山桜3/31

散り初めし桜一輪掌に
エンデバー号帰還す桜満ちし日に
緋桃咲く一丁目の角艶やかに
里山の黄色に煙る花山椒
六地蔵詣でて谷戸の山桜

牡丹の芽3/25

菩提寺の弥陀の微笑み彼岸かな
冴え返る都電の軋み始発駅
土破り炎の如し牡丹の芽

芽柳3/22

諍いの夫黙しをり黄水仙
天と地を洗い清めて今朝の春
梅の香に包まれ独り昼餉かな
芽柳の風に縺れぬ薄緑
迎春花谷戸のはずれのレストラン

黄水仙3/18

探梅の客を見上げる石仏
春眠の静寂を破る妻の声
都市農園緩き斜面に苗木植え
はくれんの咲き初め空の水色に
黄水仙咲き満ち兄の忌日近し
岩陰の鯉一列に春の池

桃の花3/7

冠を解いて素顔の内裏雛
琴の音に耳傾ける雛の夜
竪琴や音色零るる桃の花
多摩川を渡りひいなのコンサート
紅椿胃の襞のぞく内視鏡

春の星3/1

咲き初めし白梅朝を透き通す
金縷梅や月読神社の角曲る
白梅の咲き満つ谷戸の分れ道
声あげて金縷梅仰ぐ黄と紅に
ヴェランダに孫と眺める春の星