銀色のブロックが雨に打たれて
光っている
僕の指はその光を掴もうとし
伸ばしているうちに
肩も胸も腰も足も
体ごと引き込まれていったのだ
果たしてそれが何だったのか
その先に何かが見えたのか
僕はわからない方を選んだ
そもそも光は自らが照らしたものだ
正体もわからず
あたかも彼方からの光のように
錯覚をして見せたのだ
そうすべきだと最初から決めていたから
誰とも話す必要などなかった
繕うように照れてみたけれど
支えているものは
何もなかったのだ
僕が何を望んでいたのか
今もってわからないでいる
空に雲
山に霧
雨が山に隠れこむ
やがて川となり
大河となり
海へと
耐えることのない水
は
本当に永遠なのか
差し出したはかない手にそそがれる水
宇宙の果てしないへりと
わずか窓ひとつのの空間を比べても
それは不合理
加速する生命の帯もあれば
小さく短い生命が細くつながる紐もある
だが同じなのだろう
底を這う得体のしれない命のやりとり
空を見る
ずっと見る
生命が吸い込まれていくようだ
だからといって
小さなことにくよくよする
なんて
それは少し無理な筋書き
それはそれ
あれはあれ
これはこれ
みんなひとつひとつに一つの生命があるのだから
無限の宇宙の生命なんか関係なく
くよくよするさ
労をいとわず
力を尽くし
やれるだけのことやって
さんざんやって
わかったことがある
何もしなくてよかったのだ
そのままでよかったのだ
そんなこと
多々ある
君を
すっかりだめにした
なんとかなるだろうは
人生の締めくくりで結果が出た
その有様
だが
なんともならないだろうと
歩んだ道と
そう大して変わらないのも事実だ
有様は違っていても
閉じるときが近づくにつれ
心根は同じである
地球を北へ北へといくと
一日中夜に近い日があるらしい
朝目覚めて
もう陽が高く昇っている日常に
すっかり慣れた人は
そんな話を聞いても一息入れるだけ
あたりまえの日々を
わざわざ切り裂くこともない
ただそのままが永遠であることはない
深い海の底へ木が一本沈んだ
まだ木が生きているとしたら
木よ横たわれ
深い海の底へ陽の光が達するまで
安らかに眠れ
死んだように
横たわれ
眼を開けて
年が変わり
新しいって言葉が加わり
新年になった
けれど僕の周りにでは
そんな時間を
水晶玉のように手のひらで転がして
ただ眺めているだけだ
歪めて見ているわけじゃない
ただ眺めている人たちがいるのだ
今日もその前ももっとその前も
何も変わらない
そんな人たちがもがいて生きている
何をも否定せず
ただ自分の世界で
自分を否定し肯定し繰り返し繰り返し生きている人たちが
いるのだ
知らない事が多すぎて
知っている事がみじめになる
あおい地球のもっともっと向うの惑星
山の奥
海の底
測り知れない時間の軌跡と延長
大きな荷物であろうと
ちっぽけであることに変わりはない
まだ無数の知らないことがあることを
知ってみじめになることはない
階段とスロープの違いは
段があるかないか
膝を上げるのか
足を擦り上げるのか
違いはあっても
傾斜はいつも上り
下りではない
下りと思っていても
傾斜はいつも上りなのだ
今ままでの
生きた分
これから同じだけ
生きていくのは
とうていかなわない
わかっていても
わかることができない
つたない希か煩か
空や海
山も大地も
まだある
なげだすことはない
僕の中にまだ残っているものがある
君の中にもそうだ
まだなげだすことはない
欠けたり
朽ちたり
傷つけたり
傷つけられたり
それでもまだある
まだ道がある
行く道
僕は見上げ
胸を張り
手を振り
進んでいた
戻る道
足を盗られ
肩を落とし
僕は俯くばかり
同じ道なのに
すっかり忘れて
見上げれば
夜も更け
星さえ
目には
映らない
同じ道なのに
何も変わらないのに
最近やっと
円いものが円く
四角いものが四角に
見えてきた
ただ目を凝らしてみても
本当に円いものが見つからない
相変わらず目の方が
円くないのだ
泣いていようよ
そんなに悲しいなら
泣いて
誰も
咎めはしない
泣いていようよ
いつまでも
貴方の気のすむまで
どうにもならないことで
心が痛むのだから
貴方だから心が痛むのだから
泣いていようよ
目の前で
起こる人生の続き
消せはしないそのことで
心が痛いなら
泣いていようよ
もっと泣けば
その先に
この続きは
誰にも分らない
貴方次第と
突き放すけど
それ以上のこと
できる僕でもないから
