千の風になって
この間の、紅白でこの曲を聞いてなるほど、そうか と思いました。
この曲の歌い始めが特に脳裏に残っていて、何度も心の中でリピートしてました。
私のお墓の前で 泣かないでください
私はそこにはいません
なんだか 妙に 具体的っていうか
きっぱり 「お墓の下にはいないよ」・・・って言われて、
ホッとした感がある。ナットクさせられちゃう感がある。
それから、、
千の風になって・・・という 歌詞。
体から解放されて、むしろ 今とっても穏やかで自由なきもちなんだよ、っていう意味かな。
なんか気になってました。
で、、
1月9日の朝、らいす君は冷たくなっていました。
このところ息するのがしんどいみたいで、フィーフィーって言いながら
呼吸していました。でも 食欲も変わりなく、みかんやイチゴのヘタ もしっかり食べて、たくさんうんちしてました。
顔の様子も むしろ赤ちゃんのような顔で 老いた顔はしてなかったのです。
前の晩、仕事から帰ってごはんを食べて、わたしはぐったり、父がらいす君がしんどそうだと言うので、だっこしてあげました。
らいす君は目を細めて、やはりしんどそうでした。でも 病気みたいな表情でなくて、きれいな顔をしていました。
私はなんとなく、らいす君やばいかも、
お布団こっちに持ってきて、らいす君のそばで寝たほうがいいかな とも思ったけど、ほんとに疲労してたので、まぁ大丈夫かなと思って
しばらくだっこして
らいす君が寒くならないように、新聞紙をトンネルみたいにして 就寝しました。
これが最期になりました。
私が朝起きたら、父はもう起きてコーヒーを入れていて
おはよう、の次に、
「おい、らいす死んでるぞ」 でした。
しばらく 心が停止しましたけど、
あぁ・・やっぱり
という気持ちにもなりました。
意を決して、らいす君の箱をゆっくり開けました。
無残な死に方を想像してたけど、
らいす君はそのまま 剥製になったみたいに、
ストップした感じで、もう硬くなっていました。
昨夜食べたみかんの黄色で染まったお口は、いつもどおり
開いてました。
お口の周りや目の周りは、やはり桜色か桃色のままで
体はかたくなってるのに、耳は戻したキクラゲの感触のままでした。
もちろん お目めは トマト色のまま。
歯も真っ白で ちょうどいい長さに研磨されて 健康でした。
しばらくうずくまって泣いて
こんなにちいさい いきものが
私を(オーストラリアから帰ってくるのを)待っててくれたんだ って 切なくて
らいす君はねずみだけど、 ねずみなりに 果たすべきものを果たして
逝ったんだなぁ と 感じて 心を何かがつらぬきました。
こんな朝は、いつも節約のために歩いている区間を 電車にして
ギリギリまで家でいるべきなんだけど
らいす君を抱いて泣いていると
「今日こそ歩かねば」 と ふと思い
いつもどおりの時間の電車にのって途中下車して いつもどおり20分、歩きました。
頭の中はらいす君のことばっかりだったけど いつもより足は軽く・・・。
そしたら、私の内側か外側で 声がしました。
はっきりした言葉は忘れちゃったけど、
なんか
次 だよ 次に進むってことだよ とかそういったことでした。
なんだか すぐ 私は この意味が分かりました。
心の中で、ぱぁぁ っと 咲いて 広がりました。
らいす君か、または なにか みえないものが ここに いるなぁっ
ってじわじわ と染みわたってきました。
らいす君が死んでも、 らいす君、寒くないかなぁ って思ったり
らいす君を 冷たい土に おさめるのがいやだなぁ って
最近 特に寒いから考えていました。
でも、そのたびに 千の風を思い出して、思い直していました。
さむいさむい 土の中に いやしません、と。
・
・
・
次の日曜日、朝起きると 父はもう庭の野菜の手入れをしていました。
いままでの 歴代の動物たちのお骨がある、大きな椿の木のふもとに、
らいす君用の穴が もうほってありました。
私は、特に計画してなかったのに、自然に、父に
「お花、買いに行こう」と切り出しました。
か弱い少女のようなのに、寒さに強い スミレみたいな ビオラたち。
さわるとごわごわなのに、お花と名前は すっごく乙女ちっく、はなかんざし。
らいす君のこと忘れないよ、忘れなぐさ。
ひなぎく。
畑の端の、土が固くなって、日当たり抜群のところ、耕しなおす。
実は、こんな 鋤 を使うの初めて。結構 快感。
高く振り上げて、がっつり 土を起こす。
父は レンガを集めて、その新しいお花スペースを仕切る。
できたころに父、
「これ、らいすの記念花壇 な。」
もちろんらいす君のこと考えて私もしてたけど
「あ、そうか 記念、、かぁ」 と 息を ふぅ と吐く。
一呼吸置いて 父が
「らいす いつでも 準備できてるぞ」
という。
意を決して らいす君のいる冷えた客間にむかう。
らいす君、やっぱり耳はぺろん とキクラゲ。
お目めは乾燥して 膜がはって それがちょっとよれてた。
らいす君は、もうやわらかくなってたけど、どこか 体液がでてることもなく、
やっぱりきれいなまま。
外に。
空気は澄んで 雲間から 光。 風もちょっと吹いてる。
こういう光を見ると、母が荼毘に付されたときを思い出す。
やたら 空気がきらきらしてる。
火葬場のたてものから出たとき、左上の空の雲間からめいいっぱいの こぼそうな光が さしてた。
椿の木のもとのあなに、いつもの 干草を ぜいたくに しきつめて
らいす君を入れる。
ためらう。
「らいす君は冷たい土の中にはいない」
らいす君の体の上に 干草を かぶせる。
あと、お顔、、、ためらう。
泣く。
らいす君またね、って言いながら、らいす君のファニーフェイスに 干草を。
らいす君は冷たい土の中にはいないんだから・・・って
でもその時、風が
ひざまづいた私の、頬を 勢いのよい風がさわっていって
干草でお顔をかぶしたちょうどその時、風が、お庭の塀の隙間をくぐって
やってきたような、風が ひゅーーっ って
・・・・
なんか この風で、 私とらいす君の時代は とりあえず 終わったんだと
理解しました。
たとえば ジュラ記が終わったような、、らいす君との時代っていうのは
象徴で・・
変化は止まることなく、ある 長期的な なにかに向かって、
私は(みんなも)歩んでいる。
ふつう 「たまたま」だと思っている出来事の中に、導きがあるもんなのかもね。
なんだか 目にみえないものってほんとうにあるんだろうな って
心がクリアになったのでした。
らいす君、ほんとにほんとに ありがとっ
らーーぃす くんっ!
じゃ、またね!
逝く一週間前のかわいいらいす君。