1.概況
きっとみなさん大変な思いをされているはずなのだけど、被災者の多くの方々が、当然のような顔をして24時間体制で支援活動に就いておられる。そのせいもあって(東北や阪神の時のように街全体が壊滅状態ということではないのでおよそ比較すべき話ではないが)ライフラインや交通機関の復旧は驚くほど早い。
またその反面、個人宅の復旧は立ち遅れている。多くの被災者が、「自分も被災したが、もっと大変な人たちがいる。」と言って避難所ボランティアなどの支援側に回ってしまうためで、熊本学園大学で避難所の指揮を執られている社会福祉学の花田教授によると、「もっと被災者意識を持ってもらわないといけない。自分も支援をうけていい立場なんだと認識していかなければ個人レベルの復興が進まない。」と心配されるほどだ。
ちなみに本学教授で天草に実家のある方によると、「熊本はそういうところ。妙に楽観的というか、自分のことは後回しみたいな気質がある。」ということらしい。
市街地の様子は、写真を数枚ご覧いただく方がわかりやすいかと考える。
水道も電気もガスも回復に至ってはいるものの、水道は地下水から導管していたり、ガスは一部地域またはプロパンガスでの復旧。電気も周辺の被災状況によっては途絶えていたりしてはいる。
2.物資支援と資金支援
その結果、市街地への物流がいち早く回復し、必要物資の運搬が進んでいる。結果、避難所への支援物資も全国から届いており、主だったスーパーマーケットも開店にこぎつけている。これによって不足するものは近くのスーパーに行けば手に入るようになった。
銀行機能も例えば被害の大きい益城町にある熊本銀行益城支店も4月末には営業を再開している。とはいえ、今後不足してくるのはやはり物資より現金、というのが正直な現実として現場の方々から漏れた言葉にあった。
こうした現実が背景にあり、県や市で、いったん支援物資の受け入れを中止するという発表につながったと考える。数多くの支援を経て、ようやく物資の不足は解消されつつあるということ。(もちろんすべての避難所に十分いきわたっているというわけではないが。)
今後、個人レベルで支援を送ろうとする場合、もちろんいろいろな考え方があるが、物資よりも現金、しかもなるべく避難所などに直接届く方法が望まれるのではないかと考える。
3.人手不足の問題
もうひとつの問題は、届けられた支援物資の、各避難所への仕訳と運搬。
熊本市内だけでも、市が把握している避難所だけで257か所もあり、県全体、さらに大分県も含めると相当数に及ぶ。私が訪問した熊本学園大学の避難所では、常時2名の市役所職員が詰めて対応しておられた(うち1名は緊急派遣された名古屋市職員の方だった!)。しかし、全避難所に職員を派遣していては、本来業務がストップしてしまうのも事実。限られた人数の中でどっちも優先させなければならないので、職員の方々も、自宅の被災を抱えながら対応に追われている。つまり、人手が足りない。
一方で、開設されたばかりのボランティアセンターには県外各地から多くのボランティアの方々が訪れているが、仕事を割り当てることができないまま終わってしまったり、県外ボランティアの受け入れをいったん中止してしまったりということが起きている。決してボランティアセンターの不手際などという問題ではなく、ましてや行政の怠慢ではない。
市街地では、先述の通り、すでに被災者を含めた数多くの市民ボランティアの方々が活躍しておられるのも事実だが、熊本学園大学に詰めておられる市職員の話によると、「各避難所の情報収集が追い付いていない」ことが背景にあるという。「市内だと特に東区」。もちろん市外の山間部においては、交通網の復旧も進まず、情報不足が顕著に発生している。「そういう避難所において何が不足していてどんな人材が必要かという情報をつかむための人が一番ほしい。」とは復興にあたり奮闘している市職員として正直な言葉だと推察する。
余震が毎日数回も続く中、容易には山間部へボランティアを派遣できない。仮に余震が落ち着いたとしても地理に不案内な県外のボランティアを役割ごとに配置し、現場へ案内する人手を割けないのが今の熊本の現状なのだと思われる。
がれきの片づけは各家庭で進んではいる。住宅街のあちこちに積み上げられたがれきゴミがそれを物語る。いずれ、家具や家電などの家財道具が流通ベースで不足してくるであろうことは想像に難くない。避難住宅の建築も一斉に進む時が来る。そうなると必然的に建築業者の不足、木材や瓦などの建材不足などが考えられる。もちろんこれらは個人的な支援レベルで解決可能な問題ではない。
4.今後の活動
熊本学園大学のように、スタッフの飲み水が明らかに不足している場合は、今ある水を直接届けることを予定している。送るにあたっては配送料などの資金調達も必要なので、引き続き募金活動は行っていく必要がある。
その後については、定期的に熊本学園大学総務課様を窓口に、刻一刻と変わりつつある現地の情報を得ながら、より現実的で継続的な支援につながるような活動を行っていきたいと考える。