目を押さえても
悲鳴は聞こえる
山の崩落
海の変容
そして世界の爆発音
耳を塞いでも
混沌は見える
街の電光板
朝一番の行列
そして世界の血図
逃げない
目を開き
耳を傾け
受けとめる
目を押さえても
悲鳴は聞こえる
山の崩落
海の変容
そして世界の爆発音
耳を塞いでも
混沌は見える
街の電光板
朝一番の行列
そして世界の血図
逃げない
目を開き
耳を傾け
受けとめる
水平の崩壊へ
焦点を合わせるために
屈折は変えない
細めない
凝らさない
閉じない
見えるものを見る
角膜から水晶体を通って
零テン何ミリの網膜に映ったままを
信じて
見えるものを
じっと 見る
手に
空気の塊
何もない
言葉は
素通り
何もない
後ろ手はしない
手は前へ
開いて見せる
逆手
からめ手
懐手はしない
自然な関節の動き
痛みのない形
そのままの手を差し出す
行く道を
ていねいに
なぞって
進む
駆け足
急ぎ足
まして蟹足
なんてしない
寄り道はしない
そのつもりが
外れたとしても
足は地球に沿って戻ってくる
まっすぐに
滑らかに
さくさくさくと
歩く
音は直線
相手の角度で方向が決まる
言葉は曲線
受ける心で意味が決まる
この耳は
音に垂直で接したい
この耳は
言葉に平でありたい
悲しげな騒音
物憂げな歓喜
たった一つの声が欲しい