辞書引く日々

辞書が好きなのだ。辞書を引くのだ。

『国語辞書事件簿』

2005年08月24日 | 
辞書ファンというのは結構あるもので、辞書にかんする本もまた多い。昨年読んだものに『国語辞書事件簿』(石山茂利夫、草思社、2004年)というのがある。

事件簿とはいってもこれはレトリックであり、この本はミステリー小説ではなくてエッセイである。このタイトルは、著者が元新聞記者であるとういことをいくらか示唆しているのかもしれない。

最も愉快なところは、広辞苑のルーツさがしである。広辞苑の「前身」は博文館から出ていた辞苑であり、岩波書店がこれを買い取って、広辞苑をつくったという。その辞苑という辞書は、「『広辞林』と『言泉』『大日本国語辞典』の三種をおもな親辞書とし、糊とハサミで作った辞書と言っていい」(p.173)とのとである。

親辞書を突き止めるという作業がこの本の白眉なわけだが、これがなかなか大変なものらしい。一つの辞書を写すのならネタがすぐに割れるが、複数の辞書を親辞書に使われると、なかなかわからないという。

辞書が相互に類似している指標を機械的に作成できれば面白いだろうなどということを考えてしまった次第である。

しかし、統計学的にこれをやるのにはさまざまな難しい点があるだろう。たとえば、辞書 a, b, c, d が a, b, c, d の順に刊行されていたとする。d が a, b, c でどれだけ説明できるかを調べることになろうが、もし、b, c が a を親辞書にしていたらどうか。d を説明する三つの説明変数に独立性がなくなってしまうので、うまく結果が出ないにちがいない。

こうなると、通り一遍の統計学しか知らぬ身にはいかんともしがたいが、なにかいい手がどこかにあるのではないか。だれかやってみませんか、とそそのかしておこう。

国語辞書事件簿

草思社

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