Five Spot(Cafe)はかつてニューヨークにあったジャズクラブ
カーティス・フラーの柔らかいトロンボーンで大きな雲の中にいるような厚みのある曲になっています。
Curtis Fuller - Five Spot After Dark
Five Spot(Cafe)はかつてニューヨークにあったジャズクラブ
カーティス・フラーの柔らかいトロンボーンで大きな雲の中にいるような厚みのある曲になっています。
Curtis Fuller - Five Spot After Dark
目が覚めることを望んだわけではない
夜の切れ端をつけたまま
鍬で掘り起こされる
仰向けの瞼で時間を探す
恐ろしく退屈な一日
身体はピクリとせずとも
細胞は騒いでる
神経は怯えている
残酷な今を置き去りにして
脳は旅に出る
じっとしたまま
過去へ未来へ
一日の終わり
時間旅行からの帰還
へばりついた燃料が
ぽたりぽたりと垂れてくる
もう一日という明日がある
来るはずのない届け物を待って
もう一日生きてみるか
特別に約束があるわけでもないし
月がこんなにも
手の届きそうな
向かい合って
距離がとても短い
風の梯子を
闇夜に放てば
渡って行けそうな
それほど心も近づけ
眺めていれば
つい言葉もかけて
真空の風の音
一人立つ夜
ほんとうは
というと
いつもの口が
うそにきこえる
ほんとうは
と切りだしても
ほんとうかどうか
わからずにいる
ほんとうは
ほんとうかどうか
そんなこと
思ってもいない
ほんとうは
といって
さまよう
わたしの真実
知り合いの友人が
知り合いの友人に
家を頼んだ
知り合いの友人は
知り合いの不動産屋に
家を頼んだ
知り合いの不動産屋は
知り合いの不動産屋に
家を頼んだ
たくさんの知り合いの知り合いが
たくさんの家をぶら提げて
暗い夜道を行列している
知り合いの友人は
行く先もわからず
いつしかその行列の最後尾で胸を張っている
僕がそこにいないわけを
薄い皮膚は黙秘するが
体の芯は知っている
僕がここにいるわけを
薄い皮膚は白状するが
体の芯は凍ったままだ
空を飛んでここにいるわけじゃない
歩いているうちに
道に迷ったのか
求めたのか
まっすぐな道を
まっすぐに行くことほど
難しいことはない
月の暦で年のはじまり
太陽の暦で春のはじまり
立つは歩くのはじまり
歩けば旅がはじまる
僕の旅のはじまりは定かではないが
突然ここに着いたわけでもない
記憶は
鳥のように羽毛の軽さで飛びはじめ
今や五体の何倍もの荷物を背負ってる
その分筋肉は比例して形を作ってきたが
ここにきて支える骨が軋んできた
終わりが見えてはきたが
まだ終わりではない
思う以上に長い旅の途中かもしれない
そろりといたわりながら
まだずっと先に腰掛けて
最後に見る光景を想像しながら
一歩ずつ踏み出していく
それが今日のはじまり
咲き誇るなら
短い命の花だけでいい
指先ほどの花びらが集まって
幹も枝も隠し
群れとなり
大きな生き物になっていく
白色のあるいは薄紅色の
天に導く龍のようだ
限られたときの中で
命の色を保ったまま
散っていく
地に落ちた桜の花の道
無造作に歩くことはできない