「水素ロータリーがル・マンを制覇する日」その６１

杉浦は、少しリーンバーンに寄せた燃焼状態で700 hp出すことを考えていた。
水噴射のアイディアが浮かんだ。
技術規則では、水を吸気管やシリンダー内に噴射することは禁じられていたが、燃焼後排気管に噴射することは禁じられていないことに気が付いた。
ガス湯沸かし器の要領で排気の熱を水で回収し、高温になった水をターボチャージャーの直前に噴射し、蒸気になって膨張する力をターボチャージャーの圧縮に活用することできるのではないか。
早速、図面をCADで描き、試作した。
ベンチテストの結果は良好であった。
680 hpが得られた。
排出する熱エネルギーを回収することによりトータルのエネルギー効率が上がり、燃費が良くなった。
しかし、ル・マン本番に間に合わせるのがやっとで、耐久信頼性は未知数のままという製造品質になる。
由香里と大橋（真）は、アウディー、プジョーが650hp以上を出していることから、650hpでは勝ち目がない。耐久信頼性は未知数でもル・マン本番に水噴射の採用を決めた。
5月の連休前にALMS第4戦ソルトレイクシティ用の車両が完成し、エアカーゴでアメリカのユタ州のソルトレイクシティに送られた。