鉄人 須藤 將のホームページ

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「水素ロータリーがル・マンを制覇する日」その40

2009-08-29 05:28:43 | 車・バイク
BMW

BMWは、BMW Hydrogen 7のV12気筒エンジンをベースに、ターボチャージャーを各バンクに1個装着したもので開発をスタートした。
BMWの開発陣は、水素の早期着火に悩まされていた。Hydrogen 7としては、リーンバーンにより最高出力260 psと十分に実用的な領域に追い込んだのであるが、レーシングエンジンに求められる600hp以上のハイパワーを追求し、水素を濃い目にセットすると、熱負荷が大きくなることで排気バルブや点火プラグ回りが高温になり、インテークシステムの途中で水素ガスインジェクターから水素が噴射され、混合気となってシリンダー内に取り込まれる量産の仕組みでは水素の早期着火が起こる。それを避けるために、吸気で排気バルブや点火プラグを冷やし、早期着火が起らないタイミングで水素ガスインジェクターからシリンダー内に直接噴射するエンジンマネージメントを採用した。それと同時に異常燃焼を検知する圧力センサーを各シリンダーヘッドに配置し、噴射タイミングを制御している。
早期着火はコントロールできたが、最高出力が500hpしかでない。ターボチャージャーの作動が十分でないことが原因であった。
片バンクに1個づつターボチャージャーを配置してあるのだが、水素エンジンの排出蒸気では、ガソリンやディーゼルのように空気を圧縮するエネルギーが十分に得られない。
3気筒に1個づつターボチャージャーを配置して、小型化して排出蒸気の反動でも十分に作動するものにし、さらに未燃水素量を増やして(燃料消費量は増加する)排出後にも燃焼させ、その膨張力を活用することによって最高出力を650 hp以上とすることができた。
しかし、排気管の蛸足とターボチャージャーの設置スペースが車両レイアウトに影響を与えることになった。
また、BMWは、液体水素を使用する。液体水素はガス状の高圧縮水素と比較してエネルギー密度を非常に高くできるのが特徴で、例えば同じサイズのタンクで700barまで圧縮された水素(CGH2)と比較した場合、液体水素の方が75%以上もエネルギー量が多いことから走行距離を多くすることができ、燃料重量を少なくできる。
しかし、液体水素は、-253℃という極低温でタンクに貯蔵されなければならない。そのタンクは、厚さ2mmのステンレス鋼製プレートと、厚さ30mmの超真空断熱層が内壁と外壁を覆う二重構造となっている。
こうしたエンジン開発と並行して、トムウォーキンショー・レーシングと提携して、車両開発が進められていた。モノコックは、液体水素タンクをツインチューブにカーボンファイバーで包んで一体化したものであった。トムウォーキンショーは、蛸足状の排気管とターボチャージャーの熱を積極的に、液体水素のガス化に必要な熱量として利用することを考えた。車両の基本的なデザインは以前のシルクカット・ジャガーを基本に、それを発展させたクローズドボディーであった。
液体水素タンク回りで重量がかさみ、マイナス50kgの水素インセンティブを生かすことができず、逆に15 kg プラスの940 kgとなった。
2008年3月のALMS第1戦セブリングが目標で開発されていた。

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