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ロンドン ボヘミアン通信

趣味と好奇心の趣くままの、気ままなロンドン生活日記

テセウスとミノタウロス@V&A

2012年06月19日 00時09分41秒 | 白亜の美形たち



ロンドンっていうのは美術館・博物館好きには天国と思える程、お宝満載の博物館がてんこ盛り。割りに気前良く写真を撮らせてくれる博物館も多いので、最近、博物館を訪れる時は、できるだけカメラを持参するようにしています。写真を撮らせてくれないのはナショナル・ギャラリー。けち。あと、ビクトリア・アンド・アルバート博物館は、ジュエリー・コレクションのみ写真が撮れないことになっています。残念。

で、カメラ持参で行くと、つい写真に撮ってしまうのが、大理石彫刻の美形たち。色々とお気に入りがあるのですが、まずはこの、1782年、アントニオ・カノーバ作、ギリシャ神話を題材にした「テセウスとミノタウロス」(ビクトリア・アンド・アルバート博物館蔵)。

色々と大冒険を重ねたテセウス。この人、じっとしていられないタチだったのねー、と思う程、そこら中に悪漢退治に出向いている。アテネ王だったのだけど、地獄の神ハデスにさらわれたペルセポネーを救いに行っている時、国を長期間留守にしていた為に王位を追われてしまった。...あーあ。だめじゃん~。王様、やっぱりたまにはちゃんと自分の国に居ないとー。

それはさておき。ミノタウロス退治はテセウス神話の中でも最も良く知られた物語。まだテセウスが王位に付く前のお話で、クレタ島のラビリンス(迷宮)に住まう怪物、ミノタウロスに、毎年若い男女各7人を生け贄として捧げなくてはならない取り決めになっていた、その生け贄の若者としてテセウス自ら名乗りを上げ、ミノタウロス退治に出向いた時のお話。


それで勿論、テセウスは見事ミノタウロスを退治するわけですが、この彫刻は、退治した直後のテセウスを彫ったもの。

何が好きって、「このやろ、まいったか、てこずらせやがって」って言う声が聞こえて来そうなほど、臨場感たっぷりなところ。大理石で出来ているのに、まるで汗が滴るのが見えるようだし、「ぜーはー、ぜーはー」と、テセウスの息が上がっている息遣いまで聞こえそう。ミノタウロスが、今まさにこと切れました、っていう様子もよく伝わってくる。死んだばかりなので、まだ骸には体温が残っていて、死後硬直も始まっていない状態、みたいな。テセウスは「コイツ、ほんとに死んだかな」って確認するために、このあと、手に持ったこん棒でミノタウロスをちょっと小突いてみたりするんじゃないだろうか。

決して楽な戦いではなかった、相当苦戦して、テセウスも疲れ切っているっていうのが、テセウスの体がナナメっていて、自分の身体を右腕で支えているという、たったそれだけの表現で、すごくよく伝わってくる。どの方向から見ても、三角形の安定した形に彫られているのも美しい。写真ではよく見えないけれど、迷宮から迷わないで外に出るために残してきた赤い糸も、ちゃんと彫られていて芸が細かい。

何となくぶらぶらしていて目に留まったから写真に撮った彫刻ですが、見れば見るほど好きになります。こういう発見があるから、博物館って楽しい。

ちなみにビクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムのウェブサイトはここ


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