百枚の手紙を君に書きたくて書けずに終わりかけている夏 ―― 俵 万智季節はあまりにも早足で花も虫の声もいまはもう秋それでも庭にはまだたくさんの夏の花が咲き残っていてゆく夏の光を追いかけている夏のカケラを探している最後のひぐらしの声寄せては返す遠い呼び声は貝がらの奥の波音に似てかすかにやさしく淋しげに心に沁みていくハイビスカスの花柱からひとひらの花びら今年も夏が終わる・