
10月30日 この旅の重要課題である「泰山登山」について考えを巡らす。
泰山は5元札に描かれている複合世界遺産の山だ。
上海でも街中で「生命重於泰山」「安全重於泰山」のスローガンを見かけることがある。
5元札を手にする度に、スローガンを見かける度に気になっていた山。その日の出は格別らしい。
日の出を見るために・・・日中登って山頂に宿泊するか?真夜中に懐中電灯片手に登山するか?
前者のメリットは登山しながら景色が楽しめることで、後者は宿泊代が浮くことだ。
山頂の宿泊は一人で泊まると割高になるかも知れない。山頂の宿泊施設に数か所連絡した。
その中でも北天門にある「招待所」は日の出観賞のロケーション、宿泊費ともに納得がいったので早速予約を入れた。
さぁ、泰山に向かって出発だ。
ユースからバスを2本乗り継いで長距離バス停へ。
曲阜から泰安まで長距離バス代23元。
泰安火車駅から路線バスに乗って泰山入口の「紅門」へ。
路線バスの運転手に登山のことで尋ねていたら、武漢から出張のついでに泰山登山をしに来たというキャリアウーマンのおひとり様に話しかけられた。「一緒に登りませんか」と。
私も正直一人では心細かったので、「渡りに船」とばかり快諾した。
入山料は127元。高いなぁ・・・冬になればオフシーズンで安くなるけど、夫の出張期間限定で羽を伸ばすしかないのでしょうがない。
泰山の至る所に「石刻」がある。大きいのから小さいのまで。毛沢東の言葉とか漢字一文字とか熟語のようなものとか。
お寺もあちこちに、犬も歩けば棒に当たるくらいあった。
6660段の石段が果てしなく続いている。
武漢のキャリアウーマンは登山を開始して程なく息が上がり、「・・・先に行って下さい」と言う。私は意を決してソロ活動することにした。
黄山登山の折りに買った伸縮自在のステッキが大活躍した。これが有ると無いとじゃ大違いだ。
登るだけでも大変なのに、担ぎ屋は瓶ビールや瓦を肩に掛けた天秤の両端にぶら下げている。人間と言うよりも牛や馬のように逞しい。
期待していた紅葉はなかった。代わりに登山する人々が願掛けで赤い細長い布を木々の先端に結び付けているのが紅葉みたいだった。
お昼過ぎから登り始めて4時間足らずで「玉皇頂」へ。
汗ばんでいた身体が頂上付近の濃霧で一気に冷えてきた。視界が悪くなり、予約した宿にはたどり着けそうもない。キャンセルした。
さて、どうしようか・・・と途方に暮れていたら、別の宿の客引きに声を掛けられた。駆け引きの結果、水回り無しの2人部屋を40元で泊まって良いことになった。
壁が薄くて隣室からは男女の話し声が良く聞こえた。布団は湿気と寒さで異常に重かった。なんか悪い夢を見ている気分になった。
持参した使い捨てカイロを背中と胸に張り、賞味期間が妙に長い個別包装のパンで寒さと空腹と孤独を麻痺させた。
明日の日の出が吉と出るか凶と出るか誰にも分からない。