3度目の再議決を行った。このような再議決を、果たして憲法は認めているのだろうか。
 衆議院で可決された法案が、参議院で否決され、衆議院で三分の二の多数で再議決した事例は、今国会での三例を除けば、二例しかない。
 一つは、1951年6月5日に再議決された「モーターボート競走法案」であり、もう一つは、1952年7月30日に再議決された「国立病院特別会計所属の資産の譲渡等に関する特別措置法案」である。
 当時の国会状況は、与党が衆議院の三分の二以上の議席を持っていたわけではなく、参議院の多数が野党側であったわけではない。しかし、法案の審議において、参議院では、審議の結果、否決となったものである。そこには、参議院の独自性があり、政党の論理に支配されない「良識の府としての参議院」が存在していた。それに対して、政府は、衆議院での多数派工作を行い、三分の二以上の多数を得て、衆議院で再議決を行った。
 これらに対して、今国会で行われた三例の再議決は、衆議院は与党、参議院は野党が多数を占めるという議会の構造すなわち与野党のぎゅく点現象に起因するものである。
 憲法が想定しているものは、前者であろう。
 今国会での事例は、憲法が想定しているものではない。このような事例が続けば、参議院の存在価値そのものが問題とされることになる。衆議院で三分の二以上の議席を有する与党が存在した場合、参議院での議決は意味を持つことなく、すべての事案において、衆議院での再議決を行えばすむことになってしまう。
 このような参議院無用論につながることを、二院制の前提に立つ憲法が認めているものではない。
 このような逆転現象下の国会で再議決を行うことは、極論した場合、憲法の否定と同じである。このような逆転現象が生じた場合には、政府は速やかに衆議院を解散し、国民に民意を問うべきである。解散もせずに、闇雲に多数の行使を続けることは、国民を愚弄したものである。解散できないということは、政権政党から野党への転落を恐れているのであろう。それは、「政治屋」の行うことであり、「政治家」の行うことではない。福田内閣が「政治家」の集まりであるならば、可及的速やかに国会を解散し、国民に信を問うべきである。